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コラム No.53-76

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戦略的な地域活性化の取り組み(76)公民連携による国土強靭化の取り組み【38】地域課題解決に有効な低未利用物件のシェアハウス活用について

公開日:2024/08/30

人口減少、少子高齢化社会にあって、近年、個人等が保有する活用可能な遊休資産(空間、モノ、カネ等)や能力(スキル、知識等)を他の個人等も利用可能とし、持続可能な循環社会を実現する経済活動:「シェアリングエコノミー」が注目されています。不動産分野で言えば、借地、借家など古くから資産を共有する収益モデルがありますが、「シェアハウス」という形態もその一部で、一般社団法人 日本シェアハウス連盟の調査によれば、2013年に2,744棟であったものが2023年には5,808棟と増加傾向にあるようです。

新たなニーズを生むシェアハウス

国土交通省住宅局の定義によれば、シェアハウスとは、「賃貸住宅の一種で、一般の賃貸住宅とは異なり、リビング、台所、浴室、トイレ、洗面所等を他の入居者と共用する」共同居住型賃貸住宅です。
単身若年層にとっては、家族生活者と違い、居室以外の使用頻度が低いリビング、台所、浴室、トイレ、洗面所等を共用とし、入居者数を増やすことで賃料を低く抑えたシェアハウスは魅力的かもしれません。
少し古いですが、2017(平成29)年に国土交通省が行った「シェアハウス運営管理事業者に対するアンケート調査」の結果から推測すると、シェアハウスは、東京圏および中部、近畿圏など大都市圏を中心に、最寄駅から徒歩10分未満という立地に多く存在しています。物件の部屋数は、「5部屋以上10部屋未満」「10部屋以上20部屋未満」の割合がそれぞれ2割強となっており、個室の広さは7.5m2以上12.5m2未満が約7割、入居者については20代~30代が8割以上、女性が5割以上を占めており、入居期間は6が月以上2年未満で約7割と比較的短期間利用という結果です。 一見すると、学生寮や社員寮のようなイメージですが、入居者は、一定のルールで管理運営された一軒家で、学校や職場が異なる者同士が共同生活を送るライフスタイルに、あまり抵抗感を持っていないように感じます。稼働率を見ると、80%以上とする物件が約6割、90%以上とする回答も4割弱あることから、今後も、特に都市部においてはシェアハウスの需要が見込めそうです。
また、近年増加しているのが、複数人の高齢者が共同生活を送る「高齢者シェアハウス」です。当初は介護関連の事業者が運営するケースが多かったようですが、最近では、全国各地で一般企業や、NPO団体などが運営しているシェアハウスも増えているようです。

シェアハウスが受け入れられる社会背景

シェアハウスが受け入れられる理由としては、一般的な賃貸物件と比べて、立地的な利便性が高く、初期費用や賃料が安く抑えられるといった経済的な合理性が、まず挙げられます。また、少子高齢化時代にあって、特に一人暮らしの若者にとっては、学校や職場のコミュニティとは違う人々(仲間)との出会いが得られることも、シェアハウスに魅力を感じる背景なのかもしれません。このような傾向から、マンガ家や音楽活動を目指す仲間向けのコミュニティ重視型シェアハウスや、ひとり親家族(シングルマザー/ファーザー)が親子で同居することができるシェアハウス、女性専用、シニア専用のシェアハウスなど、コンセプトを明確にしたシェアハウスの多様化も進んでいるようです。
一方、運営事業者にとっても、未利用物件の活用方法の選択肢として魅力があるようです。前述の調査でも、シェアハウスにリノベーションする前の建物形態は「空き家戸建て活用」が約5割、築年数20年以上の物件が約7割との回答結果が出ています。また、シェアハウス事業を開始した理由(複数回答)については、「保有物件を有効活用するため」(35%)に対して、「事業を通じて社会に貢献したいため」の割合が37.4%と最も高く、低未利用物件オーナーの社会課題に対する意識の高さも窺えます。
そのように見てみると、シェアハウスは、「空き家問題」や「低所得者向け住居供給」、「地域コミュニティの醸成」といった、地域課題解決型の不動産活用に繋がる可能性を秘めています。

シェアハウスに関連した法制度

国も、「空き家が増加傾向にある中で、住宅をそれ以外の用途に変更して活用することが求められており、(中略)安全性の確保と既存建築ストックの有効活用を両立しつつ、建築規制を合理化していく必要がある」として、2018(平成30)年に建築基準法の一部を改正し、以下の点について規制を緩和しています。

  • ①戸建住宅等(延べ面積200m2未満かつ階数3以下)を特殊建築物(不特定多数が利用する建築物)とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とする。
  • ②用途変更に伴って建築確認が必要となる規模上限を100m2から200m2に見直し
    これにより、延べ面積200m2未満で3階以下の戸建住宅をシェアハウスにリノベーションする負担が軽減されたことで、シェアハウスの増加を誘発しているものと思われます。

また、2017(平成29)年に改正された「住宅確保要配慮者(高齢者、障碍者、低所得者、ひとり親世帯、子育て世帯、外国人等)に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」では、建物の改修費や家賃低減化に対する国や自治体の補助が受けられる制度が整備されています。前述の調査でも5割以上の事業者が「住宅確保要配慮者を入居者に含むシェアハウスを運営している」としており、住宅セーフティネット制度の活用についても、シェアハウス運営の動機付けになっていることが推察されます。

人口減少、少子高齢化時代、経済活動全体が減速傾向にある中で、有限な既存不動産や建築物を利活用する手法として、また低未利用物件のオーナーのシーズと、高齢者やひとり親世帯、外国人等住宅確保要配慮者のニーズを相互に満たす取り組みとして、多種多様なシェアハウスの動向に、注目していく必要がありそうです。

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