大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

DXアニュアルレポート2024

DX推進を支える組織体制

大和ハウスグループの戦略的IT活用

当社は、社会要請に応じて次々に事業領域を拡大し成長を続けていくなかで、早くからITを活用してきました。
設計・生産の技術系部門では、1970年からコンピュータを導入し、設計積算・工場発注のシステムが本格稼働しました。1982年には業界初となる対話型自動設計システム(CADNET)を導入し、2014年には賃貸住宅の設計において3次元CADを導入しました。

管理部門では、1983年に全国の事業所・工場にコンピュータを導入し、会計・人事の業務で本格的に使用を開始しました。そして、2000年問題(*1)への対応として、新たに「新会計システム」を1999年から稼働しました。その後、事業の発展と共にシステムが肥大化し、成長の足かせとなるおそれが出てきたため、ERPを活用して人事・会計などの情報を統一的・一元的に管理する経営基盤システム「DG-CORE」(*2)を2012年に導入しました。情報系のシステムでは、1988年に取引先別に取引実績を検索できる「CBANKシステム」を稼働させ、1997年にはイントラネット「D-inet」の運用を開始しました。そして2005年、社員一人ひとりの情報活用を目指し、1人1台パソコンを導入し、それに合わせて業務推進システム「D-SMART」を開発・稼働しました。2010年にはD-SMARTのグループウェア機能を「DG-PORTAL」としてグループ会社に展開しました。また、2014年には3次元CADを導入しました。(図1)

このように、当社グループの成長や社会の変化を常にキャッチアップし、最新のITをビジネスに適用してきました。今後も時代の変化を見通し、社会貢献に向けた価値創造と、より良い暮らしの実現に向けたIT 活用に積極的に取り組んでいきます。

(*1)2000年問題:西暦2000年になるとコンピュータが1900年と認識して誤動作の恐れがあるという問題
(*2)DG-CORE:人事・会計などを管理するERPを活用した経営基盤システム

図1:大和ハウス工業の戦略的IT活用

情報システム部門の変革の歴史

情報システム部門ではこれまで、IT中期計画に合わせて基盤改革・構造改革・組織改革・技術改革に取り組んできました。(図2)

DXannualreport第7次IT中期計画

図2:情報システム部門の改革

基盤改革

システムや情報セキュリティが企業ガバナンスに不可欠な構成要素となってきたため、2011年より新たな経営基盤システムの導入や大和ハウスグループ共通のインフラ基盤整備など、攻めのIT経営を支えるためのITガバナンス強化に取り組みました。

フルクラウド化

取り巻く環境の変化に迅速に対応できる弾力的で低コストのIT基盤を構築するために、ITインフラのクラウド化に取り組みました。これにより「戦略的なIT投資」、「セキュリティレベルの統一」、「運用保守の大幅軽減」が可能になりました。

経営基盤システム刷新

会計・人事システムの肥大化・属人化を解消し、制度変更や会社の多角化・グローバル化に柔軟に対応できる基盤を構築することを目的として、経営基盤システムを刷新しました。これにより「経営の見える化」、「管理コストの低減」 、 「社会要請への対応」が実現でき、コンプライアンス・ガバナンスが強化されました。

グループ会社のIT共通基盤整備

グループ会社のガバナンス強化を目的に、経営基盤システムや共通のインフラ基盤をグループ会社へ展開しました。また、情報セキュリティに関するポリシーや規定についても整備・展開しました。これにより、当社グループ全体で効率的にリスクをマネジメントできる環境が整いました。

構造改革

攻めのIT経営を実現するためには、限られたリソースのなかでより多くの成果を挙げることが求められます。そこで、2012年より全体最適のマネジメント理論TOC(*3)を活用し、マネジメントの強化による生産性の向上に取り組みました。

(*3)TOC(Theory Of Constraints):制約条件の理論

CCPMの導入

TOCを基本理論とした革新的プロジェクトマネジメント手法CCPM(*4)の導入により、リソースを増やさず、システム開発の生産性を高めました。大規模なITプロジェクトの約7割が納期遅延や品質上の問題点を抱えている調査結果があるなか、当社では品質を下げることなくプロジェクトマネジメント力を強化することに成功しました。また長時間労働を改善しながらも、ERPパッケージ導入プロジェクトの開発フェーズとテストフェーズで25%の工期短縮を実現しました。(図3、図4)

(*4)CCPM(Critical Chain Project Management):制約条件の理論に基づき全体最適化の観点から開発されたプロジェクト管理手法

図3:Concertoのトレンドチャート図

図4:Concertoのバッファ消費タスク

CCPMをすべてのプロジェクトに適用

ERPパッケージ導入プロジェクトの成功をふまえ、情報システム部門のすべてのプロジェクトにCCPMを適用することを決定しました。2012年10月に約30名体制のプロジェクトマネジメント室を新設し、社内すべてのITプロジェクトをマネジメントできる権限をもたせ、個別の開発案件が組織の全体最適と合致しているかを監督する体制を構築しました。その結果、組織全体の生産性は高まりました。
また、メンバーはCCPMによるプロジェクトの進行を通して、全体最適の判断に必要な「最終ゴールに到達できる状態になっているのか」、「ユーザーから見たときに品質的にどう評価されるのか」といった視点が自然ともてるようになり、マネージャーとしても、プレイヤーとしても成長を遂げました。

ベンダー企業とのWin-Winの関係

大規模なITプロジェクトでは、不確実性が高いため、ベンダーは余裕をもった納期や見積もりを設定することが多く、このゆとりを取り除くことに抵抗があります。このことをふまえ、不確実性の高い一部のプロジェクトでは、従来の請負中心の契約形態ではなく、準委任など、納期と報酬に流動性をもたせた契約形態を採用しています。そして各ベンダーの理解を得ながら、両者にとってWin-Winの関係になるよう契約内容をその都度見直しています。プロジェクトマネジメントにおいては、納期遅れ防止のため、お互いの懸念を乗り越えて両者が工期短縮に向けて一致団結できるルールを構築しました。CCPMの導入により、当社だけでなくベンダーもリソースを増やさずに工期短縮が可能となり、結果としてベンダー自体の付加価値も高まると考えています。

組織改革

これまでの改革により、ガバナンスの強化や開発生産性の向上を実現してきました。しかし、事業に貢献するという点では、開発生産性だけでは不十分であり、事業とITのつながりを強化する改革を行いました。

商品戦略を確実に実現するIT専門部隊

工業化建築におけるものづくりプロセスにおいて、ITは不可欠な要素です。そこで、商品戦略と連携しながらITによる業務支援を実現するための専門組織として、商品IT業務部を設置しました。

事業部門と一体となったIT部隊

情報システム部門は、事業を横断的に見ることにより全体最適を実現してきました。管理部門の多くの機能は本社のある大阪にあるため、情報システム部も大阪に設置しています。しかし、事業それぞれの要望に応じたIT活用を推進するには、東京本社にある各事業本部とのコミュニケーションを密にする必要があります。そこで東京本社に東京情報システム部を設置しました。

プロジェクトマネジメント部隊の事業化

CCPMによるプロジェクトマネジメント経験を通して成長した人財を、さらにグループ会社のITプロジェクトにおける生産性向上につなげることができれば、当社グループ全体に貢献できます。そこで、プロジェクトマネジメント部隊をグループ会社のメディアテックに移管し、ITプロジェクトにCCPMを適用することで、ITの価値を早期に実現することを付加価値とする事業を開始しました。

技術改革(IT)

詳細は「DevOpsの実現する技術改革」「ローコード開発の取り組み」「IT部門としての人財育成」をご参照ください。

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