DX推進を支える組織体制
建物管理業は労働集約型産業であり、これまで多くの業務を人の手で行ってきました。
そのような中、人手不足が年々深刻なものとなり、将来の顧客サービス力維持が困難になってきています。従前のように労働力が十分に確保できていた頃は、「各業務」を担当する人財を「各現地」に配置し機能していました。
しかしながらこれからは「人でなければ対応できない必要最小限の作業」を残しつつ、可能な限りデジタル化を進め、品質を維持したまま管理業務の「省力・省人」を実現する新しい建物管理が必要な時代になります。
当社グループは省力・省人からさらに一歩進んで、各種IoT機器から得られるデータを集積・分析し、管理業務の数値化・見える化を図ることで、お客さまにも透明性と付加価値の高い管理業務を提供していきます。
そして「労働集約型産業」から脱却し「労働分散・データ活用型産業」へ、「アナログ対応」から「デジタル化・データ活用」への構造転換を図ることで、お客さまに必要とされる企業であり続けます。
建物管理の基本構成要素である「受付」、「巡回」、「点検」、「清掃」、「警備」といった業務を「人でなければできない作業や対応」と「機械やITに置き換えられる作業」に分解します。
前者は「アナログ手法の強化・特化」、後者は「デジタル手法への転換・DX化」を行い、それぞれの持つ能力・機能を最大・最適化し、管理業務全体の品質向上と効率化を図ります。
また、その過程で得られる「受付対応記録」、「防犯カメラ映像解析」、「点検結果・モニタリングデータ」、「清掃記録」、「警備報告」を分析・活用することによって、管理上の課題や設備異常、不具合箇所等の抽出を行い、改善提案や修繕提案につなげます。
「人」と「IT」が融合したハイブリッドDX管理を構築し、居住者・建物利用者の皆さまに快適な住環境、安全・安心を提供するとともに資産価値の向上も同時に実現します。(図1)
図1:人×デジタル=新しい管理業 集積データの二次活用
管理員業務においては、省人化を目指し「無人受付機」を開発しました。大和ライフネクストの管理マンションや大和ハウス工業の新築分譲マンションに導入を進めています。
設備点検業務においては、センサーやAIを駆使した「遠隔設備モニタリングシステム」を既築マンション約100棟に導入を進め、従前の「年数回の点検時の人の経験や技能により左右される不安定なデータ」から「年間100万ポイントを超える客観的で精度の高いリニアデータ」を収集できるようになりました。
警備員業務は、有人巡回から防犯カメラを中心とした「映像巡回・映像解析」技術への転換が進んでおり、マンション管理会社変更における選定においても他社よりも優位となっています。
建物のハード面では、非接触によるオートロック開錠を可能とする「顔認証開錠システム」をリリースしました。この顔認証は登録・抹消作業などの管理上の省力化を実現する技術で、大和ライフネクストがオリジナル開発したファームウェアを搭載しています。
管理業務に付随する設備改修や大規模修繕工事においては、「ウェアラブルカメラ」を活用して移動時間やコストの低減を進め、それをお客さま負担コストに還元できるよう努めています。また、遠隔地での管理員育成や技術者による支援など「映像共有」によるDX化も進めています。
今後、管理員業務や受付業務の省人・省力化をさらに進めるために「リモート受付システム」や「スマートフォンを活用した遠隔作業支援システム」 の開発に取り組みます。
管理建物各所に設置したセンサーやカメラ、ロボットから発信・集積される計測データ・数値データ・映像解析データに、気象データ・温湿度データ等を組み合わせ、AIで集積・分析することにより、安定的な設備稼働やセキュリティ強化、清掃品質・美観の向上など、管理品質の向上を実現する「データ活用システム」を構築します。
さらにデータ分析を細分化することにより、マンションにおいては汚染度合いによる清掃手法の最適化、気象情報に基づく防御的設備トラブル対策など、居住者・建物利用者の皆さまに安全・安心・快適を提供します。また、ビル管理においてはエアコン制御の最適化による電気料金の削減、人流解析やヒートマップによる管理コスト削減の方策やマーケティングデータの提供など、ビルオーナー・テナントの皆さまに役立つ情報配信を行えるようにしていきます。
「人」と「IT」、「アナログ」と「デジタル」の両面から得られるデータを分析し、「学習・比較・予測・実行」のプロセスを繰り返すことによって生まれる「管理業務改善サイクル」を利用した「ハイブリッドDU(Data Utilization)管理システム」の構築を目指します。
DXで「労働集約型産業」から「労働分散・データ活用型産業」へ
私たち大和ライフネクストは、労働集約型産業である管理事業にITを活用することで「省力・省人・省コスト」化された効率的な事業運営を推進しています。
今後は単なる省力・省人・省コストだけでなく、DX化することで顧客提供価値の向上や、仕事の在り方そのものを変化させていくことを目指しています。
管理事業の基本である管理員(受付)業務、点検業務、清掃業務、警備や緊急対応などの業務を丁寧に分解し、人でしかできないこと、IT・IoTで置き換えられるものを抽出してデジタル化を推進します。さらに集積データを二次活用することで顧客への提供価値を高めたいと考えています。
人のチカラとITの融合で、より豊かな管理事業の創造へ邁進していきます。