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コラム vol.158
  • 不動産市況を読み解く

長生きするリスクをカバーし、同時に相続対策にも効く不動産投資術。

第4回 不動産投資は相続税対策にも効く!

公開日:2016/09/30

不動産投資マーケットにバブル化懸念

2015年(平成27年)1月1日以降の相続から、相続税関連税法が改正され実質増税となった事をご存じの方は多いと思います。それらの詳細につきましては他に譲るとして、今回は相続税対策に不動産投資が有効である事についてお話します。

現在の日本社会で暮らす多くの人は長生きするリスクを抱えて生活しています。その理由は、家計に占める収入が労働のみに頼っており、権利収入を何一つ持っていない事にあります。そこで、権利収入を得る事ができる不動産投資を始める人が年々増えています。

この事自体、超高齢社会に突入している日本社会にとって望ましい事ではあるのですが、同時に専門家として懸念も感じています。
一つは、ここ数年に渡る不動産投資マーケットにバブル化懸念がある事です。2013年から始まったアベノミクス政策に伴う不動産価格の上昇、同年9月に開催決定された2020年東京オリンピックに伴う都心部や湾岸エリアの不動産価格の上昇、また、ホテル不足に伴う都心部のホテル物価格の急上昇、2015年1月に改正された相続税の実質増税、そして2016年に史上初めて実施されたマイナス金利と、ここ数年間における不動産投資マーケットにはかつて無かったほどの追い風が吹いている状況です。
そのような中、特に相続税対策としての不動産投資マーケットには、元々不動産業者だった会社、増税を期に異業種から参入してきた会社、信託銀行その他銀行など、ありとあらゆる企業が続々と参戦しており、投資対象としての収益不動産物件情報を誰でも簡単に取得できるようになりました。

相続税の圧縮効果だけに目を向けない

もう一つの懸念は、相続税対策として不動産投資を検討する場合、相続税の圧縮効果を高くする事(相続税を少なくする事)ばかりに目を向けてしまい、不動産投資の本質を見失ってしまうという事です。不動産投資の本質とは、労働収入から権利収入へと収入の属性を変える事にあり、その最大のメリットとは、今の仕事や生活その他諸々の社会的環境を変える事なく、労働収入とは別枠で権利収入を得られる事です。

つまり、購入しようとする収益不動産は、その物件単独で利益を出せなければならず、具体的に言えば、その不動産を人に貸す事によって得られる家賃収入から物件維持コスト(管理費、修繕積立金、固定資産税、公租公課、賃貸管理手数料など)や毎月のローン返済を差し引いて手元にお金が残る不動産でなければ権利収入を得る事はできません。万一それがマイナスになってしまうような不動産を購入してしまうと、権利収入を得るどころか、労働で得たお金で購入した不動産の赤字部分を補填するといった本末転倒な事になりかねません。
冷静に考えれば誰でもこの理屈はわかるのですが、相続税の圧縮効果を高くする事(相続税を少なくする事)ばかりに目を向け、わからなくなってしまわないよう、このような落とし穴はご注意いただきたいと思います。

ポイントは財産評価基準

これらのリスクをしっかり把握した上で、相続税対策としての不動産投資テクニックにおいて押さえておきたいポイントは、「財産評価基準」です。

相続税を計算する場合、被相続人(亡くなった人)が残した財産(資産や負債)を、国税庁が定める財産評価基準に従って一つ一つ評価します。このうち故人が残す資産を種類別に分類すると、その多くは「現金等」「株式等」「不動産等」のどれかに分類されます。財産の評価の仕方は、それぞれ異なります。

具体的に以下のような決まりがあります。

● 現金や預貯金等 = 時価の100%評価

● 上場株式の株券等 = 一定の決まりに基づき計算するがほぼ時価評価

★ 不動産等 = 一定の決まりに基づき計算するが収益不動産の場合は時価の5割~7割前後

例えば現金で1億円残すより、その1億円で収益不動産を購入したり、元々所有している土地に収益賃貸住宅を建築したりした方が、相続税計算上の財産価値は減少(相続財産の圧縮)し、相続税額について何の対策も打っていない時に比べれば減少(相続税額の圧縮)します。

ただし、これらは相続税対策に不動産投資を活用する上での基本に過ぎず、具体的な効果については、ご家族構成、相続人の数、資産や負債の有無等により結果が大きく変わる可能性もありますので、善は急げ!とばかりに慌てて不動産投資をする前に、まずは税理士等の税の専門家に個別に相談されます事を強くお勧めします。

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