特集:旧耐震賃貸住宅物件のこれから第1回 日本にはどれくらいの旧耐震賃貸住宅があるのか?
公開日:2018/04/27
POINT!
・旧耐震賃貸住宅の占める割合の全国平均は20.9%
・築40年を超える賃貸住宅物件の競争力はかなり低くなる
今月から6回にわたり、「旧耐震賃貸住宅のこれからと対処法」というテーマで、旧耐震建築基準法下で建築された賃貸住宅の実態と、その対処法について検討してみたいと思います。
旧耐震基準とは何か?
現行の建築基準法は1981年に改正されて、より耐震レベルの高い基準をクリアすることが求められるようになりました。改正のきっかけとなったのは、1978年に起こった宮城県沖地震等、複数の大きな地震が起こったことです。この改正により震度6強以上の地震に耐えうる建物が求められるようになりました。
それ以前の規準により建てられたものは旧耐震物件といわれています。
旧耐震賃貸住宅はどれくらいあるのか?
旧耐震基準下で建てられた賃貸住宅は、どのくらいあるのでしょうか?
賃貸住宅は全国に約1851万戸あるとされており、そのうち約21%にあたる約386万戸(不詳を含める)が1980年以前の旧耐震建築基準法時代に建てられたものです(総務省統計局、平成25年住宅・土地統計調査)。
行政機関は、こうした現状を踏まえて、耐震補強工事の促進のために、一部補助金を支給したり、注意を促したりしています。しかし、一般的な賃貸住宅では、こうした動きはまだまだ少ないようです。
旧耐震賃貸住宅が多いのはどの県か?
右の図を見るとわかるように、賃貸住宅全体に占める旧耐震賃貸住宅の割合が高いのは、圧倒的に西日本エリアです。1位和歌山県、2位奈良県、3位徳島県、4位大阪府で、上位16位まではすべて西日本エリアです。
旧耐震賃貸住宅の占める割合の全国平均は20.9%、つまり5棟に1棟は、旧耐震基準下の物件となっています。最も多い和歌山県では、旧耐震賃貸住宅の割合は30%に達します。ちなみに、最も少ない栃木県では、13%とかなり低い数字です。
街の整理整頓が進む大都市部
近年、東京・大阪・名古屋・福岡といった大都市部では、再開発が進んでいます。その勢いは、ここに来て地方都市にも広がっています。地方の主要駅前がきれいに整備され、駅前にオフィスビルと商業施設等が入る複合施設やタワーマンションが一気に増えました。このように、主要駅周辺の整備は進んでいます。
また、東京の中心部から郊外では、古い住宅、古い賃貸住宅がどんどん高値で売却されて、周辺との一体開発が行われたり、新しいマンションに生まれ変わったりしており、現在空前の「街の整理整頓」が進んでいます。このような背景により、かつては古い賃貸住宅が多かった東京が、今や全国平均をやや下回る割合になりました。示したのは平成25年の総務省データで最新のデータとなります。次回は今年(平成30年)ですが、おそらくこの5年で東京都下の古い賃貸住宅は相当数売却された、もしくは建て替えられたと思いますので、この割合は大きく減ると思います。
図:都道府県別 貸家総数の中で1980年以前に建てられた物件が占める割合
総務省統計局「平成25 年住宅・土地統計調査」より作成
建て替えすべきか、売却すべきか
悩ましい問題しかし、都市の郊外や地方都市では、こうした動きはあまりないようです。
賃貸住宅は築年数が経過すると、家賃が徐々に下がります。逆に、空室率は上がっていきます。
都心の超一等地なら別ですが、築40年を超える物件の競争力はかなり低いと思われます。旧耐震賃貸住宅の場合、たとえリフォームや大規模なリノベーションを行っても、入居者募集の際に築年数は公表していますので、競争力の大きな回復にはつながりません。
こうした物件を所有する場合、建て替えるべきか、あるいは現在のように大都市はもちろん地方都市でも市況の良い時期に高値で売却するかは悩ましい問題です。残債額、賃料貯蓄額、オーナーの年齢等、各オーナーの置かれている状況は異なるため、解答は1つではありません。まずは、賃貸住宅の建築企業、あるいは管理会社の方に相談されることをおすすめします。