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コラム vol.510
  • 不動産市況を読み解く

2025年問題を控え、国も事業承継を支援

公開日:2024/06/28

2025年以降に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、超高齢社会を迎えます。団塊の世代の方は、現在約800万人にのぼっています。厚生労働省の資料によれば、団塊の世代の方々が後期高齢者になる2025年には75歳以上の人口が全人口の約18%を占めると試算されており、2025年問題と呼ばれるこの問題は、事業承継の課題が一層深刻になるといわれています。
帝国データバンクが実施した調査によれば、2023年における全国の後継者不在率は改善傾向が続いているものの、53.9%となっています。しかも、社長の高齢化は進む一方で、これからの事業の継続に支障をきたすケースが増加するのではないかと指摘しています。
また、2023年時点における社長の年代別構成比をみると、「50歳以上」が81%となり全体の8割以上を占め、「60歳以上」が半数以上を占めています。事業承継が喫緊の課題と思われる「70歳以上」は25.2%となっています。実際に、2023年度の後継者難倒産は586件あり、過去最高を大幅に更新しています。

2025年問題を背景にした中小企業庁の事業承継への取り組み

国は2025年問題などを背景に、事業承継が進むためにさまざまな取り組みを実施しています。一例を紹介します。

事業承継・引継ぎ補助金

要件を満たし審査を通れば、補助金として支援を受けることができます。M&A時の専門家活用費用や事業承継・引継ぎ後の設備投資や販路開拓、設備廃棄費用等に充当することができます。

事業承継・引継ぎ支援センター

全国47都道府県で、事業承継全般に関する相談対応や事業承継計画の策定、M&Aのマッチング支援等を原則無料で実施しています。税理士や中小企業診断士等の外部専門家と連携し、「事業承継計画」策定の支援を無料で行っています。

遺留分に関する民法の特例

自社株式や事業用資産を後継者に集約して承継したい場合、ほかの相続人から遺留分を請求されることで、事業承継に支障が出ることがあります。この民法特例を活用することで、先代経営者から後継者に贈与等された自社株式・事業用資産の価額について、遺留分に関する各種合意が可能となります。

所在不明株主に関する会社法の特例

所在不明株主に関する会社法の特例とは、所在がわからない株主への手続き時間を5年から1年へと短縮できる制度です。

事業承継ファンド

中小企業基盤整備機構は、ファンドから投資を希望する中小企業経営者に、ファンドに関する情報提供や投資交渉に向けた経営計画・資金計画の作成などをサポートしています。

事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例

他者から事業承継を行うために、事業を譲り受ける場合に、不動産の権利移転等に際して生じる不動産取得税を軽減することができます。不動産の所有権移転の登記における通常の税率は2.0%ですが、本特例が適用された場合、条件により0.4%に軽減されます。特例の適用には、経営力向上計画を策定し認定を受けるなど、適用対象や適用期間、対象資産などの要件を満たす必要があります。

事業承継税制に係る特例承継計画の提出期限が2年間延長

事業承継によって、次世代に株式や資産を相続する際、優良な企業ほど、相続税・贈与税の負担が大きくなってしまいます。そこで、贈与税・相続税の納税猶予を受けられる制度として、事業承継税制が2009年に創設されました。
この制度を活用することで、事業を引き継ぐ際の後継者の負担を軽減でき、さらに条件を満たせば実質税負担をせずに事業承継が可能となります。事業承継を考えている経営者は、活用を検討したいところです。
しかし、コロナ禍となった2020年度以降、活用件数が減少しており、事業承継の検討が遅れているとされていました。
そして、2024年度税制改正により、事業承継税制に係る特例承継計画の提出期限は2年間延長され、2026年3月31日までとなりました。(事業承継税制の対象となる贈与・相続の期限は2027年12月31日のまま)
事業承継税制は、一定の手続きが必要ではありますが、条件を満たせば、税金が免除されたり、猶予されるため、経営において大きなメリットとなります。ただし、途中でやめると利息が発生したり、M&Aを行うと猶予が取り消しになるなどの注意すべき点もあります。
事業承継税制を活用するためには、先代経営者、後継者、会社に求められる要件があり、詳細については、国税局のホームページ「法人版事業承継税制」を参照ください。

不動産賃貸業で事業承継税制を適用するためには

事業承継税制は、資産管理会社には適用されないと規定されています。資産管理会社とは、総資産のうち特定資産の割合が70%以上の資産保有型会社と総収入のうち特定資産からの運用収入が75%以上の資産運用型会社に大別されます。
不動産賃貸業は、資産管理会社に該当することが多く、事業承継税制の適用を受けにくいのが実情ですが、「3年以上業務を継続して行っている」「事務所を所有または賃借している」「従業員(社会保険に加入している)を常時5名以上雇用している」ことを条件に、適用することができますので、専門家に相談しながら進めてください。

2025年以降、多くの中小企業の経営者が後期高齢者となり、事業承継の問題はますますひっ迫してきます。優良な中小企業が持つ貴重な経営資源を将来に引き継ぐためにも、国が提供するさまざまな支援を活用し、スムーズな事業承継を早急に検討する必要がありそうです。

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