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コラム vol.264-2
  • 土地活用税務コラム

税の仕組みを知れば、もっと土地活用は面白くなる(2)賃貸併用住宅に関する税金のメリット

公開日:2019/01/30

POINT!

・賃貸併用住宅は住宅ローンを組むことが可能

・住宅ローン控除の適用が可能な場合がある

・相続税対策につながる可能性がある

・固定資産税対策にもつながる

最近、新聞とテレビの広告で、立て続けに「賃貸併用住宅」の広告を目にしました。私は職業柄、賃貸併用住宅投資をしている方の不動産所得の申告や、相続評価などをよく行っています。整理の意味も込めて、ここで投資(またはマイホーム購入)の対象として、私の専門分野である税金の面からの深堀りをしてみます。

賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅とは、家主が自宅として住みながら、その住まいの一部を賃貸用住宅のスペースとして賃貸して、家賃収入を得られる住宅のことをいいます。家賃収入を元手にローンを返済して、ローンの実質負担を軽減しながら持ち家に住める、というプランです。
賃貸管理をしっかり行って、家賃収入でローンを返済できれば、ローンの負担ゼロで自宅に住むことが可能になり、自宅取得や不動産投資を考えている方には、大きなメリットのある投資手法といえます。

資金調達による違い

賃貸不動産を取得したり、建築したりする場合には、通常、銀行による不動産投資ローンを利用します。不動産投資ローンは事業性ローンなので、住宅ローンと比べると金利も高く、返済期間も建物の耐用年数をベースにすることがほとんどのため、借入期間が短くなるケースが多くなります。つまり、毎月の返済額が多くなるという特徴があります。
一方で、住宅ローンは個人がマイホームを持つために社会政策的に設けられたローンのため、事業性ローンより恵まれた条件で融資を受けることができます。多くの金融機関の場合、一定の条件は付されるものの、賃貸併用住宅の投資でも、住宅ローンとして組むことが可能のようです。このように有利な条件で資金調達を行える可能性があるという点からも、賃貸併用住宅の導入を積極的に検討してもよいでしょう。

住宅ローン控除によるメリット

賃貸併用住宅は、資金調達手法が有利なだけではなく、税制上においても住宅ローン控除という減税制度の適用が可能な場合があります。 住宅ローン控除を簡単に説明すると、借入時期にもよりますが、「住宅ローン残高の1%が10年間還付される」という優遇制度です。 ただ、この住宅ローン控除という減税制度を利用するためには、床面積の2分の1以上が自己居住用という条件があり、建物のうち賃貸用の住戸部分を全体の半分以下に抑える必要があります。賃貸併用住宅の場合、少しでも収益率を上げようとするために、賃貸用住戸部分の占める割合を大きくするのが鉄則ですが、住宅ローン控除を受けるために、それを半分以下に抑えるとなると、収益性は大きく損なわれてしまいます。
住宅ローン控除を受けるために収益率を下げてしまっては、本末転倒となってしまいます。住宅ローン控除は諦めるべきなのでしょうか?
住宅ローン控除は、建物を区分所有している住宅の場合、その区分所有する部分の床面積で判断するというのが原則です。つまり、賃貸併用住宅の自己居住用の住戸部分と、賃貸部分を区別し、それぞれを区分所有している形式にすると、自己居住用部分だけで要件を満たしているか否かを判断することが可能になり、登記の仕方次第では、自己居住用部分の住宅ローン控除の適用が可能となります。
ただし、区分所有登記にして、賃貸用の住戸部分も住宅ローンによる融資が可能なのかは、金融機関との相談次第でしょう。

賃貸併用住宅の相続によるメリット

【建物】
自宅の用のみの家屋は、固定資産税評価額により評価を行います。一方、賃貸住宅として使用している家屋は、貸家としての評価となり、自宅家屋による評価よりも30%減額された評価額となります。したがって、自宅の用のみの場合と比べると賃貸併用住宅のほうが相続税の評価額を低く抑えることが可能です。

【土地】
自宅の用のみの土地を相続した場合には、相続人となる家族の住まい状況などによっては、その土地を相続しても小規模宅地等の特例(※)を利用できないことが多くなります。しかし、賃貸併用住宅の場合は、相続人となる家族の住まい状況などにかかわらず、申告期限までに引き続き賃貸の用に供し、一定の条件さえ満たせば、賃貸部分については、この特例を受けることができます。そのため、相続税的にも、自宅の用のみでマイホームとして建てるよりも、賃貸併用住宅として建てたほうが税務対策につながる可能性が高くなります。

  • (※) 小規模宅地等の特例とは、概略だけ説明すると、相続によって土地を相続した場合において、一定の要件を満たしたときは、土地の評価額が50%~80%減額される制度。80%の減額を受けるためには、厳しい要件があるが、賃貸部分の土地の相続については、200m2までの土地で、相続後も引き続き賃貸の事業を営んでいれば、相続税評価額を50%減にすることが可能。

固定資産税に係るメリット

固定資産税は、土地を空き地として所有したり、

駐車場として貸したりする場合よりも、その土地の上に、自宅や賃貸住宅などを建て、住宅用地にしたほうが安くなります。これは、住宅用地に対する固定資産税の減額措置が設けられているためです。
この減額措置とは、小規模住宅用地(200m2以下)であれば6分の1(それを超える部分は、3分の1)に減額して課税するというもので、 200m2以下かどうかは、1世帯あたりで判定を行います。つまり、自宅用のみで家を建てた場合は、1世帯としてカウントしますが、自宅のほかにも、賃貸用住宅を設けた場合には、この賃貸用世帯の数もカウントされます。例えば、自宅に賃貸用住戸を含めた世帯数が7世帯であれば、 200m2×7世帯=1400m2までの土地の課税額が6分の1になります。これが賃貸併用住宅を建てた場合の、固定資産税に係るメリットです。
郊外に行けば、200m2を超えるような土地を眠らせている方もいらっしゃるかもしれません。郊外にちょっとした空き地を保有しているだけで、年間に十数万円の固定資産税の負担が発生してしまうケースもあります。不動産といえども、空き地として眠らせている土地は、負を生み出す資産にすぎません。そうした方には、賃貸併用住宅は有効な土地活用といえるのではないでしょうか。
以上、見てきたように、住宅ローンと事業性ローンの金利差や、住宅ローン控除の適用、相続による評価減、固定資産税の評価減など、ひとつひとつを見れば小さなメリットかもしれません。しかし、これらがまとまって、10年~数十年のスパンで効果が得られることを考えると、自宅用だけによる利用や賃貸住宅投資だけによる利用と、賃貸併用住宅による利用では、相当な違いが出てきます。
単純に自宅用に建物を建てようと考えている方や、賃貸住宅投資を考えている方は、賃貸併用住宅も選択肢の一つに入れてみるのはいかがでしょうか。

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