技術研究トレンド
技術トピックス
⼤和ハウス⼯業では、これまで、地震や台⾵などの災害に対応するさまざまな製品をお客さまにご提案してきました。
しかし、近年では、⼤きな地震も多発、⼤型台⾵による⻑期停電なども⽣じています。
⼤規模災害が起こっても、安⼼して暮らせるようにしたい。そんな思いで開発したのが、内外装の損傷を最⼩限に⾷い⽌める耐⼒壁「KyureK(キュレック)」、そして、業界初(※1)、⾬天でも約10⽇間の停電に対応可能な(※2)「全天候型3電池連携システム」です。
それぞれの開発への思いや開発経緯についてご紹介します。
これまで、⼤和ハウス⼯業では、お客さまに安全・安⼼な住まいをご提供すべく、繰り返しの地震にも強い持続型耐震構造を採⽤した⼾建住宅「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」など、さまざまな製品をご提案してきました。
しかし、近年、震度6強を超える⼤規模地震が多発、本震、余震も繰り返し起こっています。これにより、内外装のひびや割れやサッシのゆがみなどが⽣じると、⾃宅で安⼼・安全に住み続けることは困難です。当然、修復には費⽤も時間もかかります。
⼀⽅、地震や台⾵などの⼀次災害から、停電など⼆次災害が引き起こされるケースが多くみられます。もともと復旧が早いと⾔われていた電気も災害時の停電が⻑期間にわたるケースも増えています。
多発する⾃然災害に備え、災害時にもできる限り普段通りの⽣活ができるようにしたい。そんな思いから、私たちは、「KyureK」と「全天候型3電池連携システム」の開発に着⼿しました。
「KyureK」は、当社の主⼒住宅「xevoΣ」で使⽤している耐⼒壁をグレードアップさせ、住宅のレジリエンス(強靭性)を⾼めたエネルギー吸収型耐⼒壁です。
地震が繰返し起きても設計時の構造性能を維持し、内外装の損傷やサッシのゆがみなどを抑えることが可能です。地震のエネルギーを効果的に吸収する「KyureK」を1階に配置することで、条件によっては巨⼤地震時に、2階の床の揺れ幅を従来と⽐較して最⼤1/2低減(※3)することができるようになりました。
より早く、多くのお客さまに、これまで以上に安全‧安⼼な住まいをご提供できるよう、「KyureK」の開発では、「xevoΣ」で実績のある当社独⾃の技術「Σ(シグマ)形デバイス(※4)」をベースに、さらなる改善を⾏うことで、開発スピード向上とコスト削減を実現しています。
⼀般的な住宅の場合、強度を上げるために斜材や柱を太くすると、壁が厚くなり、有効⾯積が狭くなります。また、耐⼒壁の耐⼒を上げすぎると、まわりの柱、梁、基礎、接合部などの補強も必要となります。
限られたスペースの中で、いかに効率よく耐震性能を確保するか⸺具体的には、壁の耐⼒は現状と同等としながら、変形性能を損なわないよう初期剛性(※5)を上げることが、開発のテーマとなりました。
天井⾼の⾼い「xevoΣ」で使われる耐⼒壁は「N」形をしています。斜材下部にある「Σ形デバイス」が地震エネルギーを効果的に吸収し、特殊な材料を使うことなく、所要の剛性と変形性能を確保しています。さらに初期剛性を上げながら、斜材断⾯を⼤きくすることなく、柱と梁に負担をかけない⽅法を模索した結果「Σ形デバイスを2個配置したK形フレーム」にたどりつきました。
従来の耐力壁
KyureK
⼀⽅の「全天候型3電池連携システム」は、太陽光発電を燃料電池(エネファーム)(※6)で補うことで、これまでより⻑期間の電⼒供給を可能にしたシステムです。
これまで、太陽光発電と蓄電池を⼀つに組み合わせたハイブリッド蓄電システムでは、停電時に晴れの⽇が続かないと⻑期間の停電には対応できませんでした。今回さらにエネファームを連携させることで、⾬天が続いてもエネファームで発電した電気を使⽤し、余った電気を蓄電池に貯めることで、約10日分の電力と暖房・給湯を使用できます(※2)。
全天候型3電池連携システムの仕組み
当社では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及、⽇常の光熱費メリットやお客さまの災害時の安⼼のため、ハイブリッド蓄電システムとエネファームを販売してきました。しかし、どちらも停電時にはお客さまにとって不便な点がありました。ハイブリッド蓄電システムは、天候により太陽光発電の発電量が左右され、⾬天では発電がほぼできないため、蓄電池に貯めた電気だけでは、2⽇程度の停電にしか対応できません。また、エネファームは、停電時のみ使えるコンセントにしか発電した電気を供給できませんでした。このようにお客さまが停電時に不便さを感じられていることから、より⻑期間の停電に対応する必要性を強く感じ、解決策を模索していました。
ちょうどそのころ、新たに停電時にハイブリッド蓄電システムに連携可能なエネファームを開発したパナソニック株式会社さまと、意⾒交換する機会がありました。協議の結果、太陽光発電、蓄電池、エネファームの3つを組み合わせることで、⻑時間電気を供給できるシステムの開発に取り組むことにしました。
当社とパナソニック株式会社さまが中⼼となり、さらにハイブリッド蓄電システムのサプライヤーであるエリーパワー株式会社さまのご協⼒を得て、開発がスタートしました。開発を進める中、エリーパワー株式会社さまからお話があり、現時点の構成でエネファームをハイブリッド蓄電システムに連携させるためには、システム全体の⾒直しが必要であることがわかりました。
この問題を解決するために、当社が開発したのが「切換盤」です。この「切換盤」は、エネファームで発電した電気と、ハイブリッド蓄電システムのうちの太陽光発電で発電した電気を切り換えることができます。この仕組みにより、停電時にエネファームの電気を供給して、余った電気は蓄電池に貯めることが可能となり、⼤幅なシステムの⾒直しをすることなく「天候に左右されずに、⻑期間、電気を供給できるシステム」の構築が実現しました。
ハイブリッド蓄電システムとエネファームを連携する切換盤の開発では、使⽤した際に各機器で不具合が発⽣しないことが最重要ポイントであったため、各サプライヤーさまと綿密に連携し、試⾏錯誤を重ねながら開発を進めました。開発スタートから約1年半後、「切換盤」の完成によって、業界初(※7)の「全天候型3電池連携システム」は誕⽣しました。
50年、100年に⼀度といわれる災害が数年間に何度も起きる今、住宅のレジリエンス性を⾼めておくことが「命を守る」ことに直結すると⾔っても過⾔ではありません。避難⽣活が⻑引くことで⼼⾝の健康にさまざまな影響が及ぶこともわかっています。災害が起きた際も⾃宅で普段に近い安⼼・安全な⽣活が送れるということは、住む⼈の精神的・体⼒的な⽀えとなるでしょう。
当社が提案する「災害に備える家」は、災害時の被害を低減し、できる限り安⼼して普段通りの暮らしができるように、当社の技術を組み合わせた防災配慮住宅です。地震が起こった際は「kyureK」が住宅の被害を最⼩限に抑え、停電という⼆次災害が起きた場合は「全天候型3電池連携システム」が電気を供給し、住む⼈の安⼼・安全な暮らしを守ります。
「災害に備える家」に備えられたさまざまな技術
総合技術研究所には、建築分野の研究員だけではなく、⾳や光などの住環境系、IT・通信系、エネルギー系など多様な専⾨領域を持つ研究員が在籍しています。それぞれの視点から、常に「どんな技術があれば、万が⼀の災害時にもお客さまがより安⼼して暮らせるのか」を考え、サプライヤーさまと定期的に意⾒交換を⾏い、防災に関する新たな研究開発に取り組んでいます。今後も、専⾨領域を超え、各サプライヤーさまと協⼒、連携しながら、災害に強いレジリエンスを備えた住まいや建物、まちづくりを進めていきます。
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