特集:中小企業の為の不動産戦略~基礎編 第5回目~ ビジネスのライフサイクルと企業のCRE戦略
公開日:2017/12/25
POINT!
・昨今のCRE活用は、「すでにあるものの活用」が一般的
・産業のライフサイクルを考慮した不動産活用が増加
・インフレ連動の収入を持つことは、インフレリスク回避に役立つ
加速する企業のCREマネジメント
日本企業のCRE活用の取り組みは、大企業、中小企業を問わず活発になってきています。
以前からCREをうまく活用して収益を上げている先進的な企業は、より活発なCREマネジメントを強化し、また、これまであまりCREに関心のなかった企業も、取り組み始めています。
その背景にはいくつかの理由があります。
一つは、抱えている多額のキャッシュを不動産関連で活用する企業の増加です。モノ言う株主が増えて、内部留保で抱え込むよりも、そのお金で不動産関連投資を行うことで、より多くの株主還元をするケースも増加しているようです。
また、保有する不動産の有効活用を行い、収益向上を狙う事例も多く見られます。
これら、2つのパターンは内部で抱えるキャッシュの活用、保有する不動産の活用ということで、「すでにあるものの活用」ということになります。本業が不動産関連ではない企業が、銀行から資金を借りて不動産投資を行うというような事例は、最近はそれほど多くありません。現在では「すでにあるものの活用」というかたちが、多くの企業におけるCRE戦略のスタンスのようです。
産業のライフサイクルと不動産活用
CRE戦略を行う企業の中には、今述べた「すでにあるものの活用」というスタンスのほかに、もう一つ思惑があるようです。
その代表例は、「産業のライフサイクルに対するセーフティネット」、あるいは、「新たな分野に進出する際の重要な資源としての役割」です。つまり、どちらも「いつまでも優位な状況は続かない」ということに対する不動産資源の活用ということになります。
産業にはライフサイクルがあります。今は華やかなビジネスでも、数十年経つとそのビジネスはすっかり色あせ、業界の上位企業のみが大きな収益を上げて、多くの同業他社は厳しい状況に置かれてしまう、といったことはよくあることです。ビジネスはどんどん進化していきます。かつては、成長~成熟期と呼ばれる期間が20~30年間はありましたが、情報が容易に入手できる昨今では、その期間は10~15年に半減しているともいわれています。
産業のライフサイクル
上図は産業のライフサイクルを図式化したものです。
この図にあるように、年数が経てば、産業は徐々に衰退期を迎えます。こうしたときには、新たな事業領域に転換して企業は永続化を図ろうとしますが、その転換は容易ではなく、また転換には多少の期間がかかります。その間に不動産収入(賃料収入)があれば、セーフティネットとしての役割を、収益を生み出す不動産が果たしてくれます。これは、大企業か中小企業といった区別なく、大きな役割を果たしてくれます。このように、現在のような好景気で企業の収益性が高いときに収益不動産を所有しておけば、「いざ」というときに役立つことになります。