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コラム vol.471-13
  • 土地活用税務コラム

CASE13チョット待った!その親子間、夫婦間の資金移動

公開日:2024/08/30

事例1:土地の売却で得たお金を、家族の口座に振り込む
父は、自分が持っている土地を売却したところ、多額の現金が入ってきたので、よかれと思って妻と3人の子どもの口座に500万円ずつ振り込みました。父に聞いたところ、「家族で分けて何が悪いのか」と相続税、贈与税に関心を示しませんでした。

事例2:専業主婦の妻の口座にお金を振り込む
妻は専業主婦で収入がないため、夫は家庭を守ってくれている妻に感謝の気持ちで毎年自分の給料の3分の1を妻の口座へ移していました。20年後、妻の預金口座の残高は6000万円になっていました。

預けているお金なのか贈与なのか、はっきりしていない

この場合、妻、子どもに「お金をもらいました、ありがとう」という認識があれば、「贈与」になり、贈与税の対象になります。
そもそも贈与というのは、あげる人が「あげます」、もらう人が「もらいます」という共通認識があってはじめて成立するものです。贈与は、民法上の「諾成契約(だくせいけいやく)(当事者間の合意で成立する契約形態)」なのです。
一方で、妻、子どもに「もらいます」という認識がなく、父が勝手に振り込んだのであれば、贈与にはなりません。単なる「預けたお金」になります。父が妻や子どもに預けたお金であれば、父が亡くなったときには父の相続財産になってしまうのです。
つまり、この事例1では、「父から妻や子どもへのお金の移動が、贈与なのかどうかがはっきりしていないこと」「贈与になる場合、贈与税がかかることを考慮していないこと」が問題なのです。

事例2の場合は、夫が亡くなったときには妻の口座の6000万円は「名義預金」とみなされて、夫の相続財産になってしまう危険性があります。これが一番の問題です。
もしくは、妻が「お金をもらいます、ありがとう」という認識を持っていたとすれば、贈与になりますので、贈与税の問題が発生します。
ですから、事例1と同様に、「贈与なのかどうかがはっきりしないこと」「贈与である場合には贈与税の考慮をしていないこと」といったことが問題になるでしょう。

贈与は双方の認識が必要

本当に妻や子どもにお金を渡したいのであれば、「お金をあげます」「もらいます」という意思表示をお互いにはっきりとさせましょう。双方が共通認識を持った時点でそれは贈与となり、そうすると、次は贈与税の問題になります。できることならば、贈与契約書もつくりましょう。そして、贈与税の申告をきちんとしておくことです。
一方で、双方で何も話をしないままにお金を渡しただけでは、贈与が成立していません。つまり、あくまでも夫の相続財産という扱いになってしまうのです。
夫婦間、家族間でお金の移動をする場合には、それが贈与なのか、単に妻や家族の名義を使っただけの夫の財産(預けたお金)なのかを、はっきりさせておく必要があります。

お金の流れを残しておくことで、税務署の信頼を得る

夫婦間・家族間のお金の移動については相続のときに問題になったり、贈与税の問題が発生したりします。似たテーマを繰り返すようではありますが、お金を動かすことで「間違い」が起こるケースは多いものです。とくに夫婦間というのは、夫のお金と妻のお金の区別がなくなってしまいがちです。親子間についても、「親子だからいいだろう」ということで、お金を簡単に渡してしまうケースが多く見られるのです。
夫婦間、親子間でお金を行き来させること自体は問題ではありません。「わたしから、~という理由で妻にお金を移動した」と通帳などに書いておくなど、履歴をしっかりと残しておくことが大切です。
「家族だから、誰がお金を持っていても構わないだろう」というのが一般的な考えなのかもしれませんが、税法の世界はそうではないのです。お金の貸し借りという認識であれば、夫婦間でも親子間でも、「金銭消費貸借契約書」をつくりましょう。

実は、これが税務調査の落とし穴です。「夫婦だから…」「家族だから・・・」となし崩しにしていませんか?
夫婦間、家族間でのお金の移動について、細かく管理している人は、ほとんどいないのではないでしょうか。税務署が目をつけるのは、まさにそのような家族間の資金移動なのです。
一方で、この部分をしっかり管理していれば、税務署の信用を得られる可能性が高くなります。

また、同じような理由で、印鑑は1人ひとり別々のものにしましょう。家族で同じ印鑑を使っているケースがありますが、税務調査の際に「本当にこの人の印鑑ですか?」と聞かれることが多いのです。これも、税務調査で狙われることが非常に多いポイントなので、注意が必要であると知っておきましょう。

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