今仲清の生産緑地シリーズ(5)生産緑地解除地の有効活用
公開日:2018/02/28
高齢のため営農できなくなり、後継者もなく、故障等による生産緑地の解除を申請して認められたとき、その土地の一部または他の土地を譲渡して、生産緑地解除地で特定の事業用資産の買い換え特例を活用して有効活用をする方法もあります。
営農継続ができない場合、生産緑地解除して有効活用を検討する
高齢や病気などで営農できなくなり、後継者もいないため、生産緑地の営農ができなくなった場合、故障等による生産緑地の解除申請をして認められることがあります。生産緑地を解除されると、翌年から固定資産税が大幅に増額されるので、売却あるいは有効活用を考えざるを得ません。
大幅に増える固定資産税の引き下げと有効活用による安定収入確保のたに、有効活用に向いた土地を駐車場や商業施設用地として賃貸することも考えられます。場合にはよっては賃貸住宅を建てて、相続税額引き下げ対策とともに収入確保したいということもあるでしょう。賃貸住宅経営の場合には入居率や家賃相場の動向を考えると、でできれば必要資金の半分程度は自己資金を用意したいものです。
全額自己資金で賃貸住宅を建てて、有効活用と税対策ができれば言う事はありませんが、なかなかそうはいきません。全額借入金で建設資金を賄うこともお勧めできません。そこで、生産緑地を解除した土地の一部を譲渡して、その資金で有効活用に向いた土地に賃貸住宅を建てる方法を検討します。「土地を譲渡すると譲渡所得税がかかるのではないか?」という声が聞こえてきそうですが、「特定の事業用資産の買換え特例」を活用すればいいのです。
特定の事業用資産の買換え特例で税金は5分の1
図1の計算例は、もともと生産緑地だった農地を解除された後売却し、別の有効活用に向いた土地にその売却資金で賃貸住宅を建て、「特定の事業用資産の買換え特例」の適用を受けた場合の税金の計算です。特例を受けると所得税・住民税の合計は1,800万円になりますが、この特例を受けると所得税・住民税の合計が360万円となり、本来払わなければならない税額の5分の1になります。この特例は7号買い換えといい、平成32年12月31日までに所有期間が10年以上の事業用の土地や建物を譲渡して、事業用の土地や建物に買い換えることで適用を受けることができます。
図1 特定の事業用資産の買い換え特例
家庭用菜園は事業用資産にならない
農地を譲渡し、賃貸住宅を取得して「特定の事業用資産の買換え特例」の適用を受けるには、農地が事業用であるかどうかが問題になります。いわゆる家庭菜園のように農協やスーパーなどに出荷せず自分たちが食べる野菜を作っているような場合には、その農地は事業用とは認められません。しかし、田で米を作っている場合には、自分たちが食べるだけ作っているといっても、耕作面積がそれなりに広いこともあり、通常は事業として認められていることが多いようです。
事業廃止後の譲渡は適用対象外
「特定の事業用資産の買換え特例」は、事業の用に供している資産を譲渡した場合に適用されます。したがって、事業を廃止した後の農地の場合には、農業をやめてから土地を売っても適用対象となりません。例えば、酒屋さんやお風呂屋さんの場合を考えるとわかりやすいのですが、これらの商売を廃業した後に、その商売に利用していた土地や建物を譲渡しても適用されないわけです。もっとも、現に営業していなくとも事業をやめた後、速やかに譲渡したような場合には適用されます。
田でお米を作っている場合には、秋に刈りとりをした後、翌年までは通常そのまま置いておきます。翌年、に再度耕作する予定であれば当然廃業していないわけで、その状態で土地を譲渡することもありえます。そのときには、「特定の事業用資産の買換え特例」の適用対象になります。このあたりのところは十分注意してください。なお、生産緑地を解除したからといって、農業を廃業したことにはなりません。農業を行っているかどうかが重要なのです。
農地以外で事業用資産の買換え適用対象にならない場合
次のような場合には譲渡する資産が事業用とならないため、「特定の事業用資産の買換え特例」の適用を受けることはできません。
- (1)土地を一時的に賃貸している場合
- (2)受けとっている地代より払っている固定資産税の方が多い場合(ただし、事情によって認められる場合もある)
- (3)土地所有者がその人の経営するあるいは親族などが経営する同族会社に土地や建物を賃貸しているが、その支払いの事実が明確でない場合
- (4)事業を廃止して相当な期間を経過した後に資産を売却した場合
- (5)例えば、医師であった方が亡くなり、その病院を廃業して譲渡したような場合
- (6)過去に賃貸していたが、申告をしていなかった場合(遡って過去の申告をすれば認められる場合もある)
図2 生産緑地が事業用資産になる条件
その他、生産緑地の有効活用による税務上のメリットは、土地一部売却資金で生産緑地解除地の有効活用(事業資産の買い換え活用)、農業倉庫を建てても買い換えが適用されるなど多くのケースがありますので、専門家に相談することをお勧めします。