大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

社外取締役 鼎談

2024年6月27日開催の第85期定時株主総会をもって任期満了により退任(在任期間:2016年6月~2024年6月)

—ご自身の経歴と大和ハウスで果たしたい役割

山田:
“将来の夢”の実現に向けた経営体制の構築というテーマを中心に、お二人にお話を伺いたいと思います。まずは、ご自身の役割についてお話しいただけますでしょうか。

桑野:
私が三洋電機の代表取締役社長であった2000年頃、財界活動で当時社長の樋口さんとご一緒する機会があり、私の専門であるエレクトロニクス分野の将来性について質問を受けた時が、最初の接点だったと記憶しています。その後、三洋電機の社長を退任してから当社監査役への就任依頼をいただき、2008年に引き受けました。新技術、エネルギー問題、IT、AIを専門する私の科学者としての経験に基づき、住宅・建設業界の展望に向けた経営アドバイスに努めてまいりました。

籔:
私は日本にコーポレート・ガバナンス・コードが導入された翌年の2016年に社外取締役に就任しました。大和ハウスの名の通り、生活者にとって最も重要な家づくり、暮らし、街づくりそのものに関わる多様な事業ポートフォリオを持つ当社グループにとって、私の家電メーカーでの商品開発や消費者研究等のマーケティング経験が何らかのお役に立つのではないかと思いお引き受けしました。
また大和ハウスグループが今後のより良い未来をどのように創り出していくのかということに、大変関心を抱いていました。ESGの実効性を含めて、当社が提供する価値の重要性は益々高くなると感じており、社外取締役としてもその認識を持って貢献して参りました。

山田:
お二人には、これまで当社の企業価値向上に向けて、様々な提言をいただきました。

桑野:
私の就任当時、電機業界では既に社外取締役がいる状況でしたが、当社ではまだ導入されていませんでした。そのため社外取締役の必要性や、生活に密接に関わるハウスメーカーとして女性の社外取締役の必要性について、監査役会で提言しました。今後も社会的要請を踏まえて、外部視点から企業価値向上に資する提言をしていきたいと考えています。加えて、外部からの評価、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応や中長期の経営ビジョンなど、経営全般に対する提言も行っていきたいと思っています。

籔:
私は特に、女性活躍推進やダイバーシティに対して、取締役会だけでなく、コーポレートガバナンス委員会(以下、CG委員会)において会社にとってはやや手厳しい意見も忖度なく申し上げて参りました。2017年「当社グループにおける女性幹部社員登用強化について」、2020年「当社における女性取締役の育成登用について」というテーマで提言を行い、経営陣と率直に意見交換を行いました。 そのほか自らの経験をもとに社内のダイバーシティ関連イベントでの講演や、モノづくりの経験からの技術者への講話、女性管理職との対話育成に加えて、“将来の夢”(パーパス)策定の検討会や、長期的な経営戦略討議にもオブザーバーとして参画し、経営層だけでなく、現場の皆様との接点も意識しながら務めてまいりました。

—社外取締役の役割と当社グループのガバナンス体制

籔:
当社の取締役会は、常に執行側とよい緊張感を持って真摯な議論がなされていると思います。執行側にとって耳に痛いことでも率直に発言できる取締役会は、健全であると思います。
また、CG委員会は、社外取締役、社外監査役、常勤監査役ならびに、代表取締役で構成され、当社の経営課題を広い視点から率直かつ建設的に議論しています。当社グループならではの大変ユニークな委員会で、テーマを決めて全員で意見を交換します。社外取締役一人ひとりに対して、委員長より経営課題についてのテーマが割り振られ、提言を求められます。私自身も会社の状況を知るためにいろいろな部門・現場に赴き実態を把握したうえで提言をまとめました。そうした提言を真摯に受け止め、スピード感をもって執行に取り入れていただける社長をはじめとする経営陣の姿勢にはとても感銘を受けました。

山田:
障壁などはあったのでしょうか?

社外取締役 籔 ゆき子

籔:
社外取締役就任当時、全国支店長会議などに出席させていただくこともありましたが、多くの出席者の中で女性は私ひとりという状況でした。経営陣の変わらなければいけないという意思や姿勢は強く感じましたので、トップダウンと併せて、私自身もダイバーシティ推進室のメンバーと一緒になって積極的に拠点を回り、啓蒙に努めました。社外が社内の後押しをすることで女性管理職育成が加速したと思っています。女性活躍推進は一朝一夕には実現できません。経営トップが現状を認識して歩みを進めることが重要です。2016年の女性管理職比率は2.3%でしたが、2023年は5.8%と倍増しています。女性の社外取締役も2名になり、女性の執行役員や事業部長も誕生しました。量的な増加はもちろんのこと、質的な増加も重要です。2015年4月に女性工事担当者は87名でしたが、2024年4月には170名と大幅に増え、調達、技術、営業などの部門でも女性がいきいきと仕事をするようになってきたと思います。その結果、内閣府の「令和2年度 女性が輝く先進企業表彰」を受賞し、女性活躍推進を応援してきた身としてとても嬉しく思いました。
女性活躍推進の取り組みを通じて、世の中の潮流・変化への当社の対応力や推進力、そして経営トップ自らが柔軟かつアグレッシブに歩みを進める姿勢を垣間見たように感じています。昨今では、「女性」にとどまらず、多様な人財が活躍できるDE&Iをマテリアリティの1つに掲げ、商品サービス等のプロダクトおよび開発プロセスにおける新しい発想を生み出し、多様な視点での意思決定を強化する観点から一段高い人的資本強化に取り組んでいます。

桑野:
籔さんには継続的に女性幹部や役員の必要性について提言をしていただきました。その成果が、新しい道を切り拓くことにつながったのだと私は思っています。

山田:
社外からの提言を社内がどう受け止め、経営に活かしていくか、経営陣の意識変革につなげていくことの重要性がよく理解できました。

桑野:
ガバナンスという点では監査役会も非常に重要な役割を果たしています。私が監査役に就任した2008年は、著名な中坊公平弁護士が現場実査など他社には類をみない強固な監査体制を築いていました。中坊先生から社外監査役を引き継ぐ際、辛口な意見も率直に言うことが社外監査役の重要性だと説かれました。その言葉は、今も私にとって錦の御旗になってきましたし、今の監査役会もそれを継承していると思います。

錦の御旗(にしきのみはた):自分の主張をより権威づけたりするために掲げるもの

—コーポレートガバナンス委員会の位置付け

山田:
当社では、現在のCG委員会と同様の取り組みをコーポレート・ガバナンス・コード発効以前から行っていますよね。社外取締役、社外監査役、代表取締役との意見交換会において、会社をよくするためには1対1での対話よりも経営層のオフィシャルな会合を設けた方がよいと提言されたことから委員会が設置されたと伺いました。さらなるガバナンス機能の強化に向けてCG委員会は今後どうあるべきだと思われますか?

社外取締役 桑野 幸徳

桑野:
会社の経営戦略について社外役員と会社幹部が戦略的論議を交わし、大和ハウスをより良い方向に導くことがコーポレートガバナンスの本来的な意味合いだと考えています。これまでも、法令遵守にとどまらず、中長期の経営ビジョン、事業本部制、資本コストを意識した経営、従業員エンゲージメント、DXなど様々なテーマで議論してきました。経営全体への問題提起が重要と捉えています。

山田:
株主・機関投資家からは、「社外取締役がきちんと機能しているか」、「我々の立場に立って執行を監督して欲しい」といった意見・要望がある中、当社では、年に2回、IR室・総務部より、独立社外役員に対して、株主・機関投資家からいただいた意見や要望を報告する機会を設けています。その報告をふまえて、独立社外役員の皆さんで、CG委員会で議論する内容を検討いただき、提言いただいています。

桑野:
当社のガバナンスの特徴として、CG委員会のメンバーが株主・機関投資家の要望について自分たちの知見と照らし合わせた上で行う「執行側への提言」が機能している点が挙げられます。外部からの意見をふまえてCG委員会準備会を数回開催し、さらに前日にはメンバー全員(常任監査役と社外監査役7名、社外取締役5名)で夕食会を開催し、フリーディスカッションをしたうえで、委員会としての意見をまとめています。メンバー全員の意見をまとめて提言をすることによって、執行側への影響力を維持しています。

籔:
社外役員が必ずしも個人としてではなく、チームとして提言することにより、中長期的な成長に向けた建設的かつ公正な意見をしっかりと議論できる体制になっていると感じます。社内の反応が芳しくない時にも、社外役員がそれぞれの専門的な立場から相互に補完し合える体制は非常に合理的だと思います。

桑野:
7年前、CG委員会の総意として、事業構造革新のためのデジタル技術BIMの展開に大規模な資金を投入することを提言しました。当社グループはそれまでもコツコツとデジタル技術導入を進めていましたが、CG委員会で社外からの総意の提案が、大きく進展させるきっかけとなりました。いずれにせよ、CG委員会が機能するためには、執行側が聞く耳を持っていることが重要です。これまで執行側とCG委員会が良好なコミュニケーションを維持してきたことが奏功していると考えています。

—企業価値向上につながるガバナンス体制

常務執行役員 財務・IR担当 山田 裕次

山田:
東証からの要請もあり、各社とも資本コストや株価への意識が高まっていますが、当社グループでは2023年4月から、事業本部長の業務執行報告の際に取締役会のモニタリング機能強化の一環として事業本部別ROICを報告しています。2021年の事業本部制導入以来、各事業に管理監督機能を持たせて機能強化に取り組んでいます。例えば、M&Aをした会社を事業本部制に組み入れることで、事業本部長が事業本部全体を管理監督する体制が整いつつあり、大和ハウスグループ全体として経営の透明性、ガバナンスの強化が図られつつあると思っています。一方、役員報酬の議論についてはいかがでしょうか。

桑野:
CG委員会で財務・非財務を一体化した経営について議論してきましたので、KPIに環境指標を導入できたことは重要な一歩だと捉えています。

籔:
株式報酬比率を20%に引き上げたことも、報酬諮問委員会では大変評価しています。中長期的な企業価値向上へのインセンティブという意味合いが大きいと思います。引き続きパーパスに基づいた社会価値の創造(ESG経営)への報酬インセンティブの在り方の議論が深まるのを期待しています。

桑野:
株主の賛同を得ることが前提ではありますが、海外売上比率が上がっていくことをふまえると、将来的には役員報酬体系もグローバル水準に近づけていく必要性があるのではないかと個人的には考えています。

山田:
「取締役会の構成比」については、社外役員を過半数にという機関投資家からの意見もありますが、ガバナンスのさらなる強化に向けて、どのように考えていますか?

桑野:
社外役員を過半数にするという意義や効果は十分認識しており、論理的には過半数を目指すべきだと思います。例えば不祥事を起こした時に罷免することは社外取締役の一つの機能と考えています。しかし最も重要なことは、社外取締役が会社のことをよく理解したうえで、企業価値向上への提言をすることです。過半数を目指すという量的な意義だけでなく、その質が問われるのだと思っています。

山田:
社外取締役の質については、投資家との対話において詳細なスキルマトリックスを開示して欲しいという意見があり、指名諮問委員会で協議いただきました。

籔:
スキルマトリックスについては、IR部門より報告を受け、今回見直すに至り、指名諮問委員会での議論を経て定めました。今後の課題としては、例えば海外事業拡大に伴い、グローバルガバナンスの強化やそれに向けた人財育成配置なども重要になりますので、事業活動や事業ポートフォリオに応じて、定期的にスキルマトリックスの見直しが必要ではないかと思っています。

社外取締役 桑野 幸徳

桑野:
今はChat GPTをはじめとするAIの時代です。産業革命以降の大きな変革がAIによってもたらされ、必要なスキルが増してくると思います。今後のビジネスのあり方、やり方がどう変わり、どのような方向に進むかを見据えることが非常に重要です。CG委員会においては、NTTドコモの元社長である吉澤社外取締役に、外部から見た大和ハウスグループのDXについて提言していただく予定です。

—ガバナンス強化への課題

桑野:
2019年に発覚した不祥事は、大和ハウスの長い歴史にとって極めて重大な出来事でした。いずれも本社部門と現場とのコミュニケーションの不徹底、チェックする仕組みができていなかったことが要因でした。

山田:
私も社員向けのIR説明会の場などで当時の株価への影響など都度説明し、風化することがないようにしています。

社外取締役 籔 ゆき子

籔:
社外取締役の重要な責務には、有事の際に果たすべき役割と平時にどう企業価値向上に貢献するかの2点があると認識しています。教訓に学び、二度と不祥事を起こさないよう経営体制を盤石なものにしていく努力が今後も求められます。2024年6月からは社外取締役は6名になりますので、モニタリング機能をさらに強化していっていただきたいと思います。

籔:
第7次中期経営計画に関しては、着実に進捗していると思います。私の就任からの8年間を振り返れば、売上や利益の成長に加えて事業本部制導入などグループ全体のマネジメントも激変したと感じており、特に海外事業展開に向けては、グローバルガバナンスの強化が重要です。また人的資本や知的資本などへの取り組みは、当社グループの競争力に大きな影響を与えていくと思いますので、女性・若手登用のパイプライン作りや人財育成プランの作成に継続的に取り組むとともに、可能な限り多様な意思決定方法を有することで、競争力を維持・強化していく必要があります。

桑野:
いつも当社の歴史を長期的視点で見ていますが、2000年当時、当社の売上高は約1兆円でした。その後、2010年頃を契機に同業他社や大手ゼネコンとは一線を画しながら、ついに2023年度に5兆円を達成しました。高い成長率と利益率が実現できているのは、大和ハウスの持つ、独特な「営業・企画から建設、メンテナンスまで多岐にわたるビジネスモデル」があるからで、これが、他社との差別化・競争優位性につながってきたと考えています。
CVCのような新規ビジネスの展開に向けた種まきも始まり、売上高10兆円への展望は大いにあります。だからこそリスクの再発防止策をグループ全体でシステマティックに推進し、“将来の夢“の実現の確度を高めていきたいと考えています。

籔:
大和ハウスグループの”将来の夢”(パーパス)の実現に向けて、役職員の今後のより一層の奮励努力を期待しています。

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