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コラム vol.526
  • 賃貸住宅経営のポイント

賃貸住宅経営に特有の経営指標 回収期間

公開日:2024/09/30

土地活用ラボ「賃貸住宅経営を行う上で、注意すべき指標とは」にて、表面利回りだけではなく、大切な指標があることを紹介しました。今回は、賃貸住宅経営を始める際に気になる「回収期間」について紹介します。

「回収期間」は、短いほど良いと考える人が多いと思います。そのためには、一般的には、「家賃を高く設定する」「自己資金を減らす」「諸経費の削減を行う」などが考えられますが、回収を早めようとするあまり、入居者が集まりにくくなり、空室が増え、回収期間が長期化するかもしれません。では、回収期間を長く設定すればいいかというとそうでもありません。回収期間が長すぎることで、回収し終わらないうちに建物の老朽化などにより修繕が発生し、回収期間内に大きな出費が出てしまう可能性もあります。

賃貸住宅経営の回収期間を見るための指標
CCR(Cash on Cash Return)

CCRは「自己資金収益率(配当率)」とも呼ばれ、賃貸住宅の購入時に支払った自己資金に対する年間の収益(キャッシュフロー)の割合を指します。
計算方法は、年間収益額を自己資金投資額で割るというシンプルなものです。

CCR(%)=年間収益額÷自己資金投資額×100

例えば、1000万円の自己資金を投資し、年間で200万円の収益を得る場合、200万円(年間収益額)÷(自己資金)1000万円×100=20(%)で、年に20%自己資金を回収することになります。また、ここで算出される回収期間は、1000万円(自己資金)÷(回収額)200万円=5年となります。

PB(Pay Back Period)

PBは「資金回収期間」とも呼ばれ、自己投資額を何年で回収できるかを具体的に知るための指標です。年間収益額から諸経費を引いて計算します。

PB(年)=自己資金投資額÷(年間収益額-諸経費)

前述のケースと同様に、1000万円の自己資金を投資し、年間で200万円の収益を得て、管理費や修繕費、税金などの諸経費が年間40万円かかるとします。
その場合、1000万円(自己資金)÷(年間収益額200万円-諸経費40万円)=6.25年で、自己資金1000万円を回収するには、諸経費を考慮すると、6年3カ月かかることになります。

ROI(Return On Investment)・ROE(Return On Equity)

ROI・ROEは「投資収益率(回収率)」とも呼ばれ、自己投資額と借入金を含めた総投資額に対して、年間にどの程度の収益があるかを知るための指標です。計算方法は、以下のとおりです。

ROI・ROE(%)=年間収益額÷総投資額(自己資金+借入金)×100

賃貸住宅購入額5000万円(自己資金1000万円+借入金4000万円)で、年間収益額が200万円の場合は、「200万円÷(1000万円+4000万円)×100=4%」となり、投資額全体に対する年間の回収率は4%となります。

賃貸住宅経営の回収期間シミュレーション

購入価格が8000万、家賃は1室10万円/月×10部屋、諸経費は1室1万円/月の場合での、賃貸住宅経営の回収期間シミュレーションを行ってみます。家賃収入は10万円×10部屋×12カ月で、年間1200万円となります。10%の空室リスクを考慮すると、1200万円×0.9で1080万円の家賃収入となります。また、諸経費が一部屋につき1万円なので、1万円×10部屋×12カ月で120万円となり、以下のような利回りとなります。

実質利回り:(1080万円-120万円)÷8000万円×100=12%

この利回りから回収期間を計算すると以下の期間となります。

実質利回り回収期間:8000万円÷(8000万円×0.12)=約8.3年

適切な回収期間にする

新築の賃貸住宅

新築の賃貸住宅の場合、築古の賃貸住宅と比較して入居希望者が多く空室リスクは下がります。回収期間という観点からは、しばらくは修繕費などがかかるケースも少なく、入居者の入れ替わりの際も、大きなリフォームが必要となるケースも少ないことから、回収期間の計画は立てやすくなるでしょう。

自己投資額を減らす

回収期間は自己投資の回収がポイントになりますので、回収期間を短くするには自己投資額を減らすことが必要となります。金融機関からの借り入れを増やし自己資金を減らせば、回収期間は短くなります。
ただし、自己資金を減らすことで、毎月の返済額が増加し、金利分の負担が大きくなります。自己資金を減らすことで、支払いリスクが増加しますので、慎重に自己資金と借入金の割合を決める必要があるでしょう。

耐用年数の長い工法を選択する

工法により耐用年数が変わりますので、一般的に、耐用年数が長い賃貸住宅は融資の期間が長くなります。融資期間が長くなれば、毎月の返済額も減りますので、結果的に自己資金を減らすことにもつながり、結果的に回収期間も短くなるでしょう。毎月の返済に余裕があれば、突然のトラブルや災害などによる費用負担があっても対応しやすくなります。

空室期間を減らす

保有する賃貸住宅に空室になってしまうと、賃料が入らなくなりますので、その分回収できないことになります。長期的な回収を継続するためには、できるだけご入居者がいる状態を保つ必要があります。
空率が生じてから対策を考えるのではなく、空室を生みにくい賃貸住宅経営のために、常に、建物の経年劣化への対応をしたり、市場の変化を把握することが重要です。

前述したように、回収期間を短くしようとするあまり、賃料を高くしすぎたり、経費を抑えすぎたりすると、賃貸住宅経営に支障をきたす可能性が高くなります。市場のニーズを汲み取り、適切な自己資金の回収期間を設定することが必要です。

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