
戦略的な地域活性化の取り組み(81)公民連携による国土強靭化の取り組み【43】官民連携により地域住民が集う魅力ある都市公園を創造する取り組み:Park-PFI
公開日:2025/01/31
公園や緑地は、地域住民にとって憩いの場であり、都市環境には欠かせない空間です。一方で、旧態依然とした画一的なデザイン、利便性の悪い管理体制、施設・設備の老朽化が進んでいる公園も散見されます。そんな中で近年、官民連携による都市公園のリノベーションが進んでおり、地域ニーズに応じた多様な利活用目的を重視した施設整備や管理手法が進化しています。
公募設置管理制度(Park-PFI)制定の背景と経緯
都市公園とは、地方公共団体または国が設置する公園および緑地のことです。日本では、戦後の経済成長、人口増加等を背景に、緑やオープンスペース(公園等)の量的整備を進めて来ており、一人当たりの都市公園面積は10m2を超えています。そして現在、社会の成熟化、市民の価値観の多様化、都市インフラの一定の整備等を受けて、緑とオープンスペースが持つ多機能性を最大限に活かすことが求められています。かたや、財政制約等から地方公共団体の整備費、維持管理費は限られており、公園整備、更新への投資もある程度限界があり、都市公園の魅力向上、施設整備・更新を持続的に進めていくためには、公共の資金だけでなく、民間の資金の活用をより一層推進することが必要あるとされていました。
従前より、PFI法による「設置管理許可」(民間事業者などに公園施設の設置と管理を許可する制度)はありましたが、さらに民間活力による都市公園の新たな都市公園の整備手法を創設し、公園の再生・活性化を推進して質的高度化を進める必要があるとして、2017(平成28)年に「都市公園法」を改正し、「公募設置管理制度」(Park-PFI)を創設しました。制度創設の主な視点は以下です。
- (1)都市公園というストック効果をより高める
公園管理者も都市公園を活性化・再編して、資産運用を考えるべき時代へ移行する - (2)民間との連携を加速する
公共の視点だけではなく、民間のビジネスチャンスと都市公園の魅力向上を両立させる - (3)都市公園を一層柔軟に使いこなす
画一的な設備整備や管理を排し、公園の個性を引き出し、公園を地域に必要とされる財産とする
具体的には、園路、広場等の公園施設(特定公園施設)の整備を一体的に行うことを条件に、飲食店、売店等の公園施設(公募対象公園施設)の設置又は管理を行う民間事業者を、3つの特例を付与して公募により選定します。第一に、公募設置等計画の認定の有効期間は20年とすること。第二に、休養施設・運動施設・教養施設、公募対象公園施設等を設置する場合の建蔽率を従来の2%に10%を上乗せする。(ただし、文化財保護法による国宝・重要文化財・登録有形文化財、景観法による景観重要建造物等は上限20%まで可能)。第三に、駐輪場や看板・広告塔等の専有物を設置できる。
このような特例により、投資回収・収益向上に配慮することで、民間事業者の参入を促しています。
Park-PFIによる都市公園リノベーション事例
国土交通省が公表している資料から、Park-PFIを活用した事例を紹介します。
「山代スマートパーク」(石川県加賀市)
山代温泉地域では、廃業旅館の解体撤去・再整備が課題でした。市は、跡地を地域に親しまれる憩いの広場に再生することとし、令和3年から16年間、地元企業である岸グリーンサービスを代表として、シモアラ、アルスコンサルタンツからなる共同事業体を公募対象公園施設の管理運営、指定管理者として特定公園施設を維持管理する方針としました。これを受けて、共同事業体は、カフェやフラワーショップ等の施設を指定管理者として設計・施工・管理を行い、市との共同所有者として店舗運営やイベント等の収益事業を推進しています。また同時に、園路、広場、ベンチ・日よけ、体験学習施設、駐車場、Wi-fi、トイレ等の公園施設の整備・管理も担当することで、一体的な公園運営が可能となっており、今では地域住民に親しまれる公園へと生まれ変わっています。Park-PFIを活用した、公民連携による空き家再生の好事例だと言えます。
「大阪城パークマネジメント共同事業体(PMO)」(大阪市)
大阪城公園は、105.5haという広大な面積をもつ都市公園(歴史公園)ですが、維持管理費用も大きく、財政難に苦しむ大阪市は、2018(平成27)年に、指定管理者として大和ハウス工業、および讀賣テレビ放送、電通の共同出資による「大阪城パークマネジメント共同事業体(PMO)」を選定し、市の赤字解消と公園活性化を図るプランを発表しました。資料によれば、指定管理者は、大阪城公園、野球場、西の丸庭園、茶室、天守閣、音楽堂、駐車場等の管理運営、および既存施設の活用、新規施設の設置・運営等を事業体の負担で行うとともに、固定費として年間約2.6億円と事業収益の7%を大阪市に納付する取り決めとなっています。一見すると、事業体の投資回収が可能なのかとも思えますが、売店やレストラン・カフェ・和装体験・ランナーサポート施設などが入る「JO-TERRACE OSAKA( 全7棟)」の新設運営や、旧陸軍施設をリノベーションした「MIRAIZA OSAKA-JO」での売店・カフェ・レストラン・体験施設等を含めた、大阪城公園における全事業の2023(令和5)年度損益は約8億円となっており、官民連携での指定管理者制度/Park-PFIによる公共資産(PRE)運用の効果を示した事例であると思います。
※実績については、「大阪城公園パークマネジメント事業 令和5年度 事業報告書」を参照
今後の展望:都市公園新時代
国土交通省の「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会」は、2022(令和4)年10月に、都市公園の今後の在り方について提言を公表しました。提言では、現代は「都市公園制度誕生150年目のパラダイムシフト」を迎えているとし、「都市公園新時代~公園が活きる、人がつながる、まちが変わる~」に向けて、「まちの資産(公園のストックを地域の資産と捉える)」、「個性を活かす(画一から脱却し公園の特性に応じたルールをオーダーメイドでつくる)」、「共に育て共に創る(パートナーシップの公園マネジメントを実践する)」といった、3つの変革が必要であると謳っています。そのための重点戦略として、都市公園を「新たな価値創出や社会課題解決に向けたまちづくりの場とする」、「しなやか(柔軟)に使いこなす仕組みをととのえる」、「管理運営の担い手を広げ・つなぎ・育てる」ことが必要であるとしており、前述の都市公園法の改正は、この提言に則った施策と言えます。
一部には、都市公園の過度な商業化やテーマパーク化を懸念する意見もあるようですが、公的機関のPPP/PFI実施ガイドラインでは、地域住民や民間事業者に対するサウンディング型市場調査が推奨されており、官民連携した地域ニーズの取り込みにより、環境問題や社会課題に配慮した更に柔軟で多様な公園再生が可能ではないかと感じます。各地で進展する都市公園の変革には、今後も期待を持って注目していきたいと思います。