再び東京圏集中傾向に!人口移動報告を読み解く
公開日:2023/02/28
2023年1月30日に、総務省から2022年1年間の人口移動報告が発表されました。
この調査は住民基本台帳に基づき、都道府県や市町村を跨ぐ転入・転出といった移動者数を集計したものです。
人が地域を跨いで移動する際には、通常住まいの移転が発生します。また、人口の増減は、住まいだけでなく商業施設や賃貸住宅の稼働状況にも影響を与えます。土地活用の方法に大きく影響を与える人口移動の状況を解説します。
地域をまたぐ移動が再び活況に
この「住民基本台帳人口移動報告」(総務省)によれば、2022年1年間に都道府県を跨ぐ移動をした方は255万3,434人となり前年比+3.1%となりました。移動した方の対前年の実数をみれば、2019年は前年より+32,485人、2020年は-104,904人、2021年は+12,648人、2022年は+76,794人となり、都道府県を跨ぐ移動が活発になってきていることが分かります。
2020年3月ごろから新型コロナウイルス感染症の影響が広がり、最も移動の多い時期である3月末~4月にかけて、緊急事態宣言などが発出されて、人の移動が大幅に制限されたため、進学・就職などでの移動が激減しました。それから間もなく3年が経過、経済活動がもどり、マスク着用要請も緩和の見通しとなり、ようやく人の移動を含め正常化してきている様子がうかがえます。
転入者の状況
転入者の状況を都道府県別に見てみると、2022年の1年間に転入者が最も多かったのは東京都で約44万人、次に神奈川県約24万人となりました。埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県と続き、ここまでが10万人以上の転入者数となり、以上7県で全国の転入者の約56%となっています。2021年と比べて転入者が最も増えたのが東京都で約2万人(+4.7%)増えています。
また、転入者から転出者を引いた転入超過数(引き算がプラスの場合は転入超過、マイナスの場合は転出超過)について見てみると、転入超過は全国47都道府県のうち、11都府県で、最も多いのは東京都の約3.8万人、次に神奈川県の約2.8万人となっています。前年に比べ転入超過が拡大したのは4都府県で最も拡大したのは東京都(+3.3万人)で、逆に最も縮小したのは千葉県となっています。
リモートワーク移住は一服、都心回帰再び
こうしてみれば、千葉県の転入超過数の落込みは、2020~21年に多く見られたリモートワークの浸透により首都圏への移住傾向が落ち着いたものと推測されます。
東京都では2019年が約8.2万人の転入超過でしたが、2021年には約5,400人まで減少。2022年は2019年の半分くらいの水準にまで戻りました。東京23区(特別区)への流入は前年比で約2万人増加しており、都心への人口流入が復活していることもうかがえます。
少し広くみて、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)では約9.4万人の転入超過、2021年が約8万人でしたので、だいぶ回復したと言えそうです。
一時的に落ち込んだ、東京への人口流入、東京一極集中の傾向が再び加速してきたと言えるでしょう。
転出超過の多い地域
転出超過数をみると、最も多いのは広島県で9,207人、つづいて愛知県7,910人、福島県6,733人で、36の道府県で転出超過となりました。
中国地方最大都市の広島市、中部地方最大都市の名古屋市を擁する県が転出超過1位2位となっている状況です。特に名古屋市では2022年は外国人を含めて集計を始めた2014年以降初めて転出超過となりました。日本人だけでは+4,096人ですが、一方で外国人が-4,647人となったことが要因です。製造業が盛んな同地域において、新型コロナウイルス感染症の影響や円安の影響で外国人の流出が増え流入が戻っていないことが影響しているようです。
年代別の人口移動と賃貸住宅需要
最後に年代別の動きを見てみましょう。
全国の移動者を5歳刻みの年齢別でみれば、最も移動が多いのは20~24歳(約58.8万人)、次に25~29歳(約52.7万人)、30~34歳(約31.2万人)、35~39歳(約20.1万人)、そして15~19歳(約14.3万人)と続きます。このうち、20~24歳、25~29歳、30~34歳、35~39歳では2021年よりも移動者が増加しました。
年齢でみれば、都道府県を跨ぐ移動が最も多いのは22歳、次に24歳となっています。こうしてみれば、都道府県を跨ぐ移動の最大の理由は「就職や仕事に関すること」だと思われます。そして次は大学や専門学校などへの進学のようです。
下図は、2020・2021・2022年の東京都の年代別の転入者数を示していますが、こうした傾向がよく分かります。
図:年代別転入者数の推移(東京都)
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」より作成
就職や進学により都道府県を跨いだ移動を行う場合、これらの方々の多くは移動先では賃貸住宅に住みます。とくに仕事理由による移動が復活してきていることは、賃貸住宅需要には追い風になるかもしれません。