CASE25
医療施設
西野内科病院
- 所在地:
- 富山県小矢部市
- 構造:
- 鉄骨造
- 延床面積:
- 4,361.13m2
- 竣工:
- 2023年8月
- 用途:
- 医療療養病床(37床)、介護医療院(27床)
※介護医療院は2024年4月より37床に増床
富山県西部に位置する小矢部市の中心部。この地で医院開設以来、地域の医療・福祉に貢献されてこられたのが、医療法人社団にしの会様です。約70年にも及ぶ歴史を持つ同法人では、時代とともに移り変わる地域のニーズに対して、サービスを柔軟に提供し続けることで、高い信頼を積み重ねてこられました。そんな折、昨今の大きな課題となっていた病院施設の老朽化への対応策についてもご検討。運営する介護老人保健施設との連携をより深めるという狙いも込め、新病院の移転新築を計画されました。
計画のポイント
長年の課題だった病院建物のリニューアルは好機を見定め決断。
築50年近い旧病院の建物は、過去8回ほど増改築を重ねてこられたといいます。しかしながら、老朽化の進行とともに、ハード・ソフトの両面で不具合やトラブルが重なり、その都度対応に追われてこられました。患者さまの安全安心を第一に、建て替えを検討された当時はコロナ禍だったものの、2024年問題等を考慮すると、時機を誤れば工期の長期化や建築費等の総コスト増が懸念されたため、新病院への移転新築をご決断されました。
旧病院から約100m離れた場所に建つ同法人運営の「にしの老人保健施設」の職員用駐車場として活用していた隣地を建設地に決定。計画に際しては、国道471号に面する一部の土地を追加購入することで、必要な機能を備えた4階建ての建物と十分な駐車スペースを確保することができました。
経験を新たな施設づくりに活かし、さらなる展開に備える
新病院では、まず医療物資の備蓄を充実させようとストックスペースを1ヶ所ではなく、院内のさまざまな場所に設置。作業の効率化と必要量の確保を実現します。また、新たに感染対策を講じた発熱外来スペースを設けました。旧病院で経験したコロナ禍における病院施設の課題への対応策です。
さらに、病室やリハビリテーション室については、施設基準を上回る広さを確保しました。これは、将来的に生まれてくるかもしれない新たなサービスへの対応を想定してことです。
法人内全体の日常的な交流とスタッフの士気を高める施設環境
新病院は、旧病院と同じく医療療養病床36床、介護医療院27床(併設)の構成。建設にあたり、隣接の介護老人保健施設と2階部分を渡り廊下でつなぐことを計画された。これによって、スタッフの往来の利便性はもちろん、老健入所者の緊急時対応、法人内のスタッフにおける一体感の醸成や交流の深化にもつながっています。
病院と老健それぞれのスタッフが、所属の垣根を越えた日常的な交流につながるよう、新病院に職員食堂や更衣室・シャワー室などの共用スペースが設けられました。これまで以上に、法人全体の一体感や施設間の連携強化が期待できます。
お客様の声
地域の医療介護ニーズを素早くつかみ
一人ひとりにあったサービスを提供する
3施設の連携を強化する新病院
医療法人社団にしの会 西野内科病院
院長:鮴谷 佳和様
医療法人社団にしの会
法人事務局長:片桐 大輔様
砺波市、南砺市とともに富山県砺波医療圏を構成する小矢部市では、いま人口が減少傾向にあり高齢化率では37.3%(2020年国勢調査)と全国平均を大きく上回る状況になっています。1953年、この地で西野医院を開設したことが当法人の礎となっていますが、当初は急性期の医療機関として地域医療での役割を担っていました。その後、次第に慢性期医療が重視されるようになると、早期に医療療養病床への転換を進め、介護老人保健施設の開設や介護医療院への転換についても比較的スピーディに取り組んできました。
「にしの老人保健施設」の開設は23年前(2001年)。以来、医療療養病床との両輪で幅広く患者さまを受け入れてきましたが、介護医療院の制度導入を受け、医療療養病床の約半分を転換いたしました。一般的には、介護療養病床の転換先として介護医療院を選択されるケースがほとんどだと思われます。当法人の場合、すべてが医療療養病床のままでは「医療区分とその稼働率を重視すると、制度に該当しない医療が必要な方は受け入れられない」ことと、「約半分の入院患者さまは外来から、という自前でのベッド稼働率の高さ」との特性を踏まえ、さまざまな想定を総合的にシミュレーションして検討を重ねました。その結果、27床を介護医療院に転換することで、医療療養病床(36床)、老人保健施設(97名)といった絶妙な構成となり、より幅広い方に、より効率的にサービス提供ができ、より稼働率の高い経営を実現すると考えたのです。実際、2020年にスタートさせた介護医療院は、患者さまやご家族からのニーズが高く、常に満床に近い状態となっています。
また、介護医療院であれば後々の増床も可能という点もポイント。当法人の介護医療院は医療機関併設型であるため、より幅広い入所者の受け入れが可能であることを行政に理解いただけ、新病院完成後の2024年春より10床増床(計37床)を実現しました。
また、当法人の三本柱である医療療養病床と介護医療院、そして介護老人保健施設の連携や役割分担をスムーズにするため、重要だと注力しているのが通所リハビリテーション。定員70名の中、利用者は1日平均60名と高い稼働率を維持しており、利用者様の状況に合わせて各施設の提案ができる仕組みとなっています。
築50年近くになっていた病院建物の建て替えは、当法人にとってここ何年もの大きな課題でした。コロナ禍でありながら決断に至ったのは、2024年問題によるコスト面への影響に因るところが大きかったといえます。旧病院から約100mの距離で、隣接する介護老人保健施設との連携強化が見込める当該地に建設することを決めたのですが、いざ計画を具体化する段となり、社会的問題となっていた工事現場の人手不足・資材調達への懸念も高まってきました。経営面では、予算だけでなく工期も重要です。旧病院を建てた会社、老健の建設をお願いした会社、その他複数の建設会社からの提案を受ける中、初めてのお付き合いとなる大和ハウス工業さんにお願いする決め手となったのは、同社が総合不動産企業であること。技術力、実績、信頼性とさまざまな角度から総合的に判断させていただきました。さらに、利便性の考慮から購入の必要があった国道471号に面した一部の敷地についても、懇切丁寧に所有者との交渉をサポートいただけました。これら複数の要望をワンストップで依頼できたのも大きな魅力だと思います。また、新たに病院を建てるにあたっては、行政等の各方面へさまざまな届け出や申請が必要になります。その点についても、病院建設の経験豊富な大和ハウス工業さんは十分に理解されていて、資料類の準備もスピーディでサポートいただき、非常に助かりました。
施設づくりに関しては、限られた敷地にこちらの要望のほとんどを上手くまとめていただきました。なかでも、職員同士の交流のため設置した渡り廊下ですが、新病院の完成を機に食堂だけでなく更衣室も職員出入口などもすべて共用化しました。今後は、法人内の各施設の職員ではなく、隣り合う部署の者同士という感覚や意識に変化していくと思います。食堂などでは、いままで交流のなかった職員同士が話す光景が見受けられますね。ただ、感染拡大リスクという短所もあるので、万一の対策として渡り廊下の閉鎖や老健内の空きスペースの活用を想定しています。
2024年1月1日に「令和6年能登半島地震」が発生。富山県も各所で被害を受けました。当病院にとって竣工2ヶ月後のことです。建物本体の大きな被害はありませんでしたが、一部内装と排水管に破損が生じました。患者さまも心配されていましたが、大和ハウス工業さんの素早い初動による対応で、混乱には至らず安心しました。エレベーターは翌日、排水管の復旧も早く、外来が開始する4日には支障なく状態になりました。また後日には、総合点検を行ってもらえるので安心ですし、本当に感謝しています。
新病院は、あいの国とやま鉄道石動駅から徒歩数分の立地に建設されました。小矢部市役所前にあった旧病院からほど近く、外来患者さまの利便性を損ねることはありません。また、前面道路である国道471号からの視認性もよく、地域における存在感は日増しに高まっています。