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コラム No.53-18

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戦略的な地域活性化の取り組み(18)廃校活用事例4 ドローン訓練施設としての廃校活用

公開日:2019/10/23

最近、空撮や運搬の手段として、ドローン(無人飛行機)を活用する動きが活発になっています。一方で、ドローンを市中で飛行させるには、さまざまな規制があります。そうしたことから、ドローン訓練施設として廃校を活用する事例が全国で増えているようです。
そのような事例を、文部科学省が編集した「廃校施設活用事例集~未来につなごう~みんなの廃校プロジェクト」から、ご紹介します。

意外と大変なドローン運用に関する規制

ドローンは飛行機の一種ですので、まず「航空法」による規制の対象となります。空港周辺での飛行、150m以上での飛行、人家の集中地域上空での飛行、第3者の30m未満の範囲での飛行、イベント会場等上空での飛行は、原則として禁止されており、飛行させたい場合は国土交通省の許可が必要となります。
次に、国の重要な施設等(国会議事堂や内閣総理大臣官邸、外国公館、原子力事業所など)の周辺地域の上空及びその周囲おおむね300mの地域においては、「小型無人機等飛行禁止法」により禁止されています。
さらに、無許可で道路等から離着陸することは「道路交通法」によって禁止されています。その他にも、そもそも私有地上空に侵入することは、民法上の土地所有権の侵害となる可能性がありますし、電波法や各自治体の条例によって規制されている飛行条件もあります。これらの規制により、特に都市部においては、一部に特区制度を活用してドローンの実証実験は行われているものの、現状ではドローンを臨機応変に飛行させることが困難な状況です。
しかし一方で、飛行の安定性や操縦の容易さから、各業界でドローンを活用したさまざまな新しい事業提案がなされており、機体の開発やテスト環境、ドローン操縦技術の向上需要は高まっています。そのような中、ドローンの開発や実験、操縦訓練施設として、廃校を活用する動きが活発となっています。

廃校となった小学校がドローン操縦士養成教習所として再生

茨城県高萩市は、茨城県北東部の県北地域に位置し、明治以降は炭鉱の町として栄え、隣接する日立市をはじめ、関連する重電機関連企業が集積していました。しかし、石炭需要の低迷により炭鉱は閉鎖され、現在は木材加工や農業が中心となっています。高萩市内にあった旧君田小学校も少子高齢化により、2016(平成28)年度に廃校となり、自治体は民間活用による再生を目指すことになりました。
その動きに手を挙げたのが、茨城県日立市に本社を置き、綜合設備事業を通じて社会貢献を目指しているイガラシ綜業株式会社でした。同社は、廃校をドローン操縦士養成教習所として活用する提案を行い、新たに株式会社茨城航空技術研究所を設立し、旧君田小学校は2018(平成30)年度に「高萩ユーフィールド」として生まれ変わりました。
「高萩ユーフィールド」は、敷地面積76,021m2の旧君田小学校の施設をほぼそのままの状態で、運動場は飛行教習場所、教室は座学会場、体育館は屋内飛行場として活用しています。また、同施設は、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が認定するJUIDA認定スクールを運営し、修了生には当校の修了証が交付されて、JUIDA無人航空機操縦技能証明証、JUIDA無人航空機安全運航管理者証明証が交付されます。
また、夏季にはキャンプ場としても解放され、子どもとともにドローン操縦体験やドローンプログラミング体験、空撮体験を楽しめる交流の場となっています。今後、交流人口の拡大や地域住民の雇用創出による地域振興が期待されています。

ドローンの試運転に最適な廃校をドローン技術研究所として活用

山梨県身延町に位置する旧中富中学校は、町内の4中学校が統合されたことにより2016年(平成28年)に廃校となりました。その施設の活用を提案したのが、地元企業で業務用ドローンの企画・開発・製造・販売を手掛けるサイトテック株式会社です。同社は、廃校施設をドローン技術研究所として利用、本社も同所に移転しました、茨城県高萩市の事例と同様に廃校施設をほぼそのまま利用し、改修にかかった費用は、わずか100万円とのことで、廃校を活用することで大幅なコスト削減を実現しています。
同社によれば、学校の体育館は気象の影響を受けないためドローンの試運転には最適であり、広い校庭は周辺に気兼ねなく試行訓練が可能で、教室は普及啓発のためのセミナー会場に活用できるため、学校施設はドローン飛行場として好立地であるといいます。
地域としても、民間による廃校の利活用により、地域産業振興が期待できるとして評価されているようです。
ドローンは今後、空からの測量や監視をはじめ、農林水産や建設、運輸、情報通信分野などでさまざまな利用方法が計画されており、ドローンの研究開発や性能試験の需要は益々高まっていくものと思われます。役目を終えた地域の廃校施設が、そのような将来産業発展の一役を担う施設に生まれ変わることで、廃校の地域住民の希望や期待をも再生することにつながるのではないでしょうか。

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