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コラム vol.478
  • 不動産市況を読み解く

国土交通省が「長期譲渡所得100万円控除制度の利用状況」を公表低未利用土地の利活用は活性化しているか

公開日:2024/02/09

国内にある、「低未利用地」を効果的に活用することは、国土資源の少ない日本にとっては、とても重要なことです。
国は増加傾向が止まらない全国の低未利用地の活性化のために、いくつかの施策を行っていますが、その中のひとつである「長期譲渡所得100万円控除制度」の利用状況が国土交通省より公表されましたので、この資料から、現在の低未利用地の活用状況を見てみます。

低未利用土地の適切な利用・管理を促進するための特例措置

全国的、特に地方部を中心に、貴重な土地が効果的に活用されていない空き地・空き家が増加する中、土地の保有者から新たに利用したいと考える人への土地の譲渡を促進するため、個人が保有する低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の金額から100万円を控除するという特例措置があります。
令和2年7月1日から開始された本制度ですが、令和5年度の税制改正において、積極的に地域ぐるみで低未利用土地対策に取り組む地域のメリットが大きくなるように、以下のような拡充が行われました。

拡充の内容

  • ・現行の措置を3年間(令和5年1月1日~令和7年12月31日)延長する。
  • ・以下の土地は譲渡価額の要件につき上限を800万円に引き上げる。
  • ①市街化区域又は非線引き都市計画区域のうち用途地域設定区域に所在する土地
  • ②所有者不明土地対策計画を策定した自治体の都市計画区域内に所在する土地

国土交通省の資料をもとに作成

この拡充措置によって、都市部地域を中心に対象が広がり、500~800万円の土地取引のうち約7割をカバーすることになります。また、自治体においても、当該計画を策定することで、都市計画区域内全体で上乗せ措置が可能となります。

そもそも、「低未利用地」ということは、売却ができたとしても低額の場合が多く、しかも、空き家などの建物がある場合は、測量費、解体費などの譲渡費用の負担も大きく、さらに譲渡所得税がかかるということで、何もせず低未利用土地(空き地)として放置されているケースが散見されていました。
そこで、売却時の負担感を軽減することで、土地の新たな活用者に対する譲渡を促進することになったわけです。
新たな所有者が生まれれば、適切な利用や管理が行われる可能性が高まり、ひいては、土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化につながるかもしれません。さらに、所有者不明土地の発生予防にもつながるでしょう。

本制度の利用状況および適用事例

国土交通省不動産・建設経済局「低未利用土地100万円控除利用状況について」によれば、2022年(令和4年)1月から12月までの、自治体による低未利用土地等確認書の交付実績は4,842件でした。譲渡前の状態については、空き地が55%、譲渡後の利用については、住宅が62%でした。
その中でいくつかの事例が紹介されています。

【活用事例①】3人の地権者が所有する低額の狭小地2つと、共有の私道を一括譲渡

単体の売却を行った場合は、将来住宅を建てる際に接道要件を満たさず、建築確認を受けることができない可能性があったが、本特例措置により売却後に手元に残る額が増えたことが売却のインセンティブとなり、宅地建物業者のコーディネートによって、まとまった事業用地として一括譲渡された。

国土交通省資料より作成

【活用事例②】宅建業者の紹介で売却

相続により老朽化した空き店舗を取得したが、相続人は遠方に居住しており、管理が負担になっていた。そこで宅建業者に空き家バンクの登録の相談をしたところ、宅建業者の紹介により購入者が現れた。

【活用事例③】地域活性化のために活用

空き家を活用しながら地元地域を元気にするべく事業展開(ゲストハウス・飲食店など)を図っていた団体が「他事業との相乗効果で市内活性化に寄与したい。地域全体の活性化につながれば」と考え購入。ライダーのためのガレージハウスとして改修し、景観の改善や地域活性化に寄与した。

【活用事例④】ドックランを併設したカフェとして利活用

耕作放棄地となっており、未活用の状況であったが、不動産業者の仲介により、個人に売却することに成功。譲渡後は、ドックランを併設したカフェとして利活用した。

【活用事例⑤】所有者不明土地に住宅を建築

所有者が長く不明であり、適切な管理がされていなかったため、崩壊寸前の危険空き家となり、地域の問題になっていた。自治体が所有者を探し、改善を依頼。所有者が本特例措置を知ったことが売却のきっかけとなり、所有者が建物を除却し売却後、買主が住宅を建築した。

国土交通省資料を要約

こうした、低未利用地の所有者への促進取り組みだけではなく、買い手に向けた促進の取り組みや、売り手と買い手のマッチングを円滑化するための取り組みもあります。
低未利用地を活用したい人(買主)に向けては、移住支援制度子育て世帯や三世代同居・近居世帯、空き地・空き家バンクを利用した方を対象として、住宅の購入、新築、リフォーム費用の一部補助を行う自治体があります。
マッチングを円滑化するための取り組みとしては、「所有者不明土地利用円滑化等推進法人」として、市町村が、地域で所有者不明土地や低未利用土地等の利活用に取り組む特定非営利活動法人や一般社団法人等を指定することができます。これら法人が地域づくりの新たな担い手として、市町村の補完的な役割を果たすことが期待されています。

低未利用地を所有する不動産オーナーがこうした制度を活用することで、土地の有効活用が広がることを期待したいものです。

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