建設工事費は近年どれくらい上昇しているのか?
公開日:2018/08/30
POINT!
・住宅建築の建設工事費は2013年以降上昇しており、2005年以降では最高水準にある。また、物価とも強い相関関係があり、今後物価も上昇が予測される
建設費の高騰が叫ばれている
2013年9月7日、2020年東京オリンピックの開催決定以降、建築・建設工事費の上昇がいわれ始め、建築・建設関係者はもとより、ディベロッパー、不動産会社など関係業界からも「徐々に高くなってきている」という声が聞こえています。さらに、「どこまで上がるのか」という思いもあるようです。
2011年3月に起こった東日本大震災以後、多くの職人が復興事業に従事しているため、職人の不足が深刻です。そうした中でオリンピックの競技施設建設工事の増加、さらに、2013年以降は不動産市況の好調さもあり、マンション・戸建て住宅がどんどん建てられ、ゼネコン業界は大忙しとなりました。
大都市だけでなく地方にも再開発の波が広がる
さらに大都市では、中心地における再開発プロジェクトがどんどん進んでいます。東京都心では渋谷駅周辺、麻布台周辺、虎ノ門新駅開発、山手線新駅(品川~田町間)開発、関西では大阪梅田の北ヤード開発など、再開発案件が多数進行中です。その流れは地方都市にも波及しています。「近年の好景気は大都市部だけ」と少し前までいわれていましたが、最近では、「好景気が地方にも伝播している」ことが明確になってきました。こうした状況下では、いやが応でも建設工事費は高騰してしまいます。
それでは、建設工事費がどれくらい上昇しているのかを見てみましょう。
建設工事費デフレーター(2011年度基準)
国土交通省「建設工事費デフレーター」より作成
上図は、国土交通省が発表している建設工事費デフレーター(住宅建築)の2005年から2018年上期までの推移です(グラフは2011年を100として計算しています)。
国土交通省ホームページ内の資料によれば、建設工事費デフレーターとは、「建設工事に係る名目工事費を基準年度の実質額に変換する目的で、毎月作成、公表しているものである。建設工事費デフレーターは、国内の建設工事全般を対象としている。建設工事の多くは、現地一品生産という特性のため、一般の製品の物価のように市場価格の動きでは直接的にとらえることができない。そのため、建設工事費を構成する労務費や個々の資材費の価格指数をそれぞれの構成比(ウエイト)をもって総合する投入コスト型で算出する手法をとっている」ということになります。より詳しく知りたい方は下記を参考にしてください。
これを見ると、住宅建築の建設工事費は2005年からのミニバブル期に上昇、特にリーマンショック直前の2008年には大きく上昇しました。また、確かに震災直後は一時的に上昇しましたがすぐに落ち着きました。2013年以降はずっと右肩上がりで上昇しており、2005年以降では最高水準にあります。
建設工事費と物価の関係
次に建設工事費と物価の関係を見てみましょう。 下図は建設工事費デフレーター(住宅建築)と消費者物価指数(天候要因などの影響が大きい生鮮食品を除く)、それぞれ2005年以降の推移を重ねたものです。
建設工事費デフレーターと消費者物価指数の推移
国土交通省「建設工事費デフレーター」総務省統計局「消費者物価指数」より作成
相関係数は0.81となっており、はっきりと強い相関があることがわかります。建築工事費が上がっているときは、物価も上がっているという構図が見えます。これから類推すると、今後もしばらくは建設工事費が上がりそうな気配ですから、物価も上がる可能性があります。