CASE15 売却できそうにない空き家を相続することになった
公開日:2024/10/31
地方で一人暮らしをしていた父が亡くなりました。父が住んでいた実家を相続することになったのですが、将来誰も住む予定はありません。売却できるかどうか知り合いの不動産会社に聞いてみたのですが、簡単には売れそうにもないとの返事でした。
このまま空き家として放置しておくと、税金もかかるし、ご近所にも迷惑をかけそうです。さらに、空き家が荒れてしまうと、「特定空き家」に指定されてしまう可能性もあると聞きました。いったいどうすればよいのでしょうか?
実家を相続することになった際、特に相続人に持ち家がある場合は不要となるため、売却したいと考える人は多いでしょう。しかし、過疎化の進む地方において不動産の売却が簡単ではないケースもあり、地方の不動産の相続が問題となるケースは少なくありません。
空き家を放置するリスク
相続した不動産を使用しないからといって、何もせず放置したままにしておくと、さまざまなリスクが発生することになります。
(1)固定資産税
固定資産税は、住んでいるいないにかかわらず、毎年1月1日時点で不動産を所有していると発生します。
2023年6月に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が公布されました。この法改正で、固定資産税の減額措置が適用されなくなる「空き家」の対象範囲が広がり、放置すれば特定空家になるおそれがある「管理不全空家」も設定されました。
管理不全空家に認定されると、行政から改善することが求められ、それでも改善されない場合は、勧告を受けることになり、固定資産税の減額措置の対象外となります。勧告を受けると、受けた翌年から固定資産税減額措置の対象外、つまり、200m2以下の小規模住宅用地で1/6の減額が適用されなくなり、固定資産税は指定される以前の6倍になることになります。
(2)維持管理
使わないとはいえ、家や庭の手入れ、管理が必要です。修繕も必要なこともあり、このような維持管理の費用も少なくありません。遠方の場合、現地までの時間や交通費などの負担も小さくないでしょう。管理会社に委託することも可能ですが、さらに費用が発生することになります。
(3)近隣への迷惑
空き家になった建物が老朽化すると、倒壊の恐れが出てきます。倒壊までいかなくとも、台風や大雨の際には、建物の一部が飛散したり、近隣住宅を傷つけたりすることもあるかもしれません。景観やごみ、治安の問題にも発展してしまう可能性もあります。
(4)次の世代への負荷
相続した不動産を次の相続まで持ち越してしまうことになった場合、子どもにまで負担をかけてしまうことになります。今後、将来に向けて空き家は増加すると予測されていますので、次世代のためにも、空き家対策は現世代で対応しておきたいものです。
空き家相続の対策
これらのリスクを避けるためにも、空き家を相続してしまったときには、何らかの対応をとる必要があります。どのような対策が考えられるのでしょうか。
(1)相続土地国庫帰属制度
2023年4月27日より、「相続土地国庫帰属制度」という制度ができました。簡単に言えば、一定の要件を満たせば土地を国に帰属(寄付)させることができるという制度です。
この制度は相続等で土地を取得した人だけが使える制度で、売買などにより自ら土地を取得した人や法人は、この制度を利用することはできません。また、すべての土地を国が引き取るわけではなく、国に帰属することができない土地の条件については以下のように定められています。
- 引き取ることができない土地の要件の概要
申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項) - A 建物がある土地
- B 担保権や使用収益権が設定されている土地
- C 他人の利用が予定されている土地
- D 土壌汚染されている土地
- E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
- 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
- A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」より
さらに、この制度を利用するためには、費用負担も発生します。まず、帰属審査手数料が、土地一筆当たり14,000円が必要になる上、元々の土地の所有者が土地の管理の負担を免れる程度に応じて、国に生ずる管理費用の一部を負担する必要もあります。土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた人は、国有地の種目ごとに、算定された管理に必要な10年分の標準的な費用を負担金として納付しなければなりません。
(2)空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、全国の自治体が運営する空き家情報のプラットフォームのことで、各自治体のホームページ上で空き家情報を公開し、空き家の所有者とその自治体への移住などによる購入希望者をマッチングする仕組みです。
この仕組みは非営利で運営されており、仲介手数料は必要ありませんし、売却が見込めない土地でも登録することができます。購入者側は、補助金や助成金を活用できるなど、購入のハードルを下げる対策も施されています。
(3)土地活用する
売却することが難しい土地というのは、活用が難しい土地であるケースがほとんどですが、アイデアによっては、その土地に合った活用が可能になることもあります。
地方では、人口の流出を防ぐために、住民へのサービスやインバウンドを利用するための観光資源の創出に力を入れている自治体も少なくありません。都市計画法や農地法といった、土地の使用用途の問題をクリアした上での話になりますが、自治体や地域の不動産会社や建築会社と相談の上、何か活用方法はないか検討してみてはいかがでしょうか。何より、地域貢献にもつながる活動です。