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コラム No.53-50

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戦略的な地域活性化の取り組み(50)公民連携による国土強靭化の取り組み【12】シェアリングエコノミーを基盤としたシェアリングシティの可能性

公開日:2022/06/22

「シェアリングエコノミー(sharing economy:共有経済)」という言葉を、よく耳にするようになりました。ポスト大量生産・大量消費時代にあって、資源の有効活用、遊休資源の再活用に目が向けられています。

シェアリングエコノミーの概要

シェアリングエコノミーとは、2000年初頭頃から米国で急速に広まった考え方で、個人資産を有償で貸し出すビジネスモデルのこととされていますが、実際のビジネス形態としては、資源を提供する側と、それを利用したい個人とを、ネット上のサービスプラットフォームでマッチングし、個人から利用料を徴収し資源提供側へ配分する仲介事業として展開されています。
対象としては、(1)民泊やホームシェアなど空間をシェアするサービス、(2)カーシェアリングやシェアリングサイクルなど移動手段をシェアするサービス、(3)フリーマーケットアプリやレンタルサービスなどモノをシェアするサービス、(4)家事代行や子育てシェアなどスキルをシェアするサービス、(5)クラウドファンディングなどお金をシェアするサービスなどがあります。また課金システムとしては、利用した分だけ課金する従量制や、一定期間で使い放題とするサブスクリプション(期間定額)制など、多様化しています。
これらシェアリングサービスを活用することで、利用者にとっては資源を所有することなく、使いたいときに利用することで無駄なコストを削減することができますし、資源を提供する側は遊休資源を再活用して収入を得るメリットが生まれるため、デジタルネイティブ世代に急速に浸透してきています。コロナ禍が騒がれ始めた一時期には、“共有する”ことへの警戒感から、シェアリングエコノミーに消極的な見解も出ましたが、経済成長の停滞や地球環境への配慮などから、「モノ消費」から価値ある経験やサービスを求める「コト消費」へと消費者意識が変化しており、シェアリングエコノミーの流れは着実に浸透していると言えそうです。

シェア(共有)することの必然性

シェアリングエコノミーが発展してきた背景には、IT技術が発達しネット社会が拡大したことがあります。SNSなどを通じてコミュニティを形成するツールが充実したことで、遊休資源を有する個人と、それを利用したい個人との間で情報を共有しやすい環境が創出されました。特に経済低成長期となった2000年以降に生まれた、いわゆるZ世代は、モノ所有・消費意欲が低い反面、社会的課題への関心が高い世代であり、幼少期からネット社会が生活に浸透していることから、シェアリングエコノミーを抵抗なく受け入れていると考えられます。
一方、過去を振り返ってみると、ほんの半世紀前までの日本では、多くの国民は隣人同士のコミュティの中で、衣食住に関わる様々なモノを共有して支え合う生活を送っていたのではないでしょうか。地方においても、山野を共有財として開拓し管理していた時代が長く続いていました。モノを所有し消費することが豊かであるという意識は、核家族化により私有財産の分割化が進んだ第二次世界大戦後の高度経済成長期に顕著になっていったように思えます。しかし近年では、少子高齢化、人口減少時代に入り、空き家や空き地などの未利用、遊休資源が増加する結果を招いています。このような時代背景を考えると、シェアリングエコノミーという共有文化が再来することも必然なのかもしれません。

シェアリングシティの可能性

シェアリングエコノミーを、自治体と連携して地域全体で推進していこうという、シェアリングシティという構想が進んでいます。一般社団法人シェアリングエコノミー協会によれば、シェアリングシティとは、シェアリングサービスを自治体のインフラとして浸透させることで、遊休公共資源や町に眠る人やモノといった遊休資産を活用し、自治体の課題を解決する構想のことです。そうすることで、「公助」から「共助」のサステナブルな街づくりを実現することができる、としています。
地域においては、公的サービスのみで地域の住民ニーズを満たすことは、財政面あるいは人的資源面からも困難です。シェアリングサービスを地域で活用することで、公共資源や私有資源を相互に有効活用し、地域内で住民同士が支え合う環境を整備できるのではないか。加えて、大都市と地方が有する資源を共有することで、関係人口を創出し、地域間格差を解消する効果も期待ができるのではないでしょうか。
2022年6月1日に開催されたデジタル田園都市国家構想実現会議(第8回)で、「デジタル田園都市国家構想基本方針(案)」が公表されました。その中でも、「人口減少に伴う地域経済の縮小や担い手不足の状況の中、地域内外のリソースを最大限有効に活用するため」に、シェアリングエコノミーが、「個人の多様な生活や価値観に寄り添う共助のビジネスモデルを構築」する有効な手段の一つであることが示されています。シェリングシティという考え方は、地域を活性化し循環させるスマートシティ創出の手法として注目されます。

公有資源、私有資源の枠を超えた社会的な共有資源という概念は、PREの本質とも言えます。地域で公共性を有する資源は住民によって共有が可能であるとの発想を進めることは、ニューノーマル時代に相応しい持続可能な国土の創造につながると思います。

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