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コラム vol.110

なるほど納得!土地活用の基礎知識
第3回【物理的条件から見た土地活用】
ちょっと見ただけではわからないものデスね

公開日:2016/02/25

土地活用を検討するうえで、土地の物理的な条件は建築物の工法やボリュームに大きな影響を与えます。建築的な視野からさまざまな要素について検討していきますので、事業化の可否判断のヒントにしてください。

面積

何をすればどの位の面積を使うかといった知識があると、土地活用の判断を行う上で、できる事とできない事の仕分けができます。例えば、駐車場を計画するときには、車路は5m程度の幅員、駐車スペースには間口2.5~3.0m×奥行5mのサイズが必要です。
それが分かっていれば、同じ200m²(約60坪)を駐車場としての活用を判断をする時に、間口14m×奥行14mの正方形であれば10台、間口10m×奥行20mの長方形であれば8台といったことがわかります。同様に、賃貸住宅やマンションを建てる時に、敷地内で確保すべき避難通路や隣地境界からの距離、建ぺい率・容積率、緩和措置、階段位置とその幅員、段数などから活用方法がわかります。
利用しやすい広さというものがありますので、隣地の追加取得や、敷地の分割といった選択肢が発生する可能性があります。

形状

土地の形状に関していえば、全ての土地が正方形や長方形でもなく、道路に対する間口も狭かったり、広かったりします。
例えば、道路側の間口が2m程度しかなく(2m未満になると建築自体が基本的にはできません)、路地状になった部分を通って奥に建築可能部分がある「敷地延長」の土地などは、建築計画を行う上で、日照や通風、あるいは斜線制限などの問題から利用のハードルが高くなります。
一般的な賃貸住宅を建てる場合でも建物間口は最低でも4.55m(2間半)は確保できないとプランニングが困難になりますので、これに民法上の隣地からの離れ両側0.5mを加えた5.55mを下回る間口の細長い土地も利用が難しくなります。
また、三角形や多角形などはデッドスペースが増えますのでマイナスポイントになります。但し、逆に言えばそういった敷地は割安に取得できるということでもありますから、上手な活用方法が見つけられれば優れた事業として成立することも珍しくありません。

避難通路

共同住宅や長屋住宅などの建物を計画するときには、火災の時にご入居者が安全に避難できる経路の確保が必要です。基本的に、どちらかで火の手が上がっても、別方向から逃げられるようにと「2方向」から「2m以上」の幅員の通路が必要になりますが、建物規模が大きくなれば必要な幅員が広くなりますし、小さな規模であれば、1方向で足りる場合もあります。自治体ごとに規定が詳細に決められていますので、計画場所ごとに調べる必要があります。

レイアウト

避難通路や共用階段、駐車・駐輪場など、必要なスペースを確保したうえで建物を配置すると、意外に正方形の土地はプランしづらいことがわかります。必要十分な間口を備えた長方形の土地は効率的にレイアウトをすることができますし、長辺が間口になっていたり、角地であったりすると更にプランニングは容易になります。つまり整形地は不整形地に比べて有効に使える面積が大きく、プランニングしやすいと言えます。

生活インフラ

居住用の建物を建てるには、上水道・下水道・電気・ガスといった生活インフラが必要になります。複数の住戸が入る共同住宅や長屋住宅の場合は、必要な水圧水準を確保するには世帯数に応じた口径の給水管の接続が必要です。前面道路にしかるべき口径の埋設管がなければ、私設管を延々と施工、接続したり、敷地内に受水槽と給水ポンプを設置したりという負担が発生します。排水管が道路よりも低い位置にあったり、公共下水道が整備されていない敷地であれば、汚水をポンプで揚水したり、浄化槽を設置したりするなどの手立てが必要となります。

高低差

敷地に高低差がある場合は、排水以外にも注意が必要です。道路よりも高い敷地の場合は、造成や擁壁の適法な施工が必要です。あるいは土質によって定められた「安息角(あんそくかく)」(それ以上は人為的な力を加えないと崩壊しない安定した角度)の内側に建物基礎や杭を到達させ、擁壁部分に荷重を加えないようにするといった建築上の配慮が求められます。
隣接地との高低差がある場合も、同様に隣地擁壁が検査済証を取得した適法な擁壁ではない場合、隣地宅盤の端部からの安息角内に、万一隣地擁壁が崩壊しても建物内の人命が担保されるように、防護壁や建物の一部をRC構造にするなどが求められます。どちらも、建築する際のコストアップ要因となります。

地盤

「土は液体」というのが、土木関係者の合言葉ですが、重量物である建物が土地の上に載るということは、その荷重が鉛直方向に加わり続けるということです。従って、その重量を支えるだけの強度が地盤にない場合は、支えられる強度を持った地盤まで基礎形状の変更や杭を打設・築造したり、硬化剤等による地盤改良を行ったりする必要があります。その求められる強度は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造、あるいは建物の階数といった要素によって変わってきます。
また、敷地内に盛土と切土など支持力の異なる地盤が混在する場合は、建物の傾斜を発生させる不同沈下を誘発することもあります。一般的に地盤は、積層となって砂や赤土やシルトといった性質の異なる土質で複合的に形成されていますので、事前に地盤調査を行う必要があります。
戸建住宅や賃貸住宅などの小規模な建築では、SS(スウェーデン式サウンディング)試験という金属棒の先端に付いたドリルを調査地点の地盤面下に挿入しながら、一定距離(25cm)ねじ込むのに何回転していたかを見ていくという比較的簡便な方法が多く見られますが、地盤全体の層にうねりがあったり、地中の石などに当たったりした場合には、数値の信頼性に疑問が生じることになります。近年では、敷地全体の地盤面下の様子をとらえられる表面波探査式地盤調査が増えてきました。

土壌汚染

過去の土地利用が、工場やガソリンスタンドなどの場合、化学薬品や重金属などによる土壌汚染の可能性が懸念されます。その場合、ご入居者の健康被害などの恐れがありますので、しかるべき調査を行い、場合によっては汚染土の除去と入れ替えが求められます。
役所などに保管されている古い住宅地図や建物の閉鎖謄本などから過去の土地利用状況を調べ(フェーズ1)、汚染の可能性が認められれば実際に土を採取したうえで化学的な分析を行い(フェーズ2)、汚染が確定すれば土壌入れ替え(フェーズ3)というステップを踏みます。土壌入れ替えまでいくとかなりのコストが発生します。

アプローチ

全ての敷地が十分な幅員の道路に面しているわけではありません。車両の進入ができない狭い道路や、階段状の道路といったアプローチ条件であれば、既存建物の解体も、建築部材の搬入もすべて手作業で行う必要があり、工法によってはユニット部材や大スパンの部材、コンクリートの圧送など大型車両やクレーンがたどり着けない場合もあります。

交通量等

日照や工事に関しては、道路は広い方が有利ですが、広すぎる道路で交通量が激しい場合などは、住宅系の土地活用を行ううえではネガティブ要因となる懸念があります。
また、広い通りがある場所は、オフィス、商業、工業、物流などの施設が適しているので、土地活用の用途を選定する場合の判断材料のひとつとして検討をする必要があります。

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