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コラム vol.455
  • 不動産市況を読み解く

2022年~2023年前半の新設住宅着工戸数を分析する

公開日:2023/06/30

POINT!

・2023年4月の住宅着工戸数の「総計」は、東京都11,094戸、全国67,250戸で、どちらも3カ月連続でマイナスとなった

・「持ち家」は、東京および全国で苦戦「貸家」は、東京・全国でプラスが多く見られ、賃貸住宅投資(建築)の勢いはとどまっていないことがうかがえる

・「分譲住宅」は、都市部でのマンション適地不足により、需要はあるものの供給不足が続いている

新設住宅着工戸数は、国土交通省が集計・公表する建築統計の中の住宅カテゴリーの統計調査です。この建築統計調査は、我が国における重要な統計「基幹統計」の一つとされており、政策決定などにも使われます。新設住宅着工戸数は住宅市場・住宅産業全体における先行指標とも言われ、業界内外から注目を集めます。

全国のデータと東京都のデータを併せて見ることが必要

住宅建築は、建築主が知事に提出する確認申請からスタートする流れとなります。そのため、着工数は、まず都道府県がその数を把握し、それを国土交通省が集計し全国合計値を公表。各都道府県でも、その地域の数字が公表されています。これまで「土地活用ラボ」で紹介した新設住宅着工戸数の動向分析は、全国の数字を用いたものでした。全国の着工数動向は、各地域でのプラスマイナスを打ち消し平準化する傾向にあり、全体感がつかめます。
一方、住宅着工戸数において一定の割合を占める東京都の数字は、都市部の動向を色濃く表します。また、地価などで顕著なように、不動産市況は東京都の動向に同調するように全国の主要都市へ波及していく傾向が見られます。こうしたことから、全国と東京都のデータを併せて見ることで大まかな動向がつかめます。
東京都の着工戸数の動向は、全国の先行指標にもなりえます。例えば、消費者物価指数(CPI)は「全国」と「東京都区部」の2つのデータが公表されます。先行して東京都が「東京都区部」の数字を公表し、その数週間後に総務省が全国のデータを公表しています。東京都区部のCPIデータは、「先行指標として」と「都市部での比較的高年収層の動向として」の2つの注目点があるとされています。
※ただし、東京都区部消費者物価指数は、全国消費者物価指数に同月分が数週間先駆けて公表されます。まさに「先行指標」という感じですが、着工戸数では動向が月の単位で遅れて見られます。

こうしたことから、今回は東京都にフォーカスして分析してみたいと思います。

東京都の住宅着工戸数の動向

東京都における2023年4月の住宅着工戸数(総計)は11,094戸、前年同月比で-5.7%となり、3カ月連続でマイナスとなりました。全国では67,250戸、前年同月比-11.9%、こちらも3カ月連続でのマイナスです(東京都の割合は16.5%)。
利用関係別に見ると、自己所有の土地に住宅を建築する「持ち家」は、前年同月比-23.2%で999戸となり、15カ月連続の減少となりました。
全国では18,597戸、前年同月比-11.6%で、こちらは17カ月連続のマイナスです(東京都の割合は5.4%)。東京都は持ち家建築が相対的に少ないため、前年同月比のブレ幅が大きくなりますが、それにしても999戸という数字はかなり少ないと言えます。
主に賃貸用住宅である「貸家」は、東京都では前年同月比+6.0%の6,282戸で、2カ月連続の増加となりました。全国では28,865戸、前年同月比-2.8%で、こちらは26カ月ぶりのマイナスとなりました(東京都の割合は21.7%)。全国では2年以上もの間、前年同月比プラスでしたが、4月はマイナスとなりました。その一方で、全国の中でも割合の高い東京都ではプラスとなっており、賃貸住宅投資(建築)の勢いはとどまっていないことがうかがえます。
東京都の「分譲住宅(分譲マンション+分譲戸建)」は、前年同月比-15.5%の3,809戸で、3カ月連続の減少となりました。そのうち、分譲マンションは前年同月比-26.6%の2,196戸、分譲戸建ては前年同月比+2.6%の1,553戸でした。 全国での分譲住宅(合計)は19,701戸、前年同月比-21.8%となっています(東京都の割合は19.3%)。分譲マンションでは、都市部でのマンション適地不足により、需要はあるものの供給不足が続いているようです。

全国の新設住宅着工戸数の動向と2023年年間の見通し

次に、2022年1月から2023年4月までの全国の新設住宅着工戸数の動向を見ておきましょう。

図:2022~2023年4月 新設住宅着工戸数

国土交通省「新設住宅着工件数」より作成

前ページの図を見れば、「持ち家」が苦戦していることが明白です。前年同月比マイナスは2021年12月以降17カ月連続。2022年6月以降は、(2023年1、2月を除いて)前年同月比2ケタのマイナスとなっています。一方、賃貸用住宅建築の「貸家」は、2023年4月に26カ月ぶりに前年同月比マイナスとなりましたが、不動産投資熱の高さがしばらく続く見通しですので、貸家着工戸数の前年同月比マイナスは一時的なものと思われます。貸家着工戸数は、今の勢いが続けば2022年の34.5万戸を超え、35万戸台の後半36万戸近くまで伸びる可能性もあります(ただし、日銀の金融緩和政策の変更があれば別です)。
2023年の年間の新設住宅着工戸数(総数)は、低迷の「持ち家」、適地不足の「分譲マンション」が大きく影響すると思われます。

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