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コラム No.53-23

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戦略的な地域活性化の取り組み(23)国家戦略としての農業改革(2)

公開日:2020/03/23

日本における農業は、高齢化、人手不足という課題を抱えています。この課題を「スマート農業」により解決するとともに、生産性を上げ、農作物の生産コストを引き下げて、魅力ある産業として農業が若手人材にとっても認知されることで、持続可能な新たな農業を創造する取り組みが進められています。

「スマート農業実証プロジェクト」

2019年度から農林水産省が開始した「スマート農業実証プロジェクト」は、ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用した「スマート農業」を2年間にわたって技術実証し、技術の導入による経営への効果を明らかにするとともに、その効果を、農業者に広く情報発信していく取り組みで、現在、全国69地区で展開しています。
また、当プロジェクトで得られたデータや活動記録などは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が事例として整理し、農業者が技術を導入する際の経営判断をサポートする情報として提供されることになっており、2025年までに全ての農業の担い手がデータを活用した農業を実践することを目指しています。
全国の実証農場では、意欲ある生産者と、農業機械メーカーやITベンダー、大学・農業試験場といった研究機関などで組織されるコンソーシアムが、研究所や実験場などで成果を上げているスマート農業技術を、現場レベルで実証し、さまざまなデータを集めています。また、69地区の実証農場では、情報発信拠点として視察を受け入れ、定期的に報告会を開催するなど、プロジェクトの取り組みを広く情報発信しています。

稲作の生産コスト削減

例えば、稲作の生産コストの削減手法としては、農地を集約し大規模化することで農作業の効率化を図る他に、以下のような取り組みがあります。
育苗や田植えを省略する「直播栽培」、育苗箱数を減らし資材費を低減する「密苗栽培」、品種を組み合わせて作業ピークを分散し収穫量を増やす「作期分散」、肥料やりを適正化、効率化することによる「肥料の節約」、収穫量の多い「あきだわら」などの「多収品種の導入」、そして「ICTの活用」です。
農林水産省の資料によれば、平成28年の全国における60kg当たりの平均的な米生産費は、15,000円弱ですが、生産コストを削減し販売価格を抑えることで、高価格帯の家庭内食向け(いわゆるレギュラー米)の他に、今後需要の拡大が望める、コンビニ、弁当屋、ファーストフード、ファミリーレストラン等業務用向け(いわゆるエコノミー米)への供給増が見込めますし、海外輸出用としても期待されます。

輸出に対応できる「超低コスト米」生産体制の実証~(有)アグリードなるせの取り組み~

(有)アグリードなるせは、宮城県仙台市の北東にある東松島市にあります。当地は、太平洋に面しており東北としては比較的温暖な気候で、ネギ、トマト、キュウリのほか、ササニシキ、ひとめぼれなど水稲栽培が盛んです。同社は、中下農業生産組合から2006年に法人化した会社で、現在、約100haの農地で水稲、麦、大豆などを栽培しています。同社の農地が拡大した要因は、2011年の東日本大震災で離農した約140件の農地を管理しているためです。水田の利用効率を上げるため、水稲、麦、大豆等の2年3作、3年4作体系に取り組んでいますが、経営規模拡大により労働力不足が懸念されました。近年では、担い手の高齢化などにより労働力が不足している一方で、農業法人への就農者は増加しており、ベテランスタッフと遜色ない作業精度の向上が早期に求められることから、「スマート農業」の本格的な導入を進めました。まず同社が取り組んだのが、生産状況の「見える化」です。具体的には、メーカーが開発したスマートアグリシステムを導入し、リモートセンサー情報やドローンの撮影画像を基に生育状況をデータ化し、追肥の必要性や収穫時期を把握しスタッフ全員が共有することで、農地に出向かなくても、その日の作業内容をオフィスで確認できることを実証しています。
また、無人自動運転トラクタや食味・収量センサ付き自動走行コンバイン、直進キープ機能付き田植機など、スマート農業機械を導入して、作業の省力化を図っています。
これにより、平均的な水稲生産コストから半減させる7,000円/60kgという高い目標を掲げ、輸出にも対応できる超低コスト米の生産体制の確立を目指しています。
さらに、2015年には農産物処理加工施設「NOBICO(ノビコ)」をオープンし、自社栽培の小麦の製粉のほか、菓子(バウムクーヘン)の製造・販売を行い、6次産業化による経営発展と地域雇用の創出することを目指しています。これらの取り組みにより、若者が憧れる職業として、新しい農業が定着することが期待されます。

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