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コラム No.53-75

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戦略的な地域活性化の取り組み(75)公民連携による国土強靭化の取り組み【37】地域活性化を生む二地域居住の普及・定着促進を推進

公開日:2024/07/31

国土交通省は、二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」を2024年5月に一部改正し、二地域居住の普及・定着促進を明確に示しました。
そのなかで、後述する特定居住促進計画の作成数を施行後5年間で累計600件、二地域居住等支援法人の指定数を施行後5年間で累計600法人を目標としています。

二地域居住促進の背景・必要性

国土交通省によれば、二地域居住とは、「主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点(ホテル等を含む)を設ける暮らし方」としています。また、2022年に設立された全国二地域居住等促進協議会は、「都市での生活を主とするもの」から「地方や郊外での生活が主となり都市との関わりも一定程度あるという形態」まで広く二地域居住という用語を用いているようです。効果面に着目すると、地方への人の流れを生み、地域に新たなビジネスや雇用を創出し、関係人口の創出・拡大等に寄与するライフスタイルということになります。

近年、都市部への人口集中が進む中で、地方においては地域の活性化を担う人材の確保が課題です。しかし、人口減少時代にあっては、全国で定住人口を延べて増加させることは困難です。そこで国は、広域的に地域活性化を進めるための基盤整備を進め、都市部と地方部相互で活躍する人材(関係人口)を増やす取り組みを推進しています。今回の法改正は、コロナ禍で普及しているテレワークや働き方改革の流れで、多様なライフスタイルを実現する二地域居住のニーズが高まっていることが背景にあり、その基盤整備として、市町村の権限を広げ、地域内連携を強化する内容になっています。

  • 改正の概要
  • (1)市町村は、二地域居住の促進に関する「特定居住促進計画」の作成が可能となり、法律上の特例措置(用途制限の緩和など)が受けられるようになります。
  • (2)市町村は、二地域居住促進の活動を行うNPO法人、民間企業等を「特定居住支援法人」として指定することが可能となります。
  • (3)市町村は、都道府県、特定居住支援法人、地域住民等を構成員とする「特定居住促進協議会」を組織することが可能となります。

他にも、国土交通省の資料によれば、地方移住促進テレワーク拠点施設整備支援事業、新たな交流市場・観光資源の創出事業、共創MaaS実証プロジェクト、地方創生移住支援事業、農山漁村発イノベーション推進・整備事業(農泊推進型)、農山漁村発イノベーション整備事業(定住促進・交流対策型)などの支援事業を行うとしています。

端的に言えば、基礎自治体である市町村が、都道府県と連携して地域計画を整備し、地域でコワーキングスペースやテレワーク施設・設備等を提供しているNPO法人や不動産事業者等民間企業、地域関係者との連携を強化する活動に対して、国が様々な助成制度等でバックアップすることで、二地域居住を推進する施策であると言えます。

地方における二地域居住促進の可能性

法改正が行われて間もないため、取り組み事例は今後になりますが、これまでにも二地域居住を推進、サポートする活動が全国で見られます。
JR西日本は、沿線自治体と協業して、「おためし暮らし」という取り組みを始めています。具体的には、京阪神都市部エリア内各駅に通勤する個人を対象に、丹波篠山市、南丹市、高島市、甲賀市が期間を設定した「おためし住宅」を提供するとともに地域暮らしをサポート、JR西日本は運賃や特急料金等の通勤費の40%相当を還元することで、移住や二地域居住体験を支援しています。
徳島県は、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)等及び徳島県内の公立小中学校を対象に、区域外就学制度を活用した「デュアルスクール」を推進し、就学児童を持ちサテライトオフィス勤務やリモートワーク・ワーケーションをしたい家族に対して、就学問題をサポートすることで、二地域居住や地方移住を促進する取り組みを進めています。
栃木県栃木市では、空き家や古民家を1泊2000円で利用できる移住体験施設として整備し、栃木市の魅了を発信するとともに、空き家バンクを活用した手頃な物件を紹介することで、首都圏に比較的近いという栃木市の立地を生かした、二地域居住を促進する取り組みを行っています。

二地域居住促進の課題

人口減少や少子高齢化が急速に進む中で、国は近年、従来の都市計画で規制されている用途地域や建築基準を修正・緩和する法改正で対応しています。都市部において都市機能の集約化、高度化を促進する「都市再生特別措置法」(2002年)、過疎化が進む地方部の市街地における生活基盤整備を集約化して公民サービス水準の維持を促進する「立地適正化計画制度」(2014年)など、都市や地域内のコンパクトシティ化という大きな動きがあります。一方で、「広域的地域活性化の基盤整備」の手法としての二地域居住促進には、都市部と地方部、または地域間連携が重要な要素となるでしょう。
前述した事例にもあるように、既に広域的に官民連携による二地域居住促進の取り組みがありますが、二地域居住を志す個人にとっては、「住まい」のほかに「生業(仕事)」、「地域交流(コミュニティ)」、「子育て」、あるいは「移動に要するコスト」などのハードルがあるとされています。その課題解決が地域住民の利益に資するのか、持続可能な地域活性化を醸成するのかといった地域内の議論が、今後は必要となるのではないでしょうか。
いずれにしろ、地域自治体にとっては地域間の人的交流を推進する手段と支援施策が準備されたところですので、ユニークな取り組み事例の出現に期待したいところです。

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