DX推進を支える組織体制
働き方が多様化していくなか、従来のような事務所にある据え置きのパソコンメインでの業務スタイルのみではなく、テレワークへの対応など、ワークスタイルの変革が求められています。また、ワークスタイルの変革を行っていくうえで、ユーザーニーズに柔軟・迅速に対応し続けていく必要があります。さらに、事業部制を開始したことで、より事業に寄り添った形でのアプリケーションの提供が求められます。
そこで当社では、アプリケーションの開発を促進していくうえでの開発プラットフォームとして、ローコード開発(*1)ツールであるOutSystems(*2)を採用しました。OutSystemsを導入することで、ワークスタイル変革の加速(モバイル端末への対応)や事業スピードに追従する迅速なデリバリーサイクルの実現(開発および変更サイクルの短縮)を目指します。
(*1)ローコード開発:可能な限りソースコードを書かずにアプリケーションを開発する手段・ツール
(*2)OutSystems:OutSystems社が提供するローコード開発ツール
アプリケーションの柔軟・迅速な開発には、各デバイスサイズへの対応をはじめ、OSのバージョンアップ対応、事業が異なっていても共通する業務ロジックの再利用など、さまざまな課題があります。そこで、OutSystemsの活用を最大化するための組織体制の構築と、業務を横断したモジュールの活用に取り組んでいます。
柔軟・迅速にアプリケーションの提供を推進していくためには、OutSystemsの導入だけでなく、それを最大限に活かせるルールや開発プロセス、体制が必要と考え、まずはCoE(*3)の編成に取り組みました。具体的には、OutSystems活用の標準化を行い、開発するプロダクトに依存しないローコード開発専門の組織を立ち上げました。
実際の開発案件での評価を踏まえ、開発プロセスの標準化や体制の強化を進め、柔軟・迅速にアプリケーションを提供するための改善を行っています。現在はOutSystemsを用いてさまざまなアプリケーションの開発を行っています。
(*3)CoE(Center of Excellence):ベストプラクティスとツールが配備された専門組織のこと
当社は2021年より事業部制を開始したこともあり、より事業部に特化したアプリケーションの開発を行う必要が出てきました。しかし、事業部が異なるとはいえ、実施したいコアな業務要件が共通することは多く存在します。事業部制に合わせてアプリケーションの管理も縦割りにすると、組織全体として迅速にアプリケーションを提供することが難しくなります。
そこで、事業を横断して活用可能な機能は共通モジュールとして設計し、アプリケーションを横断して利用することで開発を迅速に行えるように推進しています。また、認証用のモジュールなど基盤すべてに必要となるような共通のモジュールに関しては、CoEからモジュールを提供することで、統一された認証機能を基盤として活用できるようにしています。(図1)
図1:モジュールの共有
モジュール共通化を行いながら、さまざまなアプリケーションを開発しました。
まず初めに取り組んだのが、住宅系(住宅事業・集合住宅事業)の施工現場における写真撮影のアプリケーション化です。施工現場では施工管理のため、各工程でさまざまな写真を撮影します。従来は、カメラなどで撮影した写真を社内システムへ取り込むために、事務所で作業を行う必要がありました。そこで写真の撮影機能をはじめ、工事情報や工程情報とのひも付けや、社内システムへのアップロードなどをモバイル端末で完結できるアプリケーションを開発しました。このアプリケーションを用いることで、ユーザーは工事現場で撮影した写真を工事情報とひも付けながら、リアルタイムに社内システムに保存することが可能になります。
次に取り組んだのが、建築系(建築事業・流通店舗事業)の写真撮影に用いるアプリケーションです。写真に付属したい情報などは、住宅系の業務とは違うところがあるとはいえ、基礎となる業務ロジックは共通して利用できるものも多く(図1)、モジュールの共通化を行うことで開発生産性を向上させました。
ほかにも写真報告のためのアプリケーションや、撮影した写真から帳票を作成するためのアプリケーションなど、モジュールを共有しながらさまざまなアプリケーションの提供を迅速に行っています。
CoEの構築を行うことで、いくつものアプリケーションを一定の品質を保ちながら提供することが可能になりました。またモジュールの共有化を行うことで、より迅速にアプリケーションを提供できるようになりました。
今後、OutSystems基盤の利用をさらに推進させ、事業部門に求められる業務アプリケーションを迅速に提供し続けていくことを目指していきます。