賃貸住宅に暮らす人が増える地域の特徴とは?
公開日:2019/11/20
POINT!
・20年間で持ち家比率が最も下がったのは沖縄県
・アメリカ主要10都市では、持ち家比率が若干減少している
・日本では、所得の高低にかかわらず、賃貸住宅に住む人が増えている
賃貸住宅に住む人の割合は、総務省統計局「住宅・土地統計調査」によると、理論的には(100-持ち家比率)で示されます。この30年近く日本の持ち家比率は60%~62%前後で推移しており、大きな変化はありません。それはつまり、賃貸住宅に住む人の割合が概ね40%程度で推移しているということになります。
しかし、50歳代以下だけでみると、持ち家比率は下がっています。つまり、働き盛り世代では賃貸住宅に住む人の割合が増えているということになります。
ここ20年間の持ち家比率の推移を見ると日本全体では大きな変化はないのですが、都道府県別で見ると変化があります。総務省の公表データをもとに、持ち家比率の20年間の増減を都道府県別に分析してみましょう。
この20年で持ち家比率が最も下がった県はどこか?
図1は、1998年(平成10年)と最新調査年の2018年(平成30年)の持ち家比率を都道府県別に比較したものです。
持ち家比率のマイナス幅が大きくなった順、つまり賃貸住宅に住む人の割合が増えた順に並べています。
この20年間で最も持ち家比率が下がったのは、沖縄県です。1998年が55.3%、2018年が44.4%ですので、この間に10.9ポイントも下がっています。
前回調査(2013年)の時には沖縄県の持ち家比率は48.0%でしたので、この5年間で3.6%下がったことになります。前回調査で最も持ち家比率が低かったのは東京都で45.8%でした。今回の調査で、東京都は45.0%と少し下がりましたが、持ち家比率最下位ではなくなりました。
20年前1998年時点での東京都の持ち家比率は41.5%とダントツ1位の低さでした。しかし、この20年で見ると少し回復していることになります。(+3.5%)
表を見ると、この20年で持ち家比率が低下した(つまり、賃貸住宅に住む人の割合が増えた)のは26県、逆に持ち家比率が増えたのは21都道府県となりました。大まかな傾向として、持ち家比率が低い県、東京・神奈川・大阪などでは、持ち家比率が上昇しています。(例外は、沖縄県と福岡県)。逆に、持ち家比率が高い県では低下傾向にあります。
過去の記事「40代50代の持ち家比率が減少し続ける理由は何か?」
(図1)都道府県別 持ち家比率の比較(1998年・2018年)
※下落幅が大きい順 総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成
アメリカ主要都市の持ち家比率の変化
表1は、アメリカの10都市における、2009年と2015年の持ち家比率の変化を示したものです。リーマンショック直後である2009年にはこれら10都市における持ち家比率は50%台前半でしたが、2015年には40%台半ば~後半になっています。
(表1)米国主要都市の持ち家率
都市名 | 2009年 | 2015年 |
---|---|---|
デンバー(コロラド州) | 53.80% | 49.40% |
デトロイト(ミシガン州) | 55.40% | 49.40% |
メンフィス(テネシー州) | 54.60% | 49.20% |
タンパ(フロリダ州) | 55.50% | 49.10% |
ツーソン(アリゾナ州) | 54.50% | 48.80% |
ピッツバーグ(ペンシルベニア州) | 52.10% | 48.00% |
ボルティモア(メリーランド州) | 51.10% | 47.10% |
サンディエゴ(カリフォルニア州) | 50.60% | 46.90% |
ニューオーリンズ(ルイジアナ州) | 51.10% | 46.30% |
アトランタ(ジョージア州) | 51.30% | 43.60% |
ブルームバーグ(レッドフィン)
リーマンショックにより大きく景気が後退、その後約2年程度で経済・株式市況・不動産市況が回復し、リーマンショック前よりもはるかに景気がいい現在のアメリカで、格差が広がっていることが要因の1つといえそうです。
所得格差が広がれば賃貸住宅に住む人の割合が増えるのか?
都市部は地方都市に比べて、所得格差があることは周知の事実です。沖縄県は、高額納税者が多い反面、県民所得は日本で最低水準となっており、所得格差が大きい県です。
こう書くと、高所得者が所有する賃貸住宅に低所得の方々が住むという構図のように見えます。職を求めて地方各地から都市部へ労働人口が流入する、こうした方々が賃貸住宅住むイメージです。確かに、かつてはこうした事は多く見られました。そのため、都市部での持ち家比率はかなり低かったのです。しかし、現在では次のように状況が変わってきています。
たとえば、都市部では、高所得世帯で賃貸住宅に暮らす方々が増えています。また、都市部・地方都市に限らず、自宅を所有するという考え方が減りつつあります。
「大きなローンを抱えたくない」、「今後も職が・年収が維持できるか不安」という、「欲しいけど、買えない」という方ももちろんいるでしょう。しかし、最近では、「賃貸で充分」、さらに言えば、「積極的に賃貸住宅を選ぶ」という方が年収にかかわらず増えているようです。