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コラム vol.473-3
  • 賃貸住宅経営のポイント

賃貸住宅経営の基本(3)賃貸住宅経営戦略の基本は「4P+P」

公開日:2024/02/29

賃貸住宅を建設し、運営・管理していくことは経営であり、事業です。ですから、事業を成功させるためには、戦略が重要となります。収益を上げるには適切な戦略を策定し、具体的な施策を計画し、運営していくことが必要になります。
戦略策定に役立つのが、マーケティングの考え方である「4P」です。賃貸住宅にどのようにあてはめて考えていけばいいのかを紹介します。

賃貸住宅経営の4Pとは

4Pとは、「Place(プレイス:流通)」「Product(プロダクト:製品)」「Price(プライス:価格)」「Promotion(プロモーション:販売促進)」の頭文字をとったもので、もともとマーケティング戦略を立案、実行する際に用いられるものです。 これらの要素を元に、市場分析から得た情報に対して自社の強み、弱みなどを考慮しながら戦略を立てていくわけです。この考え方は、賃貸住宅経営にも当てはまります。 賃貸住宅経営の4Pでは、Place(プレイス:立地)、Product(プロダクト:施設・設備)、Price(プライス:家賃)、Promotion(プロモーション:広告活動)と置き換えて考えます。

Place

賃貸住宅経営で最も重要だとされているのが立地です。ほとんどの人が「駅から近い」「商業施設に近い」「緑が多い」「学校が近い」など、その立地条件を考慮して賃貸住宅を決めます。特に、新築の賃貸住宅を建てる場合、「どこに建てるのか」は非常に大きな問題です。
単身者向け、ファミリー層向け、高齢者向けなど、ご入居者の特性によって望まれる条件は変わってきますので、立地を考えることは、賃貸住宅経営の戦略に直結します。後述しますが、どのような人をご入居者として考えているのかで、間取りや設備も変わってきますので、立地とご入居者特性はセットが考える必要があります。
単純に駅から近いなどの利便性だけを求めてしまうと、当然人気も高く、競争相手も多くなり、収益的なメリットが少なくなってしまう可能性もあります。そのエリアの特性を把握し、どのような賃貸住宅に対するニーズがあるのかを検討しながら、具体的な場所を選ぶことが重要となります。

Product

Productは施設建物、設備を指します。賃貸住宅を選ぶ際には、ご入居者にとって必要不可欠な要素である、外観デザイン、間取り、位置(階数、方角)、設備(バス・トイレ・キッチン・収納・バルコニーなど)、駐車場・駐輪場のスペースなどの条件を吟味することになります。
それぞれのクオリティが高ければ、募集も進み、ご入居者の満足度も向上し、長く住んでもらえる可能性も高まるでしょう。特に、新型コロナウイルス感染拡大から在宅勤務が増え、いわゆる部屋時間が増加し、部屋の設備のクオリティにこだわる人が増えたのも事実です。
ペット可や大きなガレージが付随するような個性的な賃貸住宅も、Productの要素となります。

Price

Priceは家賃です。一般的に、部屋を探す際、まず「どこでいくら以内」といった探し方をします。最初に立地と予算のバランスを考えるわけです。当然、敷金や礼金も予算に含まれます。 賃料には、決まった金額というものはなく、あくまで相場ということになりますので、オーナーとして賃料を決める際には、まず、近隣で同様のタイプの賃貸住宅の家賃がどのような状況なのかを把握することから始めた上で、賃料を決定することになります。
また、不動産投資の出口戦略を考えた場合、空室率を気にするあまり、家賃を下げて入居対策を行うのは、資産価値という点から、あまり良い施策ではないかもしれません。

Promotion

Promotionにおいては、数十年前の賃貸住宅の決定プロセスとはまったく様相が異なっているかもしれません。以前は、不動産会社に行き、資料を吟味しながら見学する賃貸住宅を選んでいましたが、今ではまずインターネットである程度の見当をつけたうえで、確認のために実際に見るという流れになっています。
ポータルサイトの活用、さまざまなSNSの活用、また360度カメラによる部屋の細部まで見ることができる仕組みや動画での紹介など、現在はさまざまな手法をつかってよりリアルに近い内容がインターネット上で展開されています。

ご入居者の募集と同時に忘れてはならないのが、空室率を最小限に抑えるための施策です。近年の人口減少エリアにおいては、今後は供給過剰になりがちで、その場合、空室を最小限にすることが求められます。
空室を最小限に抑えるためには、ご入居者にできるだけ長く住んでもらうことが必要です。かつて、入居時に何カ月もの礼金が通常だった時代では、ご入居者の回転は速いほうが良いという考え方もありましたが、現在は、礼金なしの場合も多く、ご入居者が長く住んだほうが、修繕費用や仲介手数料などの費用を考えれば、収益面で有利なケースが増えています。
賃貸住宅経営において、入居者に長く住んでもらうための活動を「テナントリテンション」と呼びますが、ご入居者にいかに長く住んでもらうかを考えていくことはとても重要なことです。

もうひとつの「P」Person

賃貸住宅経営で重要なのは「いかにご入居者に選んでいただくか」ですが、同時に、どのような人に入ってもらいたいかを考えるのも重要なことです。
地域特性や周辺環境によってある程度の予測はできますが、競合となる賃貸住宅の状況、今後起こりそうな周辺環境の変化を予測しながら、どのご入居者層に向けた賃貸住宅にするのかを考える必要があります。
たとえば、賃貸住宅は「必ず駅近でなければならない」ということではありません。家族構成や年齢、趣味などによって、学校や病院、商業施設など、近隣に必要な施設や環境は変わりますし、住まいへの意識やライフスタイルによって求める間取り、外観デザイン、設備も異なります。
求めるご入居者像が明確で、その人たちのニーズが反映されている賃貸住宅は、たとえ対象者が少なかったとしても、「私にぴったりの部屋だ」と感じてもらうことができれば、選ばれる賃貸住宅となります。
また、ご入居者の特性を「広く、浅く」設定したばかりに、入居いただいたあと、契約内容でもめたり、入居者同士でトラブルが起きたりすることも珍しくありません。ご入居者に満足いただき、長く住んでいただくためにも、「どのような人に入居してもらいたいか」を明確にし、その方々が満足する施策を取り入れる必要があるでしょう。

現在賃貸住宅経営を行っているオーナーも、空室率や収益に問題を感じることがあれば、原点である「4P」に立ち返り、改めて分析して見ることも必要かもしれません。賃貸住宅経営においてもマーケティングの観点からの分析は非常に重要です。

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