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コラム vol.505
  • 賃貸住宅経営のポイント

「不動産の組み換え」を効果的に活用する

公開日:2024/05/30

「不動産の組み換え」とは、収益性や相続対策などのために、「現在所有している不動産を売却して別の不動産を購入すること」です。例えば、郊外で経営している賃貸住宅などの不動産を売却して、都市部の不動産などを購入することで、より高い収益や相続時の対策として分割のしやすさを求めようとすることです。

「不動産の組み換え」のメリット

資金面

不動産を新たに追加購入するケースと異なり、購入資金に売却資金を充当することができるため、借入金を減らすことができ、資金的なリスクが緩和されることがメリットのひとつでしょう。
また、事業用の土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得し、事業用として活用された場合は、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができる「事業用資産の買替えの特例*」を活用することもできます。*適用要件がありますので、税理士にご確認ください。

収益面

現在行っている賃貸事業が、収益性の面で問題があったり、将来の収益が見込みづらいという判断ができる場合は、所有する不動産を売却し、収益性が期待できる不動産を購入することで、収益面の改善につながる可能性があります。あるいは未利用地で適切な土地活用が行いにくいと考えられる場合は、有効活用が見込める土地を購入することで、結果的に土地の有効活用ができることになります。また、更地を売却して賃貸不動産を購入することができれば、相続時の相続税評価額の面でもメリットを受けることができるでしょう。
人口減少が顕著な地域では、将来的な不動産の下落リスクが高くなりますので、人口の推移予測や地域周辺の開発計画を注視しておく必要があります。逆に人口減少が少ない地域では、不動産価格の低下リスクも少なくなる傾向にありますので、そうした地域の不動産を購入することは、将来に向けて資産価値を守るためのひとつの手段であると言えるでしょう。
ただし、不動産投資にはさまざまなリスクが伴いますので、信頼できるパートナーに相談しながら進める必要があります。

相続人の負担軽減

収益性の低い不動産は相続人にとっても大きな負担となる恐れがあります。賃貸住宅を相続した場合、借家権割合分の評価額が下がりますが、「賃貸割合」を乗じて借家権割合を計算するために、ご入居者がいなければ、評価額は下がりません。また、賃貸住宅は、ご入居者がいない状態であっても、固定資産税や都市計画税といった税金が発生します。建物の老朽化に伴い、建物や設備の修繕や草木の手入れなど、日々のメンテナンスも必要です。
所有する建物に自分が住むことなく、他人に貸すこともなければ、収益を生むどころか損失だけが増加します。効果的に活用できていない不動産は、相続人にとっても大きな負担となってしまいます。

空き家リスクの回避

ご入居者のいない状態が続き、空き家の状態になってしまうと、治安や景観の悪化など近隣への迷惑となるばかりか、特定空き家に指定されるという恐れがあります。特定空き家に指定されると、自治体から状態を改善するよう助言・指導され、さらに改善されない場合は、改善の勧告や命令を受ける可能性があります。

不動産の組み換えで注意すべき点

将来の価値を考慮

資産組み換えで不動産を購入する場合は、現在の不動産価値だけではなく、将来的に見込める収益を検討することが必要です。「地価が上昇傾向にある」「自治体の政策の評価が高く、人口が増加傾向」「人気の大学があり、流入人口がある」「地域開発が積極的である」といった地域は、将来的な資産価値も高くなると予測できるでしょう。

分割のしやすさも考慮

不動産を相続する際の「もめる」原因のひとつは、「分割のしにくさ」です。特に不動産がひとつだけで、相続人が複数人いる場合など、どのように分割するかは大きな問題です。できることなら、被相続人が生前のうちに、何らかの対策を講じておくべきでしょう。
例えば、相続人が3人いる場合、賃貸住宅が2棟のみのケースだと、分割はかなり難しくなりますが、規模は小さくなっても3棟の賃貸住宅から成る不動産に組み替えておくことができれば、分割はかなり容易になるでしょう。
分割のしやすさだけを考えれば、現金や株式等の有価証券のほうに良さがありますが、現金は額面がそのまま相続税の課税対象となってしまいますし、有価証券も課税時期の最終価格によって評価されてしまうため税務対策にはつながりません。

早めの対策が重要

「不動産の組み換え」は、収益面でも相続対策の面でも、ケースによってはメリットもあります。しかし、不動産を売買するときのコストも少なくなく、簡単に決断できるものではないでしょう。
現在の収益状況や評価額、未利用地であれば活用の可能性、固定資産税などの税金などを考慮したうで、組み換えによる将来のシミュレーションを適切に行うことができれば、冷静な判断もしやすくなるはずです。
特に、相続を控えている場合は、相続人へのスムーズな資産の承継、相続後の負担の少なさなどを考慮し、負の遺産とならないように早めの対策が必要ではないでしょうか。

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