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コラム vol.503
  • 賃貸住宅経営のポイント

キャッシュフローのシミュレーションを行う

公開日:2024/04/26

キャッシュフローを直訳すると「現金の流れ」ですが、不動産経営においては、家賃収入から経費を差し引き手元に残るお金(キャッシュ)のことを指します。手残り現金とも言いますが、簡単に言えば不動産オーナーの実質的な収入のことです。
不動産経営における経営指数としては、利益を計算したり、税金を計算したりする「損益計算(PL)」と、実際の現金の流れを計算する「キャッシュフロー」の2つの計算を行います。
帳簿上で利益が出るからと安心してしまい、実際にはキャッシュが不足してしまうということは、賃貸住宅経営を行う上で起こりうることです。
また、将来、予測できないリスクが起こる可能性もあります。将来まで見通したキャッシュフローをしっかりとシミュレーションした上で全体の賃貸住宅経営計画を組み立てることが重要です。

損益計算とキャッシュフローの違い

不動産賃貸事業を行う際には、必ず、家賃収入、減価償却費用、管理費用、経費、税金など、取引の発生ベースでの収支を計算した帳簿上(損益計算)の数字が存在します。そして、取引の発生ベースとは違い、実際にキャッシュの動きとなるキャッシュフローがあります。
帳簿上の数字は、取引が成立した時点を基準にして収入や費用を計上したものです。成立の時期をベースにしていますので、多くの場合、実際のキャッシュの流れとは異なります。
損益計算の数字を管理することは、賃貸住宅経営として必須ですが、帳簿上の数字とキャッシュフローは異なることを認識しておく必要があります。
損益計算上は利益として出ていても、入金されていなければキャッシュはなく、帳簿上の数字だけを見ていると、キャッシュが不足するという事態に陥りかねません。

損益計算上の数字とキャッシュフローが異なるポイントのひとつは減価償却費です。減価償却とは、建物や設備等、長期にわたって使用できるものは、取得にかかった費用を一定期間で按分して経費計上することです。建物や設備等は老朽化しますので、資産価値の低下を数値化する必要があり、その資産価値の低下にあわせて経費計上します。
減価償却費は、住宅用の木造は22年、鉄筋コンクリート造は47年等、用途や構造によって、法定耐用年数として決められています。

賃貸住宅を建築(または購入)すると、建物の耐用年数に応じて、毎月の経費として減価償却費を計上します。つまり、損益計算上では減価償却費が経費として計上できますので、帳簿上では利益が減少し、所得税などの負担が少なくなり、キャッシュフローが良い状態が続きます。
ところが、長期的な不動産賃貸事業のケースによっては、元金返済(経費にできない)が減価償却費(経費にできる)を上回ってしまう場合(デッドクロスと呼ばれます)があります。こうなると、損益計算上では、利益が増え、所得税などの税金が増加し、キャッシュフローが悪化してしまうことがあります。

キャッシュフローを計算する

損益計算を行うにあたっては、まず、家賃収入、礼金、敷金の償却。次に経費(清掃費、共用部分の電気代、リフォーム代)、支払い金利等があります。
キャッシュフローでは、税引き後利益にローンの返済額や減価償却費を計上します。計算式は次のようになります。

「税引き後利益」―「返済元金」+「減価償却費」

  • ・「税引き後利益」は確定申告後、税金を支払ったあとに残る利益(他の所得がある場合は、この限りではない)
  • ・「返済元金」は金融機関から借り入れしている場合の返済金

確定申告で経費になるのは利息だけで、返済元金は経費になりませんが、実際には、残った金額から返済しますので、「税引き後利益」からマイナスの計算をしています。
減価償却費は、損益計算上では経費として計上しますが、実際には資金の流出がありません。そのため、キャッシュフローを計算する場合はプラスします。

キャッシュフローを重視する理由

市場の評価が上がり、事業の拡大につながる

キャッシュフローが良い賃貸住宅は、市場の評価も上がり、売却を検討する際にも、有利に進めることが可能でしょう。その不動産から得られる収益が高く評価され、「収益価格」として売却価格に反映されやすくなります。そのため、将来的に不動産ビジネスを拡大したいと考える経営者にとっては、キャッシュフローが良くなることで、次の賃貸住宅の資金や初期費用などに充当することも可能で、将来的に事業拡大を行いやすくなるでしょう。

さまざまなトラブルにも対応可能

不動産賃貸経営では、災害や事故、設備の故障等、予想外の出費が突然発生することがあります。キャッシュフローが良い場合、さまざまなトラブルやアクシデントにも対応ができるでしょう。

ローンの繰り上げ返済も可能

キャッシュフローが良くなり、資金に余裕ができれば、ローンの繰り上げ返済も検討することができます。返済期間が短縮できれば、総返済額の減少にもなります。

損益計算上ではプラスだと思っていたのに、税引き後キャッシュフローで見ると実はマイナスだったというケースは少なくありません。
キャッシュフローを正確に把握することで、経営状態の適確な分析ができ、これからの賃貸住宅経営において、自己資金と借り入れのバランス、コストや経費の問題等、経営に必要な知識も身についていくはずです。

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