大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

DXアニュアルレポート2024

特集

震災対応

BIM活用による応急仮設住宅の早期提供

目的、ビジョン

日本は「災害大国」と呼ばれる程、自然災害が多い国として知られています。災害によって住居を失った被災者の方には、早期の安定した住居の提供が求められ、当社はプレハブ建築協会会員企業の一員として応急仮設住宅の早期供給に携わってきました。2018年より、当社・大和リース株式会社・熊本大学の三社で共同研究を開始し、応急仮設住宅の早期提供を目指した「応急仮設住宅の自動配置プログラム」の開発に取り組んでいます。
2019年台風第19号では、自動プログラムを初導入した応急仮設住宅の配置計画を行い、2日間での配置承認取得を達成しました。その後も継続的にプログラムの改良とデータ整備を実施し、敷地測量技術の検証や建物の図面作成の自動化も共同研究テーマとして、配置計画前後のプロセス改善にも取り組んできました。また、遠隔で応急仮設住宅の計画を支援するバーチャルトレーニングを実施し、災害発生に備えた支援体制の構築を模索してきました。

取り組みの全体像

図1:応急仮設住宅の自動配置プログラムの推移

(*1)DASHプロジェクト:D=Daiwa House Group、A=Action、S=Speedy&Safety、H=Heartfulの略。
大規模災害発生に伴う応急仮設住宅建設時に、大和ハウスグループ一体となって本部長指示のもと指導するプロジェクト。

昨今の主な取り組み

令和6年能登半島地震での活用 大和リース株式会社
被災者に1日でも早く安心できる住まいの提供を目指して

令和6年能登半島地震においては、自動配置プログラム、人工衛星を利用したGNSS測量、スマートグラスによる遠隔現地調査を取り入れ、現地調査から配置図作成までの業務において、従来の業務時間に比べて10時間以上図面を早く作成することができました。
今後は配置図だけでなく、建物の図面においても自動化を行い、更なる迅速な対応を目指します。そして一時避難されている方に1日でも早く応急仮設住宅が提供できるようDX化を加速させていきます。

図2:従来プロセスとR6能登半島地震でのプロセスの違い

図3:自動配置プログラム活用の様子

図4:スマートグラス活用の様子

効果、今後の展開

今回の能登半島の震災では、地理的制約によって現場へのアクセスが課題となっていました。そこでデジタル技術の活用によって、現場と遠隔地をシームレスにつなぎ、できる限り正確な現場の情報を掴むことで早期に応急仮設住宅の提案を行うことができました。その結果7月末日時点で当社グループとして1,234戸の応急仮設住宅を共有し、そのうち1,007戸についてはデジタル技術を活用した提案となっています。今後も現場ごとに異なる課題に対し最適なデジタル技術を用いて、大規模災害の発生時に被災された方々に少しでも早く、安心で安全な住まいの提供につなげていきます。

熊本大学
大学院先端科学研究部
土木建築学部門人間環境計画学分野
教授 大西 康伸

2016年4月に発災した熊本地震で、家屋倒壊等の被害を目の当たりにしました。仮設住宅をより早く提供することで、劣悪な住環境からの早期脱却による震災関連死を防ぐことができると思い、情報技術を活用した仮設住宅の早期提供に関する研究に取り組みはじめました。その共同研究先として2018年に大和ハウスおよび大和リースに協力を仰ぎ、現在に至っています。
共同研究もまる6年が経過しようとしていた矢先、2024年元日に能登半島地震が発災しました。すでにプログラムの完成度は高まっており、また、一般社団法人プレハブ建築協会主催の模擬訓練でもある程度の成果が出ていたので、実践投入にためらいはありませんでした。配置作業そのものにはある種の慣れが必要でしたが、研究室で計150を超える敷地の配置計画を行いました。概して、短時間で多くの配置計画が作成できたと思います。遠隔作業により、敷地情報の円滑な共有が困難だったことは今後の課題としてあげられます。

大和ハウス工業株式会社
技術統括本部建設DX推進部DX企画室
吉川 明良

社会課題をデジタルの力で解決

応急仮設住宅は当社グループとしての社会的責任のある大きなミッションです。 その業務フローにデジタル技術を適用し、自動化・最適化する事で関係者の合意形成を迅速にし、いち早く工事着工へ導いていく事を目的に2018年より熊本大学・大和リースと3社での共同研究をスタートしました。BIMの技術を利用し、自動プログラムを設計者は段階的に実行していき、いち早く計画図を仕上げる事ができる仕組みを構築しています。
当社としては2019年の長野県における台風災害において、プロトタイプを実践活用し、効果の確認と共に意思決定者である行政から一定の評価をいただきました。
今後はこの共同研究で得た成果や知見を主要な事業に活用する事はもちろんのこと、このミッションの目的である、「被災された方へいち早く住居を提供する」ことと合わせ、さらに社会に貢献していきたいと考えています。

大和リース株式会社
技術DX推進室
山下 裕充

社会課題をデジタルの力で解決

応急仮設住宅の迅速な建設は、私たちの命題であり、同時に従業員や協力会社の皆さまの働き方革新も重要な課題です。今回、AIをはじめとするデジタル技術の導入により、これまでにない成果を創出することができました。今後は、これらの技術をさらに深化させ、事業全体へと展開していく計画です。デジタルと物理の境界を超えて、未踏の可能性を探求し、広範囲にわたる価値創造を通じて社会に貢献していく所存です。

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