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コラム No.53-57

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戦略的な地域活性化の取り組み(57)公民連携による国土強靭化の取り組み【19】地域活性化の拠点となる道の駅が、地域間ネットワークで成果を上げる

公開日:2023/01/31

道の駅は、当初、道路利用者への休憩場所の提供、地域情報の発信を目的として展開してきましたが、現在では、新たな観光地として集客数を拡大させ成長している施設も多数みられます。国内外からのインバウンドを呼び込む長期滞在型のリゾート地というよりは、地域の魅力を発信するゲートウェイとして地域活性化に貢献している事例が多いようです。今回は、地域活性化の拠点として成果を上げている取り組みをご紹介します。

地方創生と道の駅

道の駅は地方創生・地域活性化にどのような役割を果たしているのでしょうか。まず、道の駅は地域の特産品や新鮮な農産物等の直売所になっている施設が数多くあり、地域生産者にとっての物産展示・販売施設としての役割を担っています。観光客等の来街者や地域住民にとっては、地域産品が購入できる「ショッピングモール」的な存在であり、それが道の駅の集客力の源泉となっており、ひいては地域ブランド開発の拠点として地域貢献しています。また、来場者に対して地域情報を提供することにより、多様な地域の魅力を紹介するハブとして機能することで、観光客を誘導する地域観光のゲートウエイともなっています。さらに、道の駅は地域自治体を主体とした公民連携事業であることから、地域行政・福祉の拠点としての役割も期待されており、来街者と地域住民との交流拠点(コミュニティセンター)としての役割も果たしています。
そもそも道の駅は、道路利用者への休憩場所として地域に多数設置されていますので、全ての道の駅が地域活性化拠点となるわけではありませんが、戦略的な地域開発の基盤として、大きなポテンシャルを持つ地域資源であると思います。

道の駅「川場田園プラザ」

1993(平成5)年にオープンした群馬県利根郡川場村にある道の駅「川場田園プラザ」は、国土交通省の「全国モデル道の駅」にも認定され、地方創生のモデルとして注目度が高い道の駅です。「川場田園プラザ」は、「農業+観光」による村づくりを事業コンセプトに、自然豊かな武尊山の麓に立地し、東京ドームより広い6ヘクタールの敷地の中に、地元の新鮮野菜や果物が買えるファーマーズマーケット、地元食材を使用したレストランやカフェ、ミートやパン、ビール、チーズといった食品加工工房と販売所、日帰り温泉施設などを有し、年齢を問わず1日中楽しめる田園行楽地として人気の道の駅となっています。また、敷地外に宿泊施設も運営しており、川場村全体の魅力を伝える地域観光のゲートウェイとしての役割を担っています。
公式ホームページ(http://www.denenplaza.co.jp/)によれば、「川場田園プラザ」は、コロナ禍以前の2018(平成30)年当時で、年間来場者数190万人超、来場者リピート率は7割以上にのぼり、140名あまりの従業員を抱えています。首都圏に近いとはいえ、都心から約160kmの距離に位置し、アクセスに約2時間を要する面積約85km2、人口約3300人の山村に、これほどの集客力を持つ施設を創造する川場村の公民連携によるマーケティング力、商品企画力には、地域の底力を感じます。

「川場田園プラザ」成功の地域背景

「川場田園プラザ」が立地する川場村は、1981(昭和56)年に東京都世田谷区と「区民健康村相互協力に関する協定」を締結し、村内には世田谷区の保養所や研修施設が設立され、小学生の相互訪問など緊密な関係が続いています。その流れの中で、1989(平成1)年から1990(平成2)年にかけて検討された「世田谷区民健康村第2期の運営と整備に関する指針」で、川場村の多機能施設としての田園プラザの開発と、世田谷区との事業協力の必要性が提案され、道の駅「川場田園プラザ」の構想が策定されたとされています。さらに、1999(平成11年)から2010(平成22)年にかけて政府主導で進められた市町村合併施策、いわゆる「平成の大合併」の折には、利根郡の他の町村とともに隣接する沼田市と合併する案が浮上しましたが、川場村は安易な近隣自治体との合併に疑問を呈し、関係の深い世田谷区との合併を検討したという歴史があります。法的な問題は無いながらも、両自治体の調整にはハードルが高いことから、この飛び地合併は実現しませんでしたが、自然の豊かさを求める都心の自治体と、過疎化を打開するために都市部との関係人口を増やしたい地方の自治体との、より密接な相互補完・連携の可能性を示した出来事であったと思います。
このような川場村の地域背景や「川場田園プラザ」の発足経緯をみると、都心住民をターゲットとした施設・商品の卓越した開発力、公民連携による闊達な事業推進力にも頷けます。「川場田園プラザ」は、道の駅を観光の目的地として成長させるために、農村の豊かな地域資源をどのように開発し、自然に安らぎを求める都市部の住民にどのようにアピールすればよいのかといった課題に対して、ひとつの方向性を示唆しているように感じます。

産業界では、異業種間連携によるイノベーションの重要性が指摘されています。地域活性化においても、異なる立地環境を持つ地域間の積極的な連携で地域を超えたコミュニティを形成することが、地域創生の一つの有効な手法なのかもしれません。

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