国も推進する「空き家」活用による社会貢献
公開日:2024/07/31
空き家率は13.8%と過去最多
2024年4月に総務省から公表された「住宅・土地統計調査」の速報値によると、2023年の日本の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%に達し、過去最多の結果となりました。
図:空き家数及び空き家率の推移-全国(1978年~2023年)
総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」より作成
問題となるのは、この空き家数の中でも「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」です。それ以外の空き家は、賃貸用、売却用など、暫定的な空き家ですから、実質的な空き家はこの部分となります。この使用目的のないとも言える空き家は、この20年で1.8倍以上となっており、今後も増加することが予想されています。この5年間でも約36万戸増加しています。
人口が減少する中、実家を相続したり、あるいは1人暮らしの親が施設に入居したりして、現在も空き家は増え続けています。空き家となった際、解体などの費用負担の問題や、将来使用するかもしれないと考える人も多く、多くの空き家がそのまま放置されてしまいます。
この放置された空き家によってさまざまな問題が起きているのが「空き家問題」です。適切に管理されていない建物は老朽化が進み、外壁や塀の落下や家屋倒壊の恐れがあります。また、建物が破損したりゴミが散乱したりすることで、周囲の景観を損ないますし、犯罪に関係する危険性もあり、地域の不動産価値を下げる原因になります。この空き家問題の解決に向けて、国も対策強化に乗り出しています。
空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が施行
令和5年12月13日、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律が施行されました。この法改正により、特定空家(そのまま放置すると倒壊等の恐れがある状態の空き家)に加えて管理不全空家(窓や壁が破損している等、管理が不十分な状態の空き家)も市区町村からの指導・勧告の対象となりました。空き家のある市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」としての指導を受け、それに従わず勧告を受けることになった場合、固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。
空き家の再利用を促進する国土交通省の取り組み
空き家の増加は社会や経済に影響を及ぼす深刻な課題です。一方、課題であると同時に、少子高齢化社会において、空き家を再利用・転用することで地域活性化や地方創生につながる場合もあります。政府や自治体は、空き家問題について対策を強化するため、空き家のリノベーションや再利用を促進する補助金制度の導入や、空き家を活用した地域振興策などを進めています。
その一環として、国土交通省は、「空家対策」の一環として専用Webサイトを開設し、空き家はそのままにせずに、空き家を「仕舞う」(解体を行い、跡地を広場や駐車場、新しい建物の敷地として活用)、空き家を「活かす」(改修を行い、売買用の住宅、用途替えをしてカフェなどとして活用)等の対策を推奨しています。
地域価値を共創する不動産業アワード
2022年、国土交通省によって「地域価値を共創する不動産業アワード(国土交通省不動産・建設経済局長賞)」が創設されました。この表彰制度は、地域の特性を活かし、空き家や遊休不動産の活用を促進することで地域社会を活性化し、新規事業や雇用の創出といった経済効果、地域住民の参画によるコミュニティ強化を目指しています。
第1回アワード大賞は、株式会社エンジョイワークスの「共感投資プラットフォーム「ハロー!RENOVATION」を活用した空き家・遊休不動産の再生」が受賞しました。この取り組みでは、地域住民や関係人口の共感・参加を軸に、地域特性を活かしつつ、地域の空き家や遊休不動産を利活用する、参加型まちづくりプラットフォーム「ハロー!RENOVATION」を企画・運営。資金としてクラウドファンディング、ふるさと納税、助成金を活用し、地域金融機関と連携。新たな事業審査の仕組みを構築するための環境づくりに取り組みました。
第2回は、NPO法人福岡ビルストック研究会の「九州DIYリノベWEEK」がアワード大賞を受賞。九州4県24地域の事業体で構成されるNPO法人福岡ビルストック研究会は、DIYの手法を取り入れた「DIYリノベ」により、休眠不動産の再生と地域活性化を行っています。情報共有やスキルアップのためのシンポジウムや視察ツアー、相互訪問等を毎年実施し、地域活性化を推進。10年間で活用された遊休不動産は264棟、再生した空きビルや空き家で新規事業を始めた起業者が150人以上、新規雇用者は160人以上、移住者は50組以上、設立された民間まちづくり組織は30組以上に上ります。
空き家対策モデル事業を募集
国土交通省は、地方公共団体、NPO、民間事業者、地方住宅供給公社等を対象に、空き家の適切な管理と再利用を促進するためのモデル事業を募集。空き家の再利用により地域を活性化し、空き家の再生により新たなビジネスや雇用の創出といった経済的効果を目指しています。
令和6年度の募集では、NPOや民間事業者等の創意工夫によるモデル性の高い空き家の活用等に係る調査・検討等や改修工事・除却工事等に対して国が直接支援し、その成果の全国展開を図るとしています。
空き家問題は今後の日本において大きな課題であり、今後も空き家数の増加が見込まれていることから、除却等の促進に加えて、周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用や適切な管理の強化が急務となっています。そのためには官民が連携し、地域社会が一丸となって空き家を再活用していく必要がありそうです。空き家の再活用は地域や社会への貢献にもつながる取り組みです。放置された空き家を適切に管理・活用することで安全な住環境を提供することができれば、住みやすく、快適な街づくりにもつながります。