土地活用に必須なデータの読み解き方第4回 賃貸住宅経営で重要な空室率データの読み解き方
公開日:2017/01/26
6回にわたり、土地活用に必要なデータを取り上げ、事例などを交えながら、データの読み解き方、使い方、収集方法などを解説していく第4回目。今回は空室率についてです。
今回も取り上げるすべてのデータは、一般公開されている(インターネットがあれば誰でも入手できる)ものです。本コラムの中では、それらを分析してグラフや表にしていますが、読者の方も興味があればアクセスして、その元データを見ることができます。
全国の空室率
賃貸住宅経営を始めようとしている方や、すでに賃貸住宅を所有されているオーナー様は、空室状況が気になることでしょう。
賃貸住宅の空室状況については、総務省統計局が公表している「住宅・土地統計調査」でデータを入手することができます。この「住宅・土地統計調査」は、5年に一度、その年の10月1日時点の実態を調査し、公表しているもので、現在の最新調査は平成25年(2013年)のデータです。次回の調査は平成30年2018年となっています。
この中のデータで、空き家の住宅数と入居中の住宅数というものがあります。賃貸用の住宅のデータを見れば、賃貸住宅の空き家数(人の居住していない家・部屋)と居住中の賃貸住宅の数が分かります。これらのことから、おおよその空室率を算出することができます。
平成25年(2013年)のデータでは、賃貸住宅の空き家数429万2000戸、居住中の数1851万9100戸、これらを単純に足すと2281万1100戸となります。(賃貸住宅の総数は、かなり古く賃貸の意思があるかどうかわかりにくいものや、自用の住宅を転勤などで一定期間だけ貸すなど、さまざまな要因から、その総数を把握することが難しいため、この2つの数字を合計と仮定します)
空き家数を単純に足した合計で割ると、18.8%となり、広くいわれている賃貸住宅の空室率約19%と合致します。
都道府県別空室率
今述べた数字は全国の数字ですが、これらの数字は県、市、区、町という単位でデータがありますので、それらを計算すれば、県、市、区、町単位でのおおよその空室率が算出できます。
図1:全国の賃貸住宅 空き家数データ
1998年 | 2003年 | 2008年 | 2013年 | |
---|---|---|---|---|
賃貸住宅(空き家) | 3,519,700 | 3,675,100 | 4,126,800 | 4,292,000 |
賃貸住宅(居住中) | 16,729,900 | 17,165,800 | 17,769,600 | 18,519,100 |
賃貸住宅総数 | 20,249,600 | 20,840,900 | 21,896,400 | 22,811,100 |
賃貸住宅の空室率 | 17.4% | 17.6% | 18.8% | 18.8% |
平成25年総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
図2:2013年の賃貸住宅の空室率
空き家数 | 居住中数 | 合計 | 空室率 | |
---|---|---|---|---|
北海道 | 224,300 | 945,900 | 1,170,200 | 19.2% |
札幌市 | 104,400 | 401,600 | 506,000 | 20.6% |
青森県 | 40,900 | 137,900 | 178,800 | 22.9% |
岩手県 | 30,200 | 144,500 | 174,700 | 17.3% |
宮城県 | 48,800 | 376,300 | 425,100 | 11.5% |
仙台市 | 33,500 | 258,600 | 292,100 | 11.5% |
秋田県 | 20,500 | 81,500 | 102,000 | 20.1% |
山形県 | 20,400 | 86,300 | 106,700 | 19.1% |
福島県 | 35,900 | 222,000 | 257,900 | 13.9% |
茨城県 | 104,100 | 287,800 | 391,900 | 26.6% |
栃木県 | 76,000 | 200,500 | 276,500 | 27.5% |
群馬県 | 74,700 | 203,000 | 277,700 | 26.9% |
埼玉県 | 210,700 | 909,700 | 1,120,400 | 18.8% |
さいたま市 | 36,500 | 188,000 | 224,500 | 16.3% |
千葉県 | 194,200 | 780,900 | 975,100 | 19.9% |
千葉市 | 33,700 | 140,900 | 174,600 | 19.3% |
東京都 | 598,400 | 3,100,300 | 3,698,700 | 16.2% |
特別区部 | 425,300 | 2,283,600 | 2,708,900 | 15.7% |
神奈川県 | 304,300 | 1,456,300 | 1,760,600 | 17.3% |
横浜市 | 112,300 | 598,500 | 710,800 | 15.8% |
川崎市 | 59,800 | 327,200 | 387,000 | 15.5% |
相模原市 | 23,600 | 111,800 | 135,400 | 17.4% |
新潟県 | 51,100 | 194,800 | 245,900 | 20.8% |
新潟市 | 22,000 | 101,900 | 123,900 | 17.8% |
富山県 | 22,000 | 74,800 | 96,800 | 22.7% |
石川県 | 35,900 | 123,400 | 159,300 | 22.5% |
福井県 | 18,800 | 59,000 | 77,800 | 24.2% |
山梨県 | 37,400 | 90,600 | 128,000 | 29.2% |
長野県 | 64,800 | 203,800 | 268,600 | 24.1% |
岐阜県 | 62,700 | 178,600 | 241,300 | 26.0% |
静岡県 | 137,200 | 420,200 | 557,400 | 24.6% |
静岡市 | 25,600 | 91,300 | 116,900 | 21.9% |
浜松市 | 31,900 | 104,300 | 136,200 | 23.4% |
愛知県 | 264,100 | 1,160,400 | 1,424,500 | 18.5% |
名古屋市 | 115,800 | 554,200 | 670,000 | 17.3% |
三重県 | 51,000 | 177,900 | 228,900 | 22.3% |
滋賀県 | 31,300 | 131,200 | 162,500 | 19.3% |
京都府 | 80,600 | 407,600 | 488,200 | 16.5% |
京都市 | 58,900 | 301,200 | 360,100 | 16.4% |
大阪府 | 418,700 | 1,654,700 | 2,073,400 | 20.2% |
大阪市 | 189,800 | 728,000 | 917,800 | 20.7% |
堺市 | 31,900 | 139,800 | 171,700 | 18.6% |
兵庫県 | 172,700 | 767,200 | 939,900 | 18.4% |
神戸市 | 58,700 | 272,500 | 331,200 | 17.7% |
奈良県 | 35,100 | 127,500 | 162,600 | 21.6% |
和歌山県 | 27,800 | 91,700 | 119,500 | 23.3% |
鳥取県 | 13,200 | 60,800 | 74,000 | 17.8% |
島根県 | 12,900 | 69,300 | 82,200 | 15.7% |
岡山県 | 61,600 | 224,200 | 285,800 | 21.6% |
岡山市 | 31,500 | 115,800 | 147,300 | 21.4% |
広島県 | 105,100 | 413,100 | 518,200 | 20.3% |
広島市 | 50,400 | 220,500 | 270,900 | 18.6% |
山口県 | 43,700 | 185,000 | 228,700 | 19.1% |
徳島県 | 23,300 | 80,000 | 103,300 | 22.6% |
香川県 | 30,300 | 106,900 | 137,200 | 22.1% |
愛媛県 | 50,300 | 185,400 | 235,700 | 21.3% |
高知県 | 23,700 | 104,300 | 128,000 | 18.5% |
福岡県 | 181,200 | 963,700 | 1,144,900 | 15.8% |
北九州市 | 38,900 | 183,000 | 221,900 | 17.5% |
福岡市 | 78,600 | 454,500 | 533,100 | 14.7% |
佐賀県 | 17,200 | 84,500 | 101,700 | 16.9% |
長崎県 | 42,700 | 187,400 | 230,100 | 18.6% |
熊本県 | 47,700 | 237,500 | 285,200 | 16.7% |
熊本市 | 30,300 | 145,200 | 175,500 | 17.3% |
大分県 | 38,800 | 168,900 | 207,700 | 18.7% |
宮崎県 | 27,500 | 144,700 | 172,200 | 16.0% |
鹿児島県 | 44,300 | 239,600 | 283,900 | 15.6% |
沖縄県 | 33,900 | 267,500 | 301,400 | 11.2% |
平成25年総務省「住宅・土地統計調査」より作成
県別にみると、賃貸住宅の空室率が最も低いのが沖縄県で11.2%、最も高い県は山梨県で29.2%となっています。主要都市では、東京10.2%、神奈川が17.3%、愛知18.5%、大阪20.2%、福岡15.8%となっています。
ときおりメディア等の報道では、調査会社の算出データで、「賃貸住宅の空室率が大都市でも30%近い」という記事を見かけますが、それとは大きくかけ離れているようです。
この「30%」という途方もない数字には、あまり過剰な反応はしない方がいいと思います。
本サイトのコラム コラム vol.181でも、このことは書きましたが、算出の方法が異なっているためで、違いについてはそちらを参考にしていただきたいと思います。
全国平均の18.8%という数字にも、例えば建て替え予定や大きなリフォーム予定をしてる場合など、入居者の募集をしていない物件も空室率に入っていますし、あるいは、築年数が50年を超えるようなかなり古い物件も入っています。
こうした物件の空室数を除くと、大都市部ではもっと低いと予想されています。
空室に関するデータは、今後の賃貸需要を予測することや、現在の賃貸住宅の需給関係を知る上で重要な指標となります。データを正確に読み解くことが求められます。