戦略的な地域活性化の取り組み(79)公民連携による国土強靭化の取り組み【41】地域インフラ整備と環境保全へPPP/PFI事業を促進し国土強靭化を加速
公開日:2024/11/29
2024(令和6)年6月に、内閣府から「PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改訂版)」が公表され、公共施設等の整備・運営に民間事業者の資金や創意工夫を活用するPPPのより一層の活用推進方針が示されました。
- ※PPPとは、官民連携(Public Private Partnership)の略、PFIは民間資金等活用(Private Finance Initiative)の略
PPP/PFI推進の背景
PPP/PFIは、公共サービスの提供に民間の資金やノウハウを活用する考え方で、1992年に英国で「小さな政府」への取組として導入が始まったとされています。日本においては、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が1999(平成11)年に制定され、翌年には、その理念と実現のための方策を示す「基本方針」を策定し、PFI事業の枠組みが設けられました。
近年、PPP/PFIの促進を急ぐ背景としては、次のようなことが指摘されています。
- (1)生産年齢人口は、2030年までの10年間では平均43万人/年、2030年以降の10年間では平均86万人/年と、減少の速度が2倍になる見込みであり、また、地方の建設業者等や地方公共団体の職員の減少が見込まれる中で、効率的かつ優れた品質の公共サービスの提供が実現できるよう、早急に対応する必要があること。
- (2)PPP/PFIは、新たな雇用や投資を伴う民間事業者のビジネス機会を拡大するのものであること。さらに、PPP/PFI促進を通じて潤沢な民間資金の流れを作ることで、金融機関によるプロジェクトファイナンスの活性化や資金提供主体としてのインフラファンドの育成、投資家から資金の調達を行うインフラ投資市場の整備を促進していく必要があること。
- (3)良好な公共サービスの提供や民間事業者の収益事業の展開は、地域の賑わいの創出や、地域課題の解決に資する取組を実現することから、官民のパートナーシップ形成を通じ、持続可能で活力ある地域経済・社会の実現に向けた取組を促進する必要があること。
人口減少、公共施設の老朽化等が急速に進む中で、公共セクターの財政面、マンパワーには限界があるため、民間セクターの能力を活用することで、公的資源(PRE)を官民連携により幅広く活性化し、様々な社会課題解決に向けて、社会資本の整備を推進することが求められています。
「PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改訂版)」の主要項目
令和6年改訂版アクションプランでは、PPP/PFIを更に進化させていくため、次の4つの主要項目が示されています。
- (1)自治体を超えて、類似施設・共通業務を統合し、公的事業の一層の歳出の効率化、不足する自治体職員を補完するとともに、ビジネス領域・規模を拡大して民間事業者の利益を確保することで民間の参入促進を図る。「分野横断型・広域型PPP/PFIの形成促進」
- (2)PFI事業を実施する国・地方公共団体が参考とする「ガイドライン」を改正し、契約金額に対する物価変動等への適正な対応や、民間企業の創意工夫等で創出する多様な効果を適正に評価することなどで、民間収益の確保を図る。「民間事業者が適正な利益を得られる環境の構築促進」
- (3)今後、PPP/PFI活用の拡大が予測される領域(自衛隊施設、分野横断型・広域型上下水道・工業用水事業等、流域治水事業、火葬場、スタジアム・アリーナ、国立公園の観光施設等、道路など)への拡大を促進する。「PPP/PFI活用領域の拡大」
- (4)これまで活用事例が少なかった地域の公的未利用資源に対するPFI事業(ローカルPFI、スモールコンセッション)への活用を促進するために、産官学金の多様な関係者が参加、連携するスモールコンセッション推進会議を設定し、PPP/PFI地域プラットフォームの効果的な運用に向けた取組を図る。「PPP/PFIによる地方創生の推進」
以上のような施策により、令和4年から13年までの10年間で事業規模目標30兆円、事業目標件数を当初の575件から650件に上方修正するとしています。
水分野における新たな官民連携方式「ウォーターPPP」
今般の能登半島地震/集中豪雨、気候変動の影響で多発する洪水などで、上下水道の管理・維持に対する国民の不安が顕在化しており、「水インフラ」の持続性を向上させるための官民連携による対応が求められています。そこで国は、2023(令和5)年に「生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律」を制定し、2024(令和6)年4月から水道整備・管理業務を、厚生労働省から国土交通省へ移管し、上下水道行政を一体化することで、新たな官民連携方式として「ウォーターPPP」を打ち出しています。
「ウォーターPPP」とは、上下水道事業等をコンセッション(民間による公共施設等運営事業)に段階的に移行するために、官民の長期契約で上下水道の維持管理と更新を一体的にマネジメントする方式です。その要件は、①長期契約(原則10年)、②性能発注、③更新と維持管理の一体化、④官民によるプロフィットシェアを基本としており、民間事業者が収益を確保しやすいスキームとなっています。上下水道等水分野事業は、人手不足や施設の老朽化などで需要が高まっており、市場の成長が見込める分野だけに、水ビジネスにノウハウを持つ民間事業者にとっては、長期にわたって安定収益を確保できる可能性が高いPPP事業分野として、注目されています。
自治体側も、令和5年度補正予算で17自治体が具体化に向けて調査等を実施し導入を検討中であり、さらに82自治体が令和6年度予算で創設した「上下水道一体効率化・基盤強化のための補助制度」を活用し具体化に向けた検討を進めています。また国も、上下水道一体の「ウォーターPPP」内の改築・更新等整備費用に対し、令和6年度より国費支援の重点配分を実施するなど支援体制を強化しており、令和13年までに上水道100件、下水道100件、工業用水道25件での「ウォーターPPP」導入を目指しています。
新たな成長型経済への移行に向けて、公的資源(PRE)の官民連携(PPP/PFI)事業の分野横断化・広域化・活用領域拡大が進むことで、社会資本の再整備による国土強靭化が進展することに期待したいものです。