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コラム No.140-3

CREコラム

脱炭素社会と不動産(3)循環型社会

公開日:2023/02/28

企業活動や市民生活で発生する廃棄物や排出物を再利用やリサイクルなどを通じて循環させ、資源の有効活用や環境負荷の低減を目指す「循環型社会」がいま、注目されています。その実現のために求められる取り組みについて考えます。

循環型社会とはなにか

わが国はこの半世紀の間、着実に経済成長を遂げてきました。石油危機やバブル崩壊、リーマン・ショックなどによる景気の低迷はありましたが、大量生産、大量消費、大量廃棄の傾向が続きました。企業の生産活動は奨励され、個人の消費は礼賛されて今日に至りました。しかしその一方で、生産されたモノや消費されたモノは大量の廃棄物になり、天然資源は枯渇しはじめ環境への負荷は増しています。
持続可能な社会で暮らすためには、これ以上の環境破壊は許されません。循環型社会は、限りある資源を有効に活用して環境を保護することで形成される社会構造のことです。これまでの大量消費を改め、生産・消費・廃棄のサイクルを「モノの効率的な再利用」などによって改善し、消費抑制と環境負荷の低減を推進していきます。 「資源」と「廃棄物」に着目するのが特徴です。

図1:循環型社会の姿

出典:環境省「循環型社会新たな挑戦」

最近、スーパーマーケットで箱のないティッシュペーパーや、ラベルが貼られていないペットボトルなどのエコ商品を見かけるようになりました。背景には資源と廃棄物の問題があります。箱やラベルが最初からなければごみは減ります。ラベルはPET樹脂やポリスチレンで作られており、ティッシュの箱はパルプで、一部にはプラスチックが使われています。多くの包装材は石油が原料で、ごみと化します。これを省いて使えば資源の保護と廃棄物の低減に繋がります。
人口が増え経済が成長するにつれ、世界のごみ(廃棄物)は増えるばかり。国際エネルギー機関が2018年に発表した報告書によれば、2010年に104億トンだった廃棄物量は2050年には2倍になる見込みで、廃棄物の削減やリサイクルが強く求められています。

3Rさらに5Rだが、まず2R?

循環型社会におけるキーワードに3Rがあります。Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つのR(アール)の総称です。リデュースは減らす、縮小する、の意味。ごみを減らしたり、モノを買わない、マイバッグを使いレジ袋を買わない、節約することです。
リユースは使えるものは繰り返して使う、詰め替え用の製品を選択するなど。リサイクルは再利用のこと。再生紙の製品を購入するような場合です。3Rの優先順位はリデュース>リユース>リサイクルといわれています。

図2:循環型社会のキーワード「3R」と「5R」

近年はこれに2つ加えて「5R」と呼ぶことがあります。Refuse(リフューズ)は辞退する、拒む、の意味があり、不要なものやごみになるようなものを受け取らないこと。転じて廃棄物を発生させないことです。もう一つはRepair(リペア)。修理を意味し、直して長く使うことです。5Rにおける優先順位は一般的に、リフューズ>リデュース>リペア>リユース>リサイクルと言われています。
わが国では再生紙の利用など、リサイクルは普及しつつあります。しかし優先順位の高い「減らす(リデュース)」「再利用(リユース)」が進んでいないと思えます。

建築リサイクル法など、法整備は進むが成果は今ひとつ?

日本では、1995年に容器包装リサイクル法など、個別にリサイクル法が次々とできました。2000年には循環型社会形成推進基本法が施行されました。廃棄物・リサイクル対策を総合的、画的に推進するための基盤を確立し、循環型社会の形成に向けて推進するものです。
不動産関連では2002年に建築リサイクル法が施行されています。建設工事で発生する廃材(建築廃棄物)を適切に処理してリサイクルを促進するための法律です。コンクリートや木材、アスファルトのほか鉄筋コンクリートなどの特定建設資材を使った一定規模以上の建設工事(新増築のほか、改修、解体を含む)では、資材ごとの分別解体と再資源化に取り組むこととされています。

多くの企業が入居する大型テナントビルでは、廃棄物や水などの資源を効率的に活用しているところが増えています。ごみの分別や雨水・中水(飲めないが水洗トイレなどに使用可能)を活用するほか、建築現場の廃棄物減量に取り組んでいる事例もあり、こうした建築物を使用者として評価することも必要となっています。
しかし建築廃棄物は、がれき類や廃プラスチック、金属くずなど多種多様で、これらが混合した「建設混合廃棄物」などもあり、分別自体が複雑。かつ処理方法も事細かく決められ高コストになり、経費を抑えたいとの思いから不適切処理(不法投棄)に陥るケースもあります。

企業にしても一般家庭にしても、行動主体は個人です。循環型社会の形成には、資源を大切しながら廃棄物を最大限減らすことを意識的に行うことが必要十分条件ではないでしょうか。レジ袋をもらわずエコバックを用意し、決まった日に出す分別ごみを厭わず順守すること。はじめの一歩が大切です。

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