2019年からの税制度改革(2) サ高住の優遇税制延長と空き家の抑制に関する税制度
公開日:2018/12/25
POINT!
・サービス付き高齢者向け住宅において、「住宅供給促進の為の制度」が延長
・空き家の発生を抑制するための税制度において、4年の延長と拡充
「サービス付き高齢者向け住宅」について優遇税制の延長が決まる
2018年12月14日に2019年度の税制大綱がまとまりました。その中で土地活用に関わる2つの優遇制度についてご紹介します。
1つ目は、サービス付き高齢者向け住宅における「住宅供給促進の為の制度」の延長についてです。
高齢化がますます進む日本においては、高齢者が安心して暮らせる住宅が不足しています。そのため、在宅医療・介護の場となる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の供給を促進するために、新築の「サービス付き高齢者向け住宅」に係る税の特例措置を2年間延長することが決まりました。
海外、特に欧米各国と比べて、高齢者が安心して暮らせる住宅のストックが、日本においては少ないといわれています。北欧やイギリスでは、介護住宅や高齢者用の住宅は全住宅の10%を超えていますが、日本ではそれに比べて大幅に少ない状況です。
その一方で、高齢者は右肩上がりで増えています。中でも、高齢の単身者、あるいは高齢夫婦のみの世帯は今後もますます増えると予想されています。2015年の国勢調査では、高齢単身世帯は592万世帯、高齢者夫婦世帯は642万世帯でしたが、2040年には、それぞれ、896万世帯、687万世帯へと大幅に増えることが予想されています(国立社会保障・人口問題研究所の将来推計 2018年)。高齢単身世帯はこの間に254万世帯、高齢者夫婦世帯は45万世帯増えるわけです。また、要介護の高齢者は2011年には約378万人だったのが、2016年には約435万人と、こちらも大きく増えています(内閣府「高齢社会白書」(平成30年版)より)。
このように、日本社会においては、介護住宅や高齢者用の住宅へのニーズが今後さらに高まることが予測され、より多くの「サービス付き高齢者向け住宅」の供給が求められています。これに対応するために、税制度において「住宅供給促進の為の制度」が延長されました(2年間の延長です)。
要件を満たす(要件は後述)サービス付き高齢者向け住宅に対する具体的な優遇処置は次の2点です。
- 1)固定資産税が5年間にわたり、税額の1/2~5/6の範囲で市町村が条例で定める割合で減額される。
- 2)不動産取得税が、家屋については課税標準から1戸あたり1200万円控除、土地については、税額から一定額軽減される。
サービス付き高齢者向け住宅の要件
- (1)床面積:30m2以上/戸(共用部分含む。一般新築特例は40m2以上/戸)
- (2)戸数:10戸以上
- (3)補助:国または地方公共団体からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けていること
- (4)構造:主要構造部が耐火構造または準耐火構造であること等
空き家の譲渡における所得の3000万円特別控除の適用が4年間延長
2つ目は、空き家の発生を抑制するための税制度の拡充と延長です。こちらは、数年前からある税制度ですが、この度4年の延長に加え、拡充されました。
空き家を抑制するため、空き家の譲渡における所得の3000万円特別控除の適用が4年間延長されます。さらに、被相続人の直前居住要件を緩和し、老人ホーム等に入居していた場合も、この特例適用対象に加えられました。それまでは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであることとされていました。この要件緩和の背景には、被相続人の方が相続開始の直前に老人ホームなどに入居し、老人ホームに住みながらも、家財道具などを置いておくために自宅を手放さず、所有している例が増加していることがあります。
具体的な内容は下記の図の通りです。
税の優遇処置をうまく利用して、土地活用に活かしていただければと思います。
図:空き家の発生を抑制するための特例措置
注: 税についての詳細は税理士にご確認ください。
また、税制度は変わる可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。