企業の不動産投資とCRE戦略(2)
中小企業の不動産戦略における3つの要素
公開日:2019/06/28
企業の不動産戦略(CRE戦略)について
日本の企業のうち、どれくらいの企業がなんらかの不動産を自ら所有しているのでしょうか?
都市部では多くの企業は、オフィスや、店舗物件を借りて経営を行っていますが、地方都市にいけば、自ら所有する不動産で営む飲食店、小売店が多く見られますし、また中小企業においても、自社ビルを所有して経営を行っている例も多く見られます。
このような企業が関係する(所有する・使用する)不動産のことを、英語表記での頭文字をとってCRE(Corporate Real Estate)といいます。日本では2010年頃から「CRE」という言われ方が徐々に広まってきました。
CREとは「不動産そのもの」のことですが、不動産をどう扱うかについてのあり方は、CRE戦略という言い方が適切です。
不動産戦略の位置づけ
企業の不動産戦略(CRE戦略)を考えるときに大事な事は、不動産を不動産単独で考えないということです。具体的には、経営戦略の一環としての不動産戦略であり、財務戦略の一環としての不動産戦略でなければならないという事です。
公式で書くと下記のようになります。
- 経営戦略 × 財務戦略 × 不動産戦略
3つの要素を具体的に紹介します。
経営戦略とは、自社の強みをいかしながら、市場性、競合との関係を考慮しつつ、中長期の展開を考えることです。その際に、独自固有の長所があれば、強固な経営戦略が描けます。また、時流の変化に伴い、それに適合する柔軟さも求められます。次回以降に述べますが、この「時流適応の為の企業の変化」には時間を要することもあり、例えば、賃料収入のある不動産を所有しておけば、キャッシュフローの下支えにもなります。
財務戦略とは、借り入れ(主に金融機関から)や、株式などでの資金調達(エクイティ)をどう組み立てるかという事です。
そして、最後は不動産戦略です。オフィスビル、工場、店舗物件等の不動産を所有する、もしくは借りる、どちらが現状の自社には適しているのか?その際のお金はどうするのか?等の戦略です。
中小企業における資産線引きの曖昧さ
中小企業の場合、経営戦略が必要なことは言うまでもありませんが、中小企業の財務戦略=資金調達(主に、金融機関からの借り入れ)のパターンが、不動産と絡んでいる事が多いため、とくにこの2つの要素を絡めて考えることが重要になります。
中小企業の場合、経営者(創業者)の資産と会社の資産の線引きがあいまいなケースが多くあります。これは銀行から融資を受ける際に、担保や個人保証等の問題から、こうした曖昧な状況が生まれていることが多いのだと推測されます。
こうした点を考えると、中小企業の不動産戦略を上手く行うことは、会社と経営者の資産の線引きが明確になり、その先にある事業承継が行われる際にも、不動産を所有することは、有効な手段になりうるということになります。
中小企業においては、遊休土地を売却するという選択をせず、例えばそこに賃貸住宅を建てて、賃料収入を得ることで、安定した収入を増やすという経営戦略を選択する企業も増えてきました。このように、現在では「持たざる経営から、稼ぐ不動産を持つ経営」への転換事例も増えてきました。