土地活用・賃貸物件経営における税の概略を理解しましょう!【3】賃貸物件の「経営」に関する税
公開日:2021/09/30
POINT!
・不動産所得は、収入から必要経費を引いた差分(利益)になる
・経費には、賃貸物件経営スタート時だけにかかるものと、毎年かかるものがある
・減価償却とは、建物の劣化に伴って減少していく価値分について、その減価(減る価値)分を経費として算入する会計処理
土地活用、賃貸物件経営における税の概略シリーズの3回目です。土地活用に関する税については以下の3つに分類することができます。ここまで、(1)(2)について解説しました。
- (1)不動産を取得(購入・建築)、あるいは取引した時に納める税金
- (2)不動産を所有しているとかかる税金
- (3)賃貸経営の収益にかかる税金
今回は、3回目として、賃貸物件を所有し「それらを貸して賃料収入を得る」という賃貸物件の経営に関する税についてお伝えします。
賃貸物件経営は、その名の通り「経営」を行うことです。そのため、一定期間(=年単位)での収益、つまり不動産所得(個人で行う不動産賃貸事業における所得は、事業所得とはいわず、不動産所得と呼ばれます)に応じて税金を納めることになります。
賃貸物件経営には予測=事業計画をしっかりと立てておくことが重要です。しかし、税に関しては、結果=企業経営でいう損益計算書が税のベースとなります。ここでは、損益計算書の元となる、
売上(=収入)と販売管理費(=経費)
の計上の仕組みについて解説します。
収入について
不動産所得は、収入から必要経費を引いたもの、つまり差分(利益)になります。
収入は、月単位の賃料(年換算では×12)に加えて礼金・更新費用、駐車場などがあればその賃料が含まれます。年単位の損益計算書に関することで重要なのは、「締め」の月の収入については入金ベースではなく、発生ベースで家賃計上を行うということです。ある年の年末12月分の賃料が例えば1月5日に振り込まれたとしてもそれは12月分ですから、12月分として計上するわけです。未収金があっても同様です(貸し倒れ引き当てなどに入れる場合もあります)。
礼金はや更新費用は、契約した年次の収入として算入します。しかし、敷金は預かり金ですので、収入にはなりません。ただし、敷き引き(一定額は退去時に差し引きます)という契約がある場合は、その分は契約した年次の収入に含めることができます。
経費について
経費は、該当物件の賃貸物件経営がスタートした際にだけかかるものと、ずっとかかるものがあります。
スタート時にかかるものは、登記費用(登録免許税)や不動産取得税、抵当権設定費用といった税にまつわる費用や物件取得のために仲介会社に依頼した場合の仲介手数料などがあります。費用として毎年考慮しておくものとしては、固定資産税・都市計画税(土地分+建物分)、管理委託費用、修繕関連費、保険料、ローン利息、そして建物の減価償却費用などです。また、入居者斡旋にともなう仲介手数料は、その都度かかります(毎年かどうかは入退去の頻度しだいです)。
これら必要経費は、締めの月(個人の場合は年末)までにその事が確定しており、業務が行われていれば、その年に計上することになります。修繕工事などの工事が終わっていて(まだ未利用の場合に限ります)、支払いが行われていない場合は、未払い費用として計上することになります。
利益の確定
こうして収入と経費の計上を行うと、利益が確定します。個人の場合、その他の収入(例えば、給与収入など)と合算を行い(これを損益通算と言います)、そこから各種控除がおこなわれ、税の算定基準となる「総合課税所得」が定まり、税を納める(あるいは還付される)ことになります。個人の場合において、還付される場合は、「所得税が軽減された」ということになります。
減価償却費について
建物などは、時間の経過とともに劣化していきます。それに伴い、減少していく価値分について、その減価(減る価値)分を経費として算入できます。これが減価償却費と呼ばれるものです。減価償却費は実際に支払う経費ではありませんので、これが大きな金額となると帳簿上の赤字(実際のキャシュフロー上での赤字ではありません。)となるケースも多く見られ、そうすれば、上記の損益通算により所得税などが還付される可能性が高まります。
もっと詳しく知りたい方は
今回の内容も、改定新版が8月下旬に発刊された「土地活用BOOK税金編」により詳しく解説されています。
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