CASE24
医療施設
伊勢ひかり病院
- 所在地:
- 三重県伊勢市
- 構造:
- 鉄骨造
- 延床面積:
- 10,407m2
- 竣工:
- 2022年11月
- 用途:
- 一般病床(40床)、医療療養病床(93床)、回復期リハビリテーション病床(60床)
- 併設施設:
- 介護医療院(60床)
三重県伊勢市内において複数の医療・介護・保育事業を展開されているのが、ひかりメディカルグループの医療法人全心会様。その中核施設といえるのが伊勢慶友病院です。開院以来、近隣の急性期病院との強い連携で、地域からの信頼の厚い総合病院として機能してきましたが、近年は建物の老朽化や耐震化が大きな運営課題となっており、この度の移転新築に至りました。新病院は、「伊勢ひかり病院」と改称。高齢者医療への対応力をより強化し、 “地域になくてはならない病院”として、その存在感を日々高めておられます。
計画のポイント
旧病院のあらゆる課題を解消すべく移転新築計画を具体化
旧病院建物は、築50年が経過。各種設備の不具合だけでなく、雨漏りや漏電など構造面においても心配が尽きなかったといいます。また、施設基準を満たす対応を講じてきたことによって、縦動線となる7階建ての建物における業務効率が悪化。管理部門や職員の福利厚生面にも影響が生じていました。
新病院の建設予定地には、既に確保されていた伊勢赤十字病院の移転に伴う跡地を充てることで、具体的かつ綿密な計画をじっくりと練り上げてこられました。
旧病院より2㎞離れた約7,000坪の敷地に建設された新病院。旧病院の縦方向の移動に伴う不具合から、新病院は2階建(一部3階建)の構成とし、横方向の移動に変更しています。
柔軟な病床の見直しで地域医療で求められる役割に対応
変化する地域の医療ニーズに対応するため、213病床(旧病院)を、新病院では病床転換と共に193床へのダウンサイジングを実施。一般病床40床はそのまま、医療療養病床173床を93床に減床させるとともに回復期リハビリテーション病床60床へ転換されました。
減床された医療療養病床のうち20床は、併設施設の介護医療院の増床分(40床→60床)に充てられました。
超高齢化社会を見据えたリハビリテーション機能の強化
新病院では、少子高齢化がより深刻化する2040年問題も見据え、さまざまな面から機能強化を図られました。より高まる伊勢赤十字病院との連携を前提とした回復期リハビリテーション病床の新設に伴うリハビリテーション機能の充実、それまで数床で対応していた透析の増床(50床)、さらに健診機能の充実や感染症対策にも取り組まれています。
旧病院内に点在していたリハビリテーションスペースを集約。1階の介護リハビリテーション室と2階の医療リハビリテーション室を専用の階段で直結させました。階段は、患者様のリハビリテーションとしても活用できるなどの工夫を凝らし、機能性と効率性を高めています。また、傘をさしたり段差を設けたりと、日常生活を想定した屋外リハビリガーデンも新設されました。
お客様の声
理想は、新病院を核とした豊かな地域づくりの実現
医療法人全心会 伊勢ひかり病院
院 長:堂本 洋一様
医療法人全心会 伊勢ひかり病院
本部長:稲垣 隆弘様
伊勢市の高齢化率は、全国平均を上回る約33%となっており、世帯構成も老老世帯や認認世帯、独居高齢者が多く見受けられます。子世帯は都市部へ移転する傾向が高く、親と同居の場合でも日中は不在となるケースが多いため、地域が期待する充実の高齢者医療とは、日常生活により密着したものへと変化していることを実感しています。こうした状況の中、地域医療構想において当院は、急性期の伊勢赤十字病院の後方支援病院としての役割を次第に強化していくことで現在に至ります。
新病院の計画については、実はかなり前から構想を練っていました。当初、旧病院の至近距離での移転用地を探していたものの、なかなか適地が見つからない中、ようやく確保することができたのが、約2㎞離れた伊勢赤十字病院の移転に伴う約7,000坪の跡地です。
建設する新病院は、“今後、地域に求められる当院の役割”を視野に入れた機能強化を実現できる場にしようと、そのタイミングと内容に熟慮を重ねってきました。しかし実際、複数の設計士や建設会社に相談すると、どうしても敷地面積に比例して建物面積も大きくなってしまい、予算超過に陥ることに。そこで、新たにご相談したのが、2017年に開設した当法人の医療・介護複合施設「伊勢メディケアセンター ひかりの橋」でお世話になった大和ハウスさんでした。
建物計画の具体化にあたり、院内で構成した建設委員会では、①「外来と管理部門と介護事業」を1階、「手術と入院(病床)機能」を2階に配置し業務効率を図る、②外来と検査・健診機能の集約による効率化、③透析の強化(増床)④AIを含めた最新機器の導入や遠隔医療への対応などのDXの強化 などがテーマに挙がり議論を重ねてきました。さらに、職員食堂、更衣室、休憩室、会議室、打ち合わせコーナーなど、旧病院では、病院の施設基準を満たすために犠牲となっていた“職員の働きやすさの追求” にも取り組んできました。
実は今回、病院経営の効率化を目的に、ヘルスケアファンドや大和ハウスによる建物所有といった事業スキームも検討しました。最終的に、当法人による土地・建物所有での病院経営を選択しましたが、大和ハウスさんに相談したことで選択肢を拡げることができたのは、今後の事業展開に大いに役立つと感じでいます。
私たちは、今回の新病院建設を通じて、2040年問題に対する当法人としての一つの答えが示せたのではないかと思っています。その一つは“子育て世帯への支援”。新病院移転用地内で先行して開設した「けいゆう塾保育園(企業主導型保育事業)」は、現在100名以上の定員に対して職員利用率は25%以上を占め、入園希望者は増加の一途を辿っています。さらに、隣地で開設している「伊勢学童ひかり塾」も機能強化を図り、利用児童も増加しています。また、敷地内には調剤薬局とともに、近隣で不足していたスーパーマーケットを誘致し、近隣住民へ利便性の提供を実現しました。こうした新病院を核とした新たな「まちづくり」を通じて賑わい雇用を創出することにつながればいいですね。将来的に、ゆりかごから高齢者まですべてこの地域で生き生きと暮らせる「ひかりタウン」的なものが創造できれば、私たちの理想は完成します。
※医療法人全心会様が2017年に開設された医療・介護複合施設「伊勢メディケアセンター ひかりの橋」については、こちらでご紹介しています。