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コラム No.157

CREコラム トレンド

フィジカルインターネットで加速する物流効率化

公開日:2024/08/30

慢性的なドライバー不足や時間外労働の上限規制などによる「物流2024問題」への対応で、フィジカルインターネットによる物流効率化の議論が進んでいます。
2021年10月にフィジカルインターネット実現会議(経済産業省・国土交通省)が設置されて以来、議論が進められており、国は2023年6月に新たな物流政策の指針を示すなど、フィジカルインターネットの実現に向けての動きが活発になっています。

実現会議では業界WGが増加

フィジカルインターネットとは、「インターネット」のパケット交換の仕組みを物流に適用して、単一的に向いていたモノの流れを複線化し、「フィジカル」な荷物の輸送・仕分・保管を変革する物流効率化策の一つです。トラック等の輸送手段と倉庫のシェアリングによる稼働率向上と燃料消費量抑制によって、持続可能な物流システムを目指します。
具体的には、2022年2月に北海道・函館市でコンビニ3社が共同配送の実証実験を行ったほか、新幹線や高速バスを使って野菜や鮮魚などの生鮮品を輸送する「貨客混載」、大手の食品会社と飲料会社のトラック共同輸送など、国内でも具体的な取り組みが増えています。

「フィジカルインターネット実現会議」では2040年の実現を目指し、業界別のワーキンググループを組成。2030年を目標とするアクションプランを作成する意向です。実現会議では、スーパーマーケットや百貨店、化学品や建材など流通関連やメーカー系といった多くの業界ワーキンググループ(WG)が立ち上がっています。小売や卸などわが国独特の流通機構は業種によってさらに複雑化しており、業界ごとの特殊事情を勘案しなければシームレスな物流効率化は実現しません。このため、実現会議では業界固有の物流システムにおける問題を整理しながら、統一した物流効率化に向けて最適解を模索しているように見えます。ただ横断的な物流改善を推進するには、業界固有の問題の解決と同時に業界共通の物流データや実施ガイドラインの整備を並行して進めることが求められます。

情報標準ガイドラインマニュアルを策定

国土交通省は2024年3月、個別企業や業種を超えた共同化の前提としての物流標準化を図るため、「物流情報標準ガイドライン」の利用手引を作成しました。各企業は独自の基幹システムや物流システムを構築して運用しており、これを一本化するのは事実上不可能。そこで業界統一のデータや運用基準が必要になってきます。作成した国交省は、システム部門だけでなく、物流効率化を社内全体で徹底するための方針の策定や設備投資を伴う対策など、経営戦略に直結する取り組みを進めていく必要があることから、経営陣にも周知する必要があると判断し、経営課題としてガイドラインを定めました。
物流に関するデータは現在、各企業が個別にデジタル化しているので円滑な情報の受け渡しがしにくく、サプライチェーン全体としての効率性が損なわれている状況にあります。物流現場の労働力不足が深刻な中、現状のままでは物流事業者の業務負荷が高く、物流の停滞につながる恐れがあります。
そのため、物流情報の標準化で物流の効率化に向けた自動化・機械化や荷主・物流事業者の連携・協働を円滑にするための環境を整備する必要があります。ガイドラインは広範囲でのデータ連携などによる物流の効率化・生産性向上のために必要なデータ項目の標準形式などが定められています。具体的には次の3つです。

  • (1)物流業務プロセス:共同運送、共同保管、検品レス、バース予約を行う際の運送計画や集荷、入出庫、配達など物流プロセスの流れやルール。
  • (2)物流メッセージ:運送計画や集荷、入出庫、配達など物流プロセスで用いるメッセージ(複数のデータ項目で構成された物流情報)のルール。
  • (3)物流共有マスタ:物流メッセージ標準を採用する各業界システムがマスタ整備をする際の指針。

建材・住宅設備業界は納品条件適正化ガイドラインを策定

一方、実現会議の建材・住宅設備WGは2024年3月、物流現場における荷待ち・荷役作業などにかかる時間の短縮やトラックの運行効率の向上を狙いに「建材・設備物流における納品条件適正化に向けたガイドライン」を策定しました。取り組み事項は、次の8項目です。

  • (1)荷渡し条件の適正化・明確化
  • (2)現場との情報連携
  • (3)納品時間帯の適正化
  • (4)受注リードタイムの確保
  • (5)納品リードタイムの確保
  • (6)発送量の適正化
  • (7)モーダルシフト活用によるトラック輸送距離の短縮
  • (8)運送契約における配送と荷役の分離

フィジカルインターネットを早期に実現するには、個別企業や各業界における物流改善のためのシステム化が不可欠なのは言うまでもありません。それを可能にするには高コストのシステム構築が求められるだけに、各社の経営層や業界のリーダーの強い関与が求められます。その意味では、フィジカルインターネットは物流DXの大きな柱の一つといえるのではないでしょうか。

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