大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

CFOメッセージ

CFOメッセージ

変化に対応し、さらなる成長を遂げる

第7次中期経営計画(以下、7次中計)の2年目にあたる2023年度、売上高は5兆円を突破し、過去最高の5兆2,029億円となり、営業利益は4,402億円(退職給付における数理計算上の差異等を除く営業利益では過去最高の3,936億円)となりました。創業者・石橋信夫の夢である「創業100周年に売上高10兆円の企業グループ」の折り返しとなる5兆円を、70周年(2025年)を迎える前に達成できたことは感慨深いものがあります。従業員一人ひとりの働きに感謝するとともに、創業者の “世の中の役に立つからやる“という言葉を大切にして、現状に満足せず、さまざまな領域に挑戦してきた結果を誇りに感じています。
一方、市場環境に目を向けると、国内においては、日銀のマイナス金利政策の解除にともない、今後は金利のある社会へ変化していくことが予想されます。CFOとしては、さまざまな事業への挑戦や新たなエリアへの進出を続けるなかで、リスクマネジメントの観点からも、金利上昇局面に対する強固な財務基盤の構築は重要な課題の一つであると考えています。
そこで当社は、金利上昇を見据え、投資のハードルレートを、2023年2月に引き上げました。また、直接金融と間接金融、変動金利と固定金利など状況に応じた多様な資金調達を常に検討しています。現在の格付はAA格を取得していますが、我々にとって安定的な資金調達に向けて、格付の維持は重要なテーマです。格付会社との対話では、不動産開発事業が拡大する状況下で、どのようにD/Eレシオ0.6倍程度を達成するのかが問われています。成長への投資とともに、保有している不動産の回転率や稼働状況をしっかりと管理しながら、財務健全性の維持に努めています。
また国内では人口、世帯数の減少が一層進行し、深刻な人手不足が課題となる中、人財の確保と労務管理は今まで以上に厳しくなるでしょう。絶えず社会環境が変化する中でも、当社は業界のトップランナーとして、社会からの期待に応え続けていくために、2024年問題という労働時間規制への対応をしっかりと進めていきながら、ガバナンスへの意識を更に高めていかなければなりません。
さらに成長の柱である海外事業においては、RC(リージョナル・コーポレート)機能を、アメリカ、オーストラリア、ASEAN、中国、ヨーロッパ等、世界各地で設置し、各エリアの事業や子会社、プロジェクトに合わせた体制を整え、現地の商慣習やリスク、ノウハウをRC機能に蓄積することで、持続的な成長を支える経営体制とリスク管理を推進しています。加えて、本部と海外各社の役割と責任を明確化したうえで、現場により近い位置(業務内容、物理的距離)でモニタリングし、適切なサポートを行っています。

7次中計の進捗

2021年頃から鉄をはじめとする資材価格の高騰や、労務費の上昇等により、建設コストが上昇してきた中、利益率の悪化に対する策を講じてきました。各事業で価格転嫁などの取り組みは進めていますが、価格高騰以前に締結した契約案件の交渉は想定通り進まず、比較的工期の長い事業施設と商業施設事業は、その影響を受けています。しかし直近では、改めて契約締結時にお客さまへ資材価格高騰時の価格転嫁に関して丁寧に説明し、契約書の特約に記載するなどしていますので、今後は徐々に利益率が改善していくものと見ています。
加えて7次中計では、グループ購買によるコスト低減の取り組みも進めています。従来はグループ会社が個別に調達していたものを、国内の主要なグループ企業(大和ハウス工業、大和リース、フジタ等)が共同で調達することにより、参加グループ企業における最優遇価格の展開が可能になりました。スケールメリットによるコストダウンも期待でき、2026年度グループ集中購買額1兆円、コスト削減効果額1,000億円に向けて取り組みは順調に進捗しています。また、海外においてもオフサイト化(工場生産)の推進や、米国戸建住宅3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)による共同調達の取り組みが始まっています。

— 投資と回収

代表取締役副社長/CFO 香曽我部武

開発不動産については、7次中計の投資額2.2兆円に対する進捗率は約30%となりました。2.2兆円のうち、物流施設を中心とした事業施設への投資は1.5兆円と計画しています。物流施設用地仕入れにおける競争環境の激化や大型の土地入札案件の一巡感などが影響し、投資スピードは当初見込みよりも遅れていますが、テナントからの確かな需要は確認できています。開発不動産の売却については、国内の物流施設を中心に、安定して売却できており、今後も継続的に実施していきます。米国においては、近年の金利上昇などにより、賃貸住宅をはじめとする投資不動産の流通市場環境が悪化しました。その影響で、2023年度は売却を見送りましたが、市場環境が回復してきた際により良い条件で売却できるよう、NOI利回りの向上を図りながら、運営、開発を継続していきます。
一方、販売用不動産については、国内各事業で積極的に分譲事業の拡大を進めているため、7次中計策定時の見込みより投資が進んでいます。特に、戸建住宅事業では、国内で事業モデルの改革を行い、分譲事業を強化しており、また、米国では、現地3社の強みである土地情報力や地主、土地開発会社との強力なリレーション等を活用しながら、優良な土地の確保を順調に進めています。賃貸住宅事業では、土地を取得し、アパートを建設後、ご入居者様を募り、投資家や節税対策を目的としたオーナー様向けに販売しています。商業施設事業や事業施設事業についても豊富な土地情報力や顧客基盤を活かしながら、様々なアセットを開発し、売却を実施しています。
分譲事業は請負事業と比較し、土地や建物に投資するリスクがありますが、土地取得から建物仕様、アセットによってはテナント誘致まで当社がデザインすることで、収益率の向上が期待できます。各事業で回転率や滞留する不動産の状況、市況や分譲事業のパフォーマンスなどを注視しながら、効率的な投資を行っています。

— 資金調達

2024年1月に、転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行しました。7次中計における積極的な不動産投資を遂行するための戦略的な資金調達です。金利上昇など資金調達環境の不透明な状況が続く中、金利0.00%で調達を行っており、普通社債での調達と比較して約7~80億円程度の金利コストの削減が実現できたと考えています。また、転換制限条項及び取得条項(額面現金決済型)の付与により転換の可能性及び希薄化を抑制しうる商品設計にしています。さらに当CBにより得た低コストの資金を原資に自己株式取得を実施したので、資本政策の達成に向け、ROEや1株当たり当期純利益(EPS)等の資本効率の向上も企図されています。なお、額面現金決済型取得条項については、当社のオプションであるため、行使に関しては株価やD/Eレシオの水準、ROEの状況など、その時点での財政状況や資本政策を考慮して判断していきたいと考えています。

資本コストと株価を意識した経営を推進する

代表取締役副社長/CFO 香曽我部武

常にエクイティスプレッドを意識した経営を推進しておりますが、成長分野への投資を継続しながら、ROE13%以上を実現することは決して容易ではありません。しかし、既存事業での確実な成長と、生産性向上による更なる利益の創出に加えて、安定的な株主配当や機動的な自己株式の取得による株主還元との両輪で、ROE13%以上を達成したいと考えています。また、事業ポートフォリオの見直しという観点から実行した、2023年7月のリゾートホテル事業の譲渡や、2024年2月のコスモスイニシアの株式一部譲渡、さらに政策保有株式の売却など、積極的に保有資産の資金化を図ることも、ROEの目標達成に向けての手段の1つだと考えています。
株価については、一時、日経平均が4万円超となる中、当社も年初には4,718円の上場来最高値を更新することができましたが、2024年5月の決算発表後には、併せて公表した2024年度の計画が市場コンセンサスに対して未達であったことなどから、株価を下げることとなりました。現状のPBR、PERの水準を考えれば、物足りなさを感じていますので、しっかりと実績を積み上げて市場の期待に応えていきたいと考えています。
昨今言われているPBR向上に向けては、ROEの向上と株主資本コストの低減の両面で取り組む必要があります。株主資本コスト低減に向けては、更なるガバナンス強化と、IR活動を通じた株主・機関投資家との対話が鍵となります。まずは7次中計最終年度の利益達成の蓋然性をご説明するとともに、豊富な土地情報を有する強みと、そして地方行政や各企業を含む顧客基盤から生まれる事業機会を活かす当社の稼ぐ力を改めてご理解いただき、当社が持続的に成長し続ける企業であることを再認識いただけるよう努めていきます。

環境、人的資本に積極投資する

環境については、2050年にカーボンニュートラルを実現すべく、原則、建築するすべての屋根に太陽光発電パネルを設置し、2030年度にはZEH・ZEB率を100%とする取り組みを進めています。
GHG排出量については、2023年度は響灘火力発電所の子会社化により、事業活動(スコープ1・2)は一時的に増加しました。一方、カーボンニュートラル戦略のもと、太陽光発電パネルの設置率、ZEB、ZEH率が順調に向上したことにより、販売建物の使用(スコープ3カテゴリ11)における排出量の削減が進んだことから、バリューチェーン全体のGHG排出量は、計画を上回る35.6%削減を達成しました。お客さまとともに進めるカーボンニュートラルに向けた取り組みが進んでいることを実感しています。
当社の持続的成長、そして“将来の夢”の実現に向けた人的資本経営においては、多様な人財が活躍し、従業員一人ひとりが働きがいを実感できることが生産性の向上につながります。従業員が「誇り」と「働きがい」を持ち、個々が「強み・らしさ」を発揮して活躍できる人財育成と、公平・公正な場の整備を進めています。特に現場における人財育成や組織運営の要となるミドルマネジメント層への教育を強化しており、労務管理だけでなく、「人が活きるマネジメント」と「業績が上がるマネジメント」の好循環を生み出すための意識、知識、リテラシーを高めるための教育支援を行っています。
また物価上昇が続くなかで、従業員が安心して働ける環境整備と、中長期的な人財の採用・確保につなげるため、従業員への投資として継続的な給与改定を実施しています。加えて、建設業の2024年問題に向けた建設DX投資なども推進し、現場の負荷低減による生産性向上も進めていきます。

響灘火力発電所:石炭とバイオマス燃料(木質ペレット)の混焼による発電を行っており、石炭専焼のプラントと比べCO2排出量を最大で年間約30%削減可能。なお、2024年3月に稼働を停止したため、2024年度以降のGHG排出量は再び目標達成水準に達する見込み。今後は、バイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換、2026年4月の運転開始を目指している。

引き続き安定的な株主還元を実現する

当社は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆さまに還元するとともに、中長期的な企業価値最大化のために不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発や生産設備などの成長投資に資金を投下し、1株当たり当期純利益を増大させ、株主価値向上を図ることを株主還元の基本方針としています。2023年度の年間配当金額は143円、配当性向は35.1%(退職給付における数理計算上の差異の影響を除く)となりました。2024年度の年間配当額は145円の計画とし、15期連続の増配を計画しています。また2024年5月には7次中計における株主還元方針の一部を変更させていただき、安定的な配当の観点から、配当金の下限設定を130円から145円へと変更させていただきました。
自己株式の取得については、市場環境や資本効率等を勘案し、状況に応じて機動的に実施する方針で、7次中計の2年間で総額で871億円の自己株式の取得を実施しています。また2024年8月には、1,000億円(2,200万株)を上限とする新たな自己株式の取得を発表しましたので、引き続き7次中計の資本政策の達成に向けて取り組んでいきます。

ステークホルダーとともに“将来の夢“を実現する

代表取締役副社長/CFO 香曽我部武

大和ハウスグループは、利益を創出する事業価値と “世の中の役に立つ“という考え方のもとで生み出される社会価値の両立により、企業価値向上を図っています。
創業以来当社は、戦後の木材不足から鉄パイプで組み立てた「パイプハウス」やプレハブ住宅の原型となる「ミゼットハウス」、日本初の住宅ローン、1970年代にはロードサイドの遊休地利用による流通店舗事業など、次々と新たな商品・事業を生み出してきましたが、次のステージに向けて、新しい事業の創出にも本格的に挑戦していきます。アントレプレナー(起業家)とイントレプレナー(社内起業家)との共創機会を創出し、新規事業へ挑戦するための仕組みとして、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)と社内起業制度を設立しました。“世の中の役に立つ“新たなサービスや付加価値がこの制度を通じて生まれることを大いに期待しています。
社会価値を創造する事例の一つとして「リブネスタウンプロジェクト」があります。建物を引き渡して終わりではなく、その後のお客さまの暮らしにも寄り添うという点で、非常に大和ハウスらしい取り組みです。業績は大切ですが、それだけを目標とせずに、今後も全てのステークホルダーの皆さまにとって何が良いかを常に考えながら、“夢”の実現に向けて事業を進めていきます。

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