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コラム vol.443
  • 不動産市況を読み解く

土地活用での「利回り計算」はどこまでシビアに行うべきか?

公開日:2023/02/28

土地活用として賃貸住宅を建築されるきっかけは、「遊休土地の活用」の方が多いと思いますが、「金融機関から借入して建築する」という面から考えれば、「不動産投資」とも言えます。
「不動産投資」ということになれば、利回りは誰もが気にするポイントです。利回りの計算方法は色々とありますが、代表的なものとして、表面利回り(グロス利回り)と実質利回り(NOI利回り)があります。今回は、利回りに関する解説とその活用方法について紹介します。

利回り計算はなぜ行うのか、その活用方法

利回り計算を行う理由は、主に2つです。
1つめは、共通のモノサシ(指標)を持つことで、不動産投資を行う際の判断材料になること、2つめは、他の投資商品(例えば株式など)と比較する際の指標となることです。

土地活用では、自身が所有している土地の活用という側面が強いため、利回りの数字にあまりこだわらない方もいるようです。しかし、一般的な不動産投資では、「物件選びの判断基準」として、ほとんどの方が「〇%以下の物件には投資をしない」という投資可否や、あるいは「A物件は〇%で、B物件は〇%だからAにしよう」という比較判断の根拠として活用されています。
また、不動産投資における利回り計算を、よりシビアに行えば、他の投資商品との比較が明確になります。
そのため、利回りを活用する際には、

  • 1)共通のモノサシとして使えること
  • 2)ざっくりした計算とよりシビアな計算方法の両方をおさえておく

この2つが重要なポイントとなります。

表面利回り計算と空室想定

表面利回りとは、賃料総額を投資総額で単純に割ったもので、一般的には「賃料を12倍(12カ月分)し、投資金額で割る」という計算式で算出します。

年間収益÷投資金額=表面利回り

ここで、物件比較で使う際には、「月々の家賃や管理費など年間収益には、何が含まれているか」、また「投資金額には、建築費だけでなく諸経費など含めるかどうか」などを確認し、共通にしておかなければ「モノサシ」としては不適合ということになります。 「土地活用」で一般的な所有土地に建築する場合は、建築費だけでなく、土地の現時点での想定取得価格を加えるべきでしょう。想定取得価格は、現時点での周辺相場から判断するか、固定資産税評価額から割り戻す(一例として÷0.7)方法があります。
また、よりシビアに計算する時には、空室想定を織り込む必要があります。上の式では、単純に賃料を12倍(12か月分)していますので、この式では一年間を通じて満室想定ということになります。例えば、年間平均約5%程度の空室が見込まれる場合(2年ごとに退去などでの1か月の空室想定)は、賃料×12か月に95%を掛けて、それを購入金額で割るという計算がより現実に近いものとなります。また、年数が経てば当然空室可能性や賃料下落可能性が高まるので、注意が必要です。

実質利回り(NOI利回り)

表面利回りの計算では、必要経費・費用などは考慮されていません。これらを含めた利回りの考え方が実質利回りです。
賃料等収入合計から必要な経費等を引いたものをNet Operating Income といいます(頭文字をとってNOIと称しています)。このNOIを投資金額で割ったものが実質利回り(NOI利回り)で、一般的には、実質利回りの計算式が、収益力を見定めるバロメーターとして使われています。

(年間収入-年間支出)÷投資金額=実質利回り

ここでも共通のモノサシとして注意しておきたい点は、先に述べた表面利回りで共通にしておくべき「年間収入の範囲」と「投資金額の範囲」に加えて、「経費をどこまで含めるか」という点です。これら3つを合わせておかないとモノサシとして活用できず、正確な判断はできません。
さらに、他の投資商品との比較において(上記の2つ目での活用)は、広く費用を見ておくと良いでしょう。管理費や修繕積立費、ローン金利、保険、税金など、できる限りかかる費用を見込んでおくことで、よりシビアな収益力を判断することができます。
また、経営計画の中の収入計画を立てる際には、表面利回りの時にも述べたように常に満室ということはありませんので、「空室率」を読むことや、経年に伴う「賃料の下落」の見込みを盛り込まなければなりません。どれくらい見込むべきかについては、立地やその時々の不動産市況などにより異なりますが、5%~10%程度見込むと良いでしょう。
利回り計算をできる限りシビアに行っておくことで、経営判断のための有効な指標となるでしょう。

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