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コラム No.29-3

CREコラム

不動産証券化のトレンドを追う第3回 国交省、外国人向け不動産取引マニュアルを作成へ

公開日:2017/03/21

国土交通省は、不動産業者が外国人とスムーズに不動産取引ができるよう、早ければ3月中にも業者向けの実務マニュアルを作成する意向です。訪日外国人だけでなく、日本に定住しようとする外国人が近年増えており、2020年の東京五輪を控え、海外の人々が日本国内で不動産取引を行うことが今後増加すると国は判断。円滑な取引を促進する狙いから、不動産取引業者向けの手引書を作成することにしました。

増加する訪日外国人―新潟・赤倉温泉の場合

先日、新潟県の妙高高原近くにある赤倉温泉の様子がテレビで放映されていました。この町ではいま、後継者難でホテル・旅館業から手を引いた日本人経営者に代わり、稼働していない物件を外国人が購入して改築し新たにペンションなどを経営しているケースが目立ってきている、と紹介していました。

妙高高原をはじめスキー場を備えた温泉リゾート地を抱える新潟県は、10年近く前から外国人観光客の誘致に取り組んできました。2016年度に県内に宿泊した外国人の数は、約18万8千人と前年度比37.5%増加。このうち、中国からの宿泊者が4万6千人、台湾約4万人に次いでオーストラリアからの宿泊者が3万2千人と国別順位で3位にランクインしているのが目を引きます。

これは観光庁が2010年に始めた観光客誘致キャンペーンである「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の地方連携事業で、日本との時差が少なく移動が楽なオーストラリアからのスキー客を積極的に呼び込んだ成果といわれています。

番組ではまた、赤倉温泉の不動産取引業者が、旅館施設の購入を希望する外国人を物件先に案内し、英語で説明する姿を映し出していました。赤倉温泉には外国人が経営する宿泊施設は10数件あり、オーストラリア人が多いそうです。観光で訪れた人の中に、ホテル経営で生計を立て定住を目指そうとする人がいるものとみられます。

赤倉温泉(新潟)では、外国人の宿泊施設経営者が増加しているという…

妙高市観光協会ホームページより

インターネットでは土地や家屋は確認できない

赤倉温泉だけでなく、訪日外国人や留学生の増加で、日本各地で外国人との不動産取引が増加しています。昨年10月末には訪日外国人観光客の数が初めて2千万人を突破、政府目標の「2020年東京五輪で4千万人」も夢ではありません。一方、外国人登録制度は2012年に廃止され、住民票での登録(在留カード)になりました。在留外国人数(法務省調べ)は2016年末現在223万人と前年比5.2%増加しています。

インターネット全盛の現在、個人消費は国境を越えた取引が当たり前になっていますが、土地や家屋などは足を運んで確認しなければなりません。国内の商取引制度は基本的に自国民を対象にして整備されたものが多いので、外国人を対象にした商取引制度のマニュアルは、どの国でも立ち遅れているのではないでしょうか。世界の公用語ともいえる英語が普及していない我が国では、その傾向が顕著なのかもしれません。

国としては、今後も増加する外国人に対して居住・定住面での不安がないよう、円滑な不動産取引ができる体制を早急に整備する必要があると考え、今回の実務者向けのマニュアル作成となりました。
国交省が考えるマニュアル案のポイントは次の3点。

  1. (1)取引対応時における留意点や把握しておくべき基礎的な情報の紹介
  2. (2)政府や業界団体が作成した既存資料の紹介
  3. (3)不動産用語・表現の参考英訳集

具体的には、我が国独自の不動産取引における商慣習や税制、本人確認方法、物件引き渡し方法などがあげられます。例えば、賃貸物件では保証金や敷金・礼金、更新料の仕組みや転居時における原状回復など、日本人でもトラブルのもとになることがある不動産取引の商慣習は、外国人には分かりづらいと思われます。

トラブルになる前に完成が急がれるマニュアル

また、印鑑はどうするのか、印鑑証明は取れるのか。契約書は英語のものを用意すべきか、本人確認はパスポートだけでいいのか、住宅ローンは組めるのか、組めるとすればどんな条件があるのかないのか等々、外国人にとっては分からないことだらけです。不動産取引業者にとっても、こうやって矢継ぎ早に質問されればパニックに陥ることでしょう。そのような場合、英語で書かれたパンフレットや、専門用語の英訳に役立つハンドブックがあれば、取引業者は大いに助かります。

国交省では、個人取引のレベルで外国人と不動産業者との間にトラブルが生じている事実を把握しています。前述した番組でも、赤倉温泉で、老朽化した旅館・ホテルを改築していた外国人所有の施設で工事の不手際からガス漏れ事故が発生したことを取り上げ、町内会の責任者が外国人経営者たちに英語のパンフレットを作成して宿泊施設の運営・維持に関して注意喚起しているシーンがありました。

いまのところ、外国人との不動産取引は個人レベルが大半を占めている段階にあると思われますが、北海道の某スキー場に隣接する都市では、中国からの投資が増え、ホテル経営に乗り出している中国人経営者も目立ってきています。日本の不動産価格は海外の不動産に比べて比較的安いとの評価があります。とりわけ、地方の観光地の不動産価格は格安なことから、2020年の東京五輪開催を前にして投資価値が上昇しています。

とはいえ、土地や家屋は、家電製品を買うように気軽に買える価格ではありません。外国の人々にとっても、一生に一度の買い物かもしれません。また、自国と日本との商慣習の違いから、いったん行き違いが生じると、言葉の問題があるだけにトラブル解決には時間を要することも想像されます。そのようなことがないよう、不動産仲介業者が安心して取引できる手引書(マニュアル)の完成が待たれます。

言葉の問題があるだけにトラブル解決には時間を要することも…

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