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コラム vol.359-3
  • 賃貸住宅経営のポイント

2021年から動き出す新しい住宅政策とは?(3)新技術~デジタル化を活用した変化が求められる!?

公開日:2021/06/30

POINT!

・コロナ禍により職住一体・近接、在宅学習や非接触型の環境整備が推進される

・子育て世帯が安心して居住できる賃貸住宅市場の整備に力を入れる政策

・大手賃貸住宅事業者を中心に、新技術を活用した賃貸借契約の効率化が行われる可能性が高い

前回、前々回の2回で、今年2021年から動き出す新しい住宅政策=住生活基本計画について、全体像を見ていきました。今回から各論=詳細面を見ていきましょう。といっても、全てを確認するわけではなく、土地活用=賃貸住宅経営を考える際に重要になるポイントに絞ってお伝えしたいと思います。

住生活基本計画では、3つの視点から8つの目標を立てています。まず、1つ目の「社会環境の変化」の視点には、目標1「『新たな日常』やDX(Digital Transformation/デジタルトランス フォーメーション)の進展等に対応した新しい住まい方の実現」と目標2「頻発・激甚化する災害 新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保」という2つの目標があ ります。まず、目標1から考えていきましょう。

図1:「社会環境の変化」の視点

出典:国土交通省「住生活基本計画(全国計画)(令和3年3月19日閣議決定) 概要 」より

「新たな日常」への対応

執筆時点(2021年6月)では、いまだ完全な形でコロナ禍の出口が見えているわけではありません。ただ、ワクチン接種の推進&増加もあり、徐々に出口を意識した対応が求められています。
具体的には2020年5月に政府より公表された「新しい生活様式」に基づき、行動を変化させること です。
コロナ禍の解消後もコロナ禍前の状況に完全には戻らないということは容易に想像できるで しょう。つまり、それまでと違う新しい基準ができ、動き出す可能性が高くなります。例えば、それまで問題解決のために有効で正しかった方法が、問題や状況が変わってしまえば誤った方法、意 味の無い方法になってしまいかねません。長期投資が前提である土地活用では「正しく間違え てしまう」ということが起きる可能性が高くなるはずです。ですから、変化が激しい今のような状 況では、来るべき変化を予測し、一歩先を見据えた対応が必要です。そのためにも信頼のおけ る情報網を持っておくことが大切になります。
既にコロナ禍前から、人口減少・高齢化社会への対応のため、働き方改革などさまざまな変化 が求められていました。今回のコロナ禍でその問題が明確化し、解決に向けた動きが進行したと も解釈できます。また、同時に価値観の多様化により生活や就業の場自体も変化しています。例 えば、買い物に関して通販や電子決済の割合が増加し、逆に公共交通機関を利用することは 格段に減少しました。
特に働き方については在宅勤務をする割合が増加しており、今後、それらに連動した人事評 価制度の変更も予想され、家賃収入の原資である入居者の実収入も制度に連動し、変化する可 能性があります。同時にオンライン授業など教育現場でも急速にデジタル化の波が押し寄せ、長 時間自宅で過ごすことによる、住宅に対する不満点も顕在化しています。

住生活基本計画の立案時に参考にされたデータを見ても、「共同住宅では十分なスペースがないことに対する不満が最も高く、借家では約3割」となっています。今後、テレワークやオンライ ン授業が増えていく中、これらの顕在化している課題に対し、土地オーナーとしてどのように対応 するかは大きなポイントになるでしょう。近隣にコワーキングスペースやサテライトオフィス等があれば良いのですが、なければ共有スペースも含めて住宅内にテレワークスペースを確保することも検討する必要があるかもしれません。
このように、新しい住生活基本計画では、職住一体・近接、在宅学習の環境整備を推進するとともに、宅配ボックスなど、非接触型の環境整備が推進されそうです。

図2:在宅勤務に際しての住宅に対する不満点について

国土交通省 社会資本整備審議会「我が国の住生活をめぐる状況等について」より

今後は賃貸住宅の整備が進む

今回の計画では、5年前(前回)まで記述が皆無であった「賃貸住宅」に関する事柄が目立ちます。
空き家対策については従来どおり、既存住宅の活用が重視されることに変わりはありません。
今後は一歩踏み込み、「家族構成、生活状況、健康状況等に応じて住まいを柔軟に選択できるよ う、性能が確保された物件の明確化」「紛争処理体制の整備などの既存住宅市場の整備ととも に、計画的な修繕、長期優良住宅や持家の円滑な賃貸化など、子育て世帯等が安心して居 住できる賃貸住宅市場の整備」(以上、本文引用)が推進されそうです。共働き世帯が主流派 になっている現在、今後増加の一途をたどる高齢者層だけでなく、子育て世帯向けの質の高い 賃貸住宅へのニーズは恒常的に高く続くだろうと感じています。
また、今まで土地オーナーや賃貸住宅オーナーの中には、計画的な修繕の概念を持たず、耐用年数が来ればスクラップして建て直すという単純な発想で賃貸住宅経営に臨んでいた方もいらっしゃったのではないでしょうか。しかし、脱炭素社会=カーボンニュートラルを目指すことになり、今後は、修繕や建て替えに関しても環境的な配慮が重視され、より精緻な賃貸管理・建物保全、タイムスケジュールが求められそうです。

技術革新に対応するために

現在は、第4次産業革命の真っ只中といわれています。事実、DXという進化し続けているIT技術を活用することで、私たちの生活の利便性や快適性を高め、より良いものへと変革させようという動きが進展&加速しています。
例えば、住生活基本計画に明記された主な施策は以下のとおりです。

  • ○持家・借家を含め、住宅に関する情報収集から物件説明、交渉、契約に至るまでの契約・取引プロセスのDXの推進
  • ○市場の透明性・信頼性の向上に向けた、住宅の取引価格等に関する情報提供の推進
  • ○AIによる設計支援や劣化診断の自動化等の住宅生産・管理プロセスのIT化や試行的なBIMの導入による効果検証等を通じた生産性の向上に向け、住宅の設計から建築、維持・管理に至る全段階におけるDXを推進

そして、成果指標として、「DX推進計画を策定し、実行した大手住宅事業者の割合」を令和7 年までの5 年間で100%にすることとしています。
今後、大手賃貸住宅事業者を中心に、IT技術を活用した賃貸借契約の効率化が行われる可能性が高いと感じています。例えば、昔ながらの書面を前提とした時間のかかる取引ではなく、IT 技術を前提にスマートフォンなどを使い簡単&効率的に対応できる取引の割合が増えるでしょう。
顧客=入居者視点から考えれば、楽=効率的と考える方が多くなるだろうと感じています。
このようなDXの視点からも、先進技術を先行して活かせる大手賃貸住宅事業者とお付き合いし、情報を密に取れるようにしておくことが大切です。

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