CASE8
医療施設
江別谷藤病院
- 所在地:
- 北海道江別市
- 構造:
- 鉄骨造
- 延床面積:
- 9,712m2
- 竣工:
- 2014年11月
- 用途:
- 一般病床(42床)、回復期リハビリテーション病棟(80床)
医療法人社団 藤花会様が1969年に開設された江別谷藤病院は、特に外傷系の救急にも積極的に取り組まれておられ、整形外科を中心に幅広い診療科目で、地域の医療を長年支えてこられました。
同院では、特にライフラインを中心とした設備の老朽化や、医療法の改正に伴う新しい施設基準への対応のため、新病棟への建て替えをご計画。建築は、診療を継続しながら2期に分けて実施されました。
計画のポイント
敷地を効果的に活用し、診療を続けながらの建て替えを実現
建築は、診療を継続しながら行うこととなり、従来の駐車スペースが新病棟の予定地となりました。1期工事として建設した新病棟が完成後、2期では旧病棟を解体し、そこに新たな玄関と車寄せを設置。駐車スペースはすべて地下部分に配置し、来院者の利便性も最大限に考慮しました。完成した新病棟は、高い断熱性やアメニティ環境を整備して、来院者や入院患者様の快適性を追求するとともに、職員の動線にも工夫が凝らされています。
122の病床数はそのままに、総床面積は約2.5倍に拡張。駐車スペースはすべて地下に設けたことで風雪が避けられ、来院者の利便性の向上につながっています。
介護のノウハウを活かしたユニット形式の病棟
小規模多機能型居宅介護やグループホームを運営されている同法人ならではの考えから、病室は全室個室に変更。各層ごとに4つのユニット形式(8~10床を1ユニット)として、スタッフのケアが隅々まで行き届くよう配慮されています。
ユニット形成イメージ。各階ほぼ同じ構成の病床部分。3階部分は一般病床、4・5階は回復期リハビリテーション病棟となっています。
BCP(事業継続計画)対策と地域の防災拠点としての機能を確保
非常用電源となる自家発電、井戸水を利用した飲料水の確保、LPGの備蓄など、病院自体のBCP対策のみならず、地域の防災拠点としても活躍できる機能性を備えました。その機能は病院としての診療機能を維持したままで、地域住民の防災拠点としても十分なものとなっています。実際、2014年9月の豪雨災害時、職員および周辺住民の方に給水サービスが行われました。
自家発電、飲料水の確保、LPGの備蓄など、高い防災機能を備えています。
お客様の声
機能強化と業務改善への取組みで
地域にとってオンリーワンの病院へ
医療法人社団 藤花会 江別谷藤病院 理事長 谷藤 方俊様
新病棟を計画する以前より、「高齢の入院患者様の不安を少しでも取り除くことで、1日でも早く在宅復帰していただきたい」という思いがありました。そのため、一つには『面会時間の撤廃』が必要です。最新のセキュリティ機能を導入するとともに、全室の個室化を進めました。当法人では、幾つかの介護施設を運営しており、そこからヒントを得て病棟をユニット形式に再編成するというアイデアが生まれたのです。これにより、従来は男女比や医療依存度の違いによって、非効率な相部屋の構成となることがなくなり、より多くの患者様を受け入れることが可能となりました。
個室化することで反面、コミュニティの形成はどうするか。病棟部分はそれぞれ4.5mの幅の広い廊下を設け、ホールという位置づけにし、そこで患者様に食事を摂っていただくようにしています。ナースステーションは4ユニットの中央に配し、隅々まで見渡せるように配慮しました。Ⅰ型で距離のある動線が患者様に負担をかけていた旧病棟からは、大きく改善されたと思っています。
当院は、歴史があるだけに、地域では『家族代々のかかりつけ医』とされている方が多くいらっしゃいます。私は、その注目度の高さを強く感じていますし、それだけに『病院とは医療だけを提供する場であってはならない』と考えています。特に入院患者様にとって“病院は一日を過ごす場所”ですから、ストレス回避や安全性に配慮しただけでなく、インテリアの設えや色合い一つにもかなりのこだわりを込めました。少しでも快適に過ごしていただきたいという“おもてなし”の思いからです。
こうした私の思いを、カタチにしていただいたのが大和ハウス工業さん。医療だけでなく、介護施設の実績も豊富なだけに、『ユニット形式による病棟づくり』についても、すぐさま理解してもらい、より良い提案をしていただきました。計画開始から完成まで約3年の月日を要しましたが、その間は週に1回のペースで打ち合わせをさせてもらい、私の伝えたイメージをカタチにして提案いただくという作業の繰り返しでした。振り返れば、その対応力の高さにとても感謝しています。
新たな病棟は、当法人の将来のみならず地域医療の将来に大きく貢献できる施設だと確信しています。また、防災面において地域貢献できることも、皆様の期待と注目を集めていることも実感しています。
また今回、リハビリ室の充実をはじめ、施設の随所に在宅復帰を強化する機能を設けました。今後もこの新病棟を核に、多くの患者様をサポートできる体制づくりを進め、医療を通じた地域貢献を続けていきたいと考えております。