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このたび大和ハウス工業株式会社の『DXアニュアルレポート2023』に対する「第三者コメント」の執筆を依頼いただいた矢島孝應です。以前から発行されておられた『ITアニュアルレポート』の頃から読ませていただいております。私はパナソニック、三洋電機、ヤンマーの3つの製造会社で情報システム責任者をさせていただき、現在は「日本企業をIT/デジタルで強化する」活動をNPO法人の立場で推進している「特定非営利活動法人 CIO Lounge」の理事長をしております。
今回『DXアニュアルレポート2023』を拝読し、先ずは大和ハウス工業のIT化、並びにデジタル化への取り組みが年々強化され、着実に経営の中核的取り組みとして進んでおられる点に敬意を表したいと思います。
日本並びに日本企業の特徴として、「日本は外圧が無ければ変革ができない」と言われることが挙げられます。この数年間、残念ながらやはりパンデミックという外圧により社会のしくみや常識が大きく変化しました。そのことは全てがマイナス面ばかりではなく、日本もようやく「働き方」や「お客様接点」等においてITや通信を有効活用する方向に一歩踏み出したように見えます。しかし、スイスに拠点を置く国際経営開発研究所(IMD)が毎年発表する経済指標「世界競争力ランキング」の中には「世界デジタル競争力ランキング」があるのですが、2022年度のランキングでは、残念ながら日本は、2020年から毎年1位ずつ順位を下げ、29位まで順位を下げてしまいました。特に指標のひとつである「ビジネスの俊敏性」を見ると、2022年は63カ国中62位とワースト2となってしまいました。つまり日本ではこの数年間、外圧によりIT化やデジタル化が進み、ビジネススピードが強化されたと思っている企業や各種団体が多いのですが、他国の進歩はそれを上回る速さで変化が進んでいるという事実を知らなければなりません。
矢島 孝應(やじま たかお)
1979年松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社。三洋電機株式会社を経て2013年1月にヤンマー株式会社に入社。その間、アメリカ松下電器5年、松下電器系合弁会社取締役3年、三洋電機株式会社執行役員、関係会社社長3年を経験。ヤンマー株式会社入社後、執行役員ビジネスシステム部長就任。2018年6月に取締役就任。2020年5月退任。現在NPO法人 CIO Lounge理事長。
そうした状況下で、日本企業は二極分化していると考えます。一方は大和ハウス工業のように会社の中核としてIT/デジタル化を進めている企業と、もう一方は従来通り企業活動の経費の一部としてIT/デジタル化を進めている企業です。日本企業は戦後素晴らしい経営者が数多く登場し、企業が社会を変革すると言う強い想いを持ち、第二次産業革命の技術と欧米の経営手法を取り入れて強固な企業を作ってきました。その際、経理部門、人事部門、戦略部門のような機能組織が縦割り組織に横串を刺し、全社視点で社長の意思決定と行動を支える役割を果たしてきました。よってこれらの部門長が企業の取締役会やボードメンバーになってきたわけです。しかし、第三次産業革命を超えた「デジタル革命時代」の今、企業を全体的に鳥瞰しマネージメントするためには「情報(データ)」と「業務プロセス」が重要になります。さらに、SDGs経営を進めていくためには、業界や社会レベルを見据えた企業活動をしなければなりません。つまり、これまで以上に広い視野と役割を持ち、横串を刺すことが企業の成長に不可欠な取り組みになったといえるでしょう。今回の『DXアニュアルレポート2023』で「第7次中期計画」の重点テーマとして「デジタルトランスフォーメーション」の取り組みが3つの経営方針すべてに横串を刺して取り組む様に表現されておられ、そこに強い意志を感じました。このレポートを通じて大和ハウス工業がますます「強固な組織になっていくぞ!」という素晴らしい意志を感じることができました。大和ハウス工業の今後の更なる発展を祈念しております。