CASE7
医療施設
永尾病院
- 所在地:
- 徳島県美馬郡
- 構造:
- 鉄骨造
- 延床面積:
- 1,666m2
- 竣工:
- 2015年7月
- 用途:
- 療養病床(33床)、通所リハビリテーション
徳島県美馬郡において、地域医療に貢献されている医療法人仁清会 永尾病院様。開設より80数年が経過する中、一度は移転による施設の建て替えも行われましたが、次第に老朽化が進み、3階建ての旧病棟はエレベーターが無く、患者様のみならずスタッフにとっても日常的な不便が生じていました。
同法人では、地域における高齢化・過疎化の傾向などをふまえ、新病棟建築による“経営への影響”と“病院の将来を考えた事業性”を考慮。しかし、近隣エリアに土地購入の引き合いがあったことから、新たに新病棟の移転・建て替え計画がスタートしました。
計画のポイント
新病棟建築とともに機能強化に着手
地域の医療特性を踏まえ、将来的に高まるであろう医療ニーズをご検討。新病棟の開設と同時に、従来の内科・放射線科に加え、胃腸内科とリハビリテーション科を新たな診療科目として標榜されることをご決断。外来機能の強化に対応できる施設づくりに取り組まれました。
1階の正面玄関脇に設けられた受付・待合スペース。明るく開放感ある空間が、外来患者様からも好評です。
限られたスペースに機能性を充実させた施設
1階部分は診療スペースとして、開放的なリハビリテーション室を含めた機能的な空間づくりと動線設計が行われています。2階部分には、ナースステーションを中央に、全33床の療養病床を配置しました。
2階部分に設けられた33床の療養病床。室内は木の質感を用いた落ち着きある空間に仕上がっています。
ソフトとハードの両面で新病棟計画をサポート
施設建築では大和ハウス工業、病院運営については医療コンサルタントが、両輪でサポートする体制を構築しました。新病棟の完成を契機に、業務改善や職員教育にも積極的に取り組まれています。
新病棟の完成後は、グループの社会福祉法人 清寿会様が運営するグループホームや特別養護老人ホームとの連携が、これまで以上にスムーズになりました。職場環境についても、人材の活性化や業務改善といった取り組みが進んでいます。
お客様の声
機能強化と業務改善への取組みで
地域にとってオンリーワンの病院へ
医療法人社団 仁清会 永尾病院 理事長 永尾 仁様
私たち医療法人 仁清会は、1932年に前身である永尾医院を開設。40年後の1972年には、医療法人化とともに永尾病院へと組織変更しています。
80年もの長きに渡り、医療を通じて地域への貢献を続けてきましたが、高齢化や過疎化の進むこの地域において、「後何年、自分たちの思い描く医療をしながら病院経営を続けていけるのか?」と、思い悩む日々がここ数年続いていました。老朽化していた病棟に関しても、「新しくする必要がある」とは漠然と感じていたものの、新しい病棟が当法人の新たな事業性や成長にどう結び付くのかを見出せなかったのです。
ただ、小さなお子様から高齢者まで「あの病院があるから、ここにずっと住んでいても安心」と思っていただくことが、私たちの目指す姿です。一時は病床を廃止し、診療所への組織変更も検討しましたが、取り巻く環境や時代に合わせてしまうことで、目標から遠ざかってしまうのは嫌だと感じていました。
理事である妻が、ホームページを通じて建築会社数社へ問合せメールを送ったのが、今回の計画の大きなきっかけとなりました。即座に対応してくれたのは大和ハウス工業さんだけ。担当の方には施設の建築だけでなく、「病院を新しくすることによって、事業性や収益性にどんな影響があるのか」といった、経営面に関することまで話をさせてもらいました。すると、徳島県の医療事情に詳しいコンサルタントの方をご紹介いただいたのです。
当院が理想とする医療と事業を両立させるため、必要となる取組みは何か。医療の現場にいる私たちと専門家、それぞれの視点からの意見を交わし検討を重ねました。そして、新病棟はその取組みを実現させるためのものとして位置づけたのです。結果として、従来の内科・放射線科に加え、胃腸内科とリハビリテーション科を新たに設けることとなりました。つまり、将来を見据えた機能強化を図ることで、地域の医療ニーズへの対応力を高めることが可能となったのです。特に、リハビリテーションに関しては周辺に施設がなく、ニーズは感じていたものの、従来施設では基準を満たすことができなかったものですから、病棟を新しくしたことによって、当院のポテンシャルは、格段に向上したと感じています。実際に新病棟開設後、若い患者様も徐々に増えてきました。
今回、大和ハウス工業さんに建築をお願いすることとなり、驚いたのは、その対応力の高さ。課題の一つひとつに、その都度スピーディに対応していただき、こちらもストレスを感じることなく、計画を進められたと感心しています。完成した建物を見ても、待合スペースの空間の使い方や動線のつながりなど、「さすがプロだ」と感心しています
日ごろの診療を通じて感じるのは、“幾つになっても愛着のある地元で暮らしたい”を考える高齢者が多いということ。そのためにも、都会に住む子や孫からも「永尾病院があるから」と安心してもらえるような存在でありたいと思っています。
また、運営面においても業務マニュアルの導入や運営会議の定期開催など、新たな取組みを始めました。その狙いは、職員の業務の標準化とレベルの向上、それから何より病院全体に対する意識を向上させること。そうなれば、「○○先生に診てもらいたい」から一歩進み、「どの先生や職員を頼っても安心だから永尾病院に行く」という、理想の姿に近づいていくことでしょう。