特集:中小企業の為の不動産戦略~基礎編 第1回目~ なぜ、不動産を所有する企業が増えているのか?
公開日:2017/10/26
CRE戦略は、大企業だけに必要なものなのか?
中小企業における不動産戦略について、基本的な事から具体的な戦術までを考えるシリーズです。
中小企業にとってのCRE戦略は、ビルや工場等を所有する大企業の行うCRE戦略と大きく異なります。
国土交通省等の行政機関がまとめているレポートやシンクタンクが発信しているレポート等も、その論拠となる実態調査に協力しているのはほとんどが大企業です。そのため、どうしても実態の把握(現状分析)から提言に至るまで、その内容は一定以上の規模の企業に相応したものになっています。こうしたものがベースにあるため、たいていのCRE関連の書籍やコラム、レポート等も、基本的にその内容は大企業をイメージして書かれています。
しかしながら、日本の企業の90%以上は中小企業であり、「企業と不動産の関わり」について真剣に考えないといけないのは、大企業も中小企業も同じです。
この連載では、こうした実態を踏まえて、中小企業をイメージしたCRE戦略について述べて参ります。
企業のCRE戦略を考えるときに大事なのは、不動産を不動産単独で考えないということです。つまり、経営戦略の一環としてのCRE戦略であり、財務戦略の一環としてのCRE戦略でなければならないということです。
中小企業における資産線引きの曖昧さ
中小企業の場合、経営者(創業者)の資産と会社の資産の線引きが曖昧なことが多いのは、銀行から融資を受ける際に経営者が保証人となって支払を担保してもらうからだと推測されます。
こうした点を考えると、中小企業のCRE戦略をうまく行うと、会社と経営者の資産の線引きが明確になり、その先にある事業承継が行われる際にも、有効な手段になりうるということになります。
土地を所有する法人数の増加
土地所有法人数の推移
国土交通省「平成25年法人土地・建物基本調査」より作成
上図は、国土交通省が平成25年(2013年)に公表した、土地を保有する法人の数の推移です。
これをみると、平成15年(2003年)から平成20年(2008年)にかけては、法人数が減っています。
当時は「持たざる経営」がもてはやされた時代で、大企業中心に社宅を売却したり、稼働率の低い向上を閉鎖したり、あるいは工場を郊外に集約移転したり、さらには「使っていない土地」を売却したりして、所有する不動産の集約化が進み、コアビジネスに集中する傾向にありました。
しかし、近年では、社宅保有の傾向が復活したり、企業が不動産投資を行ったりすることも増えてきました。
中小企業においても、遊休土地を売却するという選択を取らず、そこに賃貸住宅等を建てて、賃料を得ることで、安定した収入を増やすという方針の企業も増えてきました。
このように、現在では「持たざる経営から、稼ぐ不動産を持つ経営」への転換事例も増えてきました。