令和5年税制改正大綱を読み解く ~不動産投資、土地活用に関係する税制度の見直し~
公開日:2022/12/27
POINT!
・令和5年税制改正で、暦年課税における相続前贈与の加算期間が、3年から7年に延長される
・マンションの相続税評価の改正は見送られた
・大規模修繕を行ったマンションに対して、固定資産税の軽減に対する特例措置が創設される
・土地の売買に関する所有権移転登記等について、登録免許税の軽減措置が3年延長される
毎年12月に与党より公表される、翌年の「税制改正大綱」ですが、令和5年度分は、防衛費関連に伴う増税議論等について税調内部で大議論が起こったこともあり、例年よりもやや遅れての公表となりました。メディアの報じる話題は防衛費増に伴う税制改正(増税)のことばかりでしたが、ここでは土地活用や不動産、住宅、その他土地所有オーナーに関係があると思われる内容をいくつかピックアップして解説します。
生前贈与、前倒しの促進策
生前贈与の前倒し促進のために、贈与税に関する改正が行われます。
贈与税は、相続税回避を防ぐ意味合いから、相続税よりも税の負担水準が高く設定されており、生前贈与では、毎年課税する「暦年課税」方式と相続時にまとめて税を徴収する「相続時精算課税」方式の2パターンがあります。
「暦年贈与」は年110万円分(年:1月1日~12月31日)までの贈与が非課税(贈与税の基礎控除)となり、この範囲までなら、受ける側には所得税も住民税もかかりません。110万円を超える部分には課税(8段階の累進課税)されます。
ここでの110万円はもらう方をベースとします。父親・母親それぞれから60万円をもらうと、10万円分(60×2-110)には課税されます。また、贈与できる財産は現金だけでなく、不動産や株式(株券)等も対象となりますが、不動産や株式等はその時点での評価額で決まります。
現行制度では、死亡前3年間の贈与分は相続財産として扱われていましたが、この遡る期間が7年となりました。延長された4年分に関しては、総額100万円までは相続財産に加算されません。3年から7年への移行は段階的に行われ、令和13年(2031年)に7年となります。
「相続時精算課税」は、現行制度では、父母・祖父母から子・孫への贈与が合計2500万円以内なら、何度贈与しても贈与税はかかりません。しかし、超える部分には一律20%の税金がかかり、死亡時に合計贈与額を相続財産総額に加算して課税されます。不動産や株式などが、贈与時から相続時に値上がり(評価が上昇)している時には、贈与時の評価となりますので、こうした状況下では有利となります。
これまで、こうした制度を使うと少額の贈与でも税務署への申告が必要でしたが、改正後は110万円までは申告不要となります。
マンションの相続税評価は検討
2022年4月に最高裁判決が出て大きな話題となった、相続税におけるマンションの評価額について、「マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額に大きく乖離が見られるケースがみられる」このため、「相続税におけるマンション評価方法については、相続税の時価主義の下、市場価格との乖離をふまえ、適正化を検討する」と明記されました(令和5年度税制改正大綱の本文より)。
つまり、今回の税制改正では改正は見送られ、今後の検討ということになりました。あいまいなまま放置されると、どこまでが税効果の許容範囲なのかが分からず、また計画から竣工まで期間の長い不動産においては、「後だし」的な改正が行われると、大きな問題になる可能性があります。早期に指針を示して欲しいものです。
大規模修繕を行ったマンションの固定資産税の軽減
管理計画認定マンション、その他の一定の要件を満たすマンションについて、必要な修繕積立金が確保され、長寿命化に向けての一定の大規模修繕工事が実施された場合に、固定資産税を軽くする特例がスタートします。
具体的な軽減としては、当該マンションの建物部分について、大規模修繕工事が完了した翌年度分の固定資産税額を1/3を目途として、市町村の条例で1/6~1/2の範囲で減額されることになります。マンション管理士等が発行した証明書を添付し、大規模修繕工事完了後3カ月以内に申告することが条件となります。
老朽化したマンションが増える中、修繕積立金を適切に確保・管理することを要件とし、大規模修繕を普及させる狙いがあります。これは、2023~24年度の特例措置となっていますが、状況を鑑みれば延長される可能性が高いと思われます。
登録免許税軽減の延長
土地売買の時における負担軽減を行うこと、また低利用地の流通促進させることを目的として、土地の売買に関する所有権移転登記等に対する登録免許税の軽減措置が3年延長されることになりました(国土交通省の要望書では2年でしたが、3年となりました)。所有権移転に関する登録免許税は2%ですが、これが引き続き1.5%となります。また、信託登記に関する登録免許税は0.4%のところが、0.3%に軽減されます。
最後に
税については、個々の状況により適用されるかどうか異なりますので、必ず専門家にご相談ください。また、改正が度々行われますので、最新の情報を入手してください。